異世界でも保育士やってます~転生先に希望条件が反映されてないんですが!?~

こじまき

文字の大きさ
23 / 84

23 一時保育始めました

しおりを挟む
風が一段と冷たくなり、雪もちらつく日が増え、村に本格的な冬がやって来た。冬になると、おばあちゃんが言った通り、ここの大人たちはカウベルフェルトやカウンティ・タウンへ働きに行く。マリウスさんみたいな商店主に雇われたり、貴族やお金持ちのお屋敷で働いたりするのだそうだ。

私はといえば、アロイスさんにもらった金貨のおかげでしっかり冬越しの準備を終わらせ、安心して過ごしている。クリスタちゃんにうさぎの耳がついたケープを買ってあげたから、今は雪の日にそれを着せて雪遊びするのが楽しみで仕方ない。

ただお金の心配がないからといって、だらっと暇をしながら過ごしているわけではない。むしろ忙しい。ちょくちょくマリウスさんに会計や経営について教えてもらっているし、何より山小屋で預かる子たちが増えたのだ。

冬、大人たちは出稼ぎに行くから、ここでは長時間「お家に誰もいない状態」になる子が多い。おじいちゃんおばあちゃんが見てくれる子はいいけど、本当に一人なのは、お父さんお母さんも心配だ。去年は子どもがお留守番中にボヤを出してしまった家もあるという。

そこで私は、村のみんなに「必要なら、子どもを預かる」と提案したのだ。みんな「そんなこと、考えたこともなかった」という感じだったけど、「魔力持ちがいる家に預けるなんて」という声はなく、何人かが来てくれることになった。

三歳のクララちゃん、四歳のリューデックくんとエマちゃん、それに五歳のディアナちゃん、クララちゃんのお姉ちゃんで十四歳のアンナちゃん。アンナちゃんは保育っていう年齢ではないが、クララちゃんを預かるなら一緒に、と受け入れた。

みんなで朝の身支度と朝食を済ませ、テオくんを学校に送り出したら、他の家から子どもたちを迎える準備。子どもが増えるほどに忙しくはなるけれど、忙しいほうが充実している感じがする。送迎時にお家の方からも「ありがとうね」なんて言われるから、やっぱりやりがいはある。

午前中は外で雪遊びしたり、日本ではなぜか冬の遊びとしておなじみの縄跳びをしたり、元気に走り回る。そして午後はテーブルを出して、部屋遊びで過ごして、みんなでおやつを食べたり。

三歳児さんであるクララちゃんのまあるいほっぺが、おやつのりんごをもぐもぐ噛むたびにぽこぽこ動くのが可愛すぎて、毎日泣ける。どうして人間はこの可愛すぎるまあるいほっぺを、成長とともに失ってしまうのだろうと考えると、切ない。

そしてクリスタちゃんとレオくんの貴重な「年上ムーブ」が見られるのも可愛い。クリスタちゃんがクララちゃんの顔の汚れをそうっと拭いてあげるのも、レオくんが自由人・リューデックくんが遠くに行ってしまわないよう始終手をつないであげているのも尊い。

そんな今日の部屋遊びは、冬に保育園で大流行を見せる「編み物」。小さい子たちは木で作った小さな編み器を使い、アンナちゃんは編み針で挑戦する。アンナちゃんは家で家族の靴下なんかを編んでいるらしく、とても上手だ。

私も保育園の流行に影響されて、編み物にハマってしまったくちで、そこそこには編める。久々に編み物をするのは、とても楽しい。

「アンナちゃん、ここをこうして、こっちをこういう風に編むと、模様になるんだよ」
「ほんとだ。ね、サティ、それはどういう編み方?」
「これはうね編みって言って、でこぼこになるの。立体感が出て、マフラーにしたときも可愛いでしょ?」
「うん」

楽しくおしゃべりしながら作業を進めているなかで、アンナちゃんがぽつりと言う。

「私、春になったら王都に行くの」
「あら、お引っ越し?」
「ううん。働きに」

そう、ここはそういう世界。まだ幼い、中学校を卒業するかしないかくらいの子が、当たり前のように家族を養うために働く世界。

お姉ちゃん子のクララちゃんは、どれだけ寂しがるだろう。私はつい黙ってしまったけど、アンナちゃんはにこっと笑う。

「手先が器用だと喜ばれるんだって。だからその模様編みとうね編み、覚えたいな」
「…うん。じゃあみっちり教えるよ。良かったらあみぐるみも挑戦してみる?」
「うん!あと、クリスタがつかってるあの小さなカバンも作ってみたい!クララに持たせてあげたいの」
「ああ、あれは移動ポケットといってだね…」

ーーー

アンナちゃんの奉公先がこのあたりの大領主様であるベルント伯爵の王都タウンハウスだと聞いて、私は心配していた。

アンナちゃんは「貴族の邸宅、しかも王都で働けるなんて、みんなに羨ましがられる」と言っていたけど、もしかして異世界モノでよく見る悪徳貴族だったらどうしよう。劣悪な環境で働かされたり、先輩からいじめられたりしたら…?高飛車なお嬢様が悪役令嬢で、断罪からの没落劇に巻き込まれたりしたら…!?

そんなことを考えていたら、額に皺が寄っていたのだろう。

「サティさん、大丈夫ですか?難しいですか?」
「あ、いえ大丈夫です。いや、難しいですけど…ごめんなさい、せっかくお忙しい中こんな田舎まで来てくれて教えてくださっているのに、集中していなくて。本当は私がマリウスさんのお店かご自宅かにお伺いするべきなのに…」
「いいんですよ。それよりも、心配事ですか?」

本当に、この人は勘が鋭すぎるし気遣いがすごすぎる。こんな人になりたい。まじリスペクトだよ。

だけどベルント伯爵の人となりを、果物屋のマリウスさんが知っているとも思えない。貴族であろうアロイスさんなら知っているかもしれないけれど。

「心配してくれてありがとうございます。でもこれは、どちらかというとアロイスさんに相談したいことなので」
「レオくんのことですか?」
「いえ、違うんですけど…」

マリウスさんの視線がほんの少し厳しくなって、彼は黙ってしまった。なぜだろう。何か気分を害するようなことを言っただろうか。考えてみたけれどわからなくて、私はひたすら集中していなかったことを詫びた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

追放された地味探索者、実は隠された伝説級スキルの持ち主でした~気付いたら無自覚に最強ハーレムを築いていた件~

fuwamofu
ファンタジー
地味で目立たない探索者アレンは、仲間に「足手まとい」と罵られパーティを追放された。だが実は彼のスキル【探索眼】は、古代英雄の力を見抜く唯一の能力だった! 鉱山の奥で偶然出会った少女を救ったことから、運命が動き出す。 魔王軍、古代遺跡、神々の争い——すべての鍵を握るのは「ただの探索者」だった男。彼は気付かぬうちに、世界を救い、そして多くの少女たちの心をつかんでいく。 地味だけど最強、無自覚だけどモテまくり。これは世界を変えた謙虚な英雄の物語である。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する

ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。 きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。 私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。 この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない? 私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?! 映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。 設定はゆるいです

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜

あいみ
ファンタジー
亡き祖父母との約束を守るため、月影優里は誰にでも平等で優しかった。 困っている人がいればすぐに駆け付ける。 人が良すぎると周りからはよく怒られていた。 「人に優しくすれば自分も相手も、優しい気持ちになるでしょ?」 それは口癖。 最初こそ約束を守るためだったが、いつしか誰かのために何かをすることが大好きになっていく。 偽善でいい。他人にどう思われようと、ひ弱で非力な自分が手を差し出すことで一人でも多くの人が救われるのなら。 両親を亡くして邪魔者扱いされながらも親戚中をタライ回しに合っていた自分を、住みなれた田舎から出てきて引き取り育ててくれた祖父祖母のように。 優しく手を差し伸べられる存在になりたい。 変わらない生き方をして二十六歳を迎えた誕生日。 目の前で車に撥ねられそうな子供を庇い優はこの世を去った。 そのはずだった。 不思議なことに目が覚めると、埃まみれの床に倒れる幼女に転生していて……? 人や魔物。みんなに愛される幼女ライフが今、幕を開ける。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...