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さあ、領地送りにするがいい
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「お待たせいたしました」
階段を降りて、玄関で私を待っていたフィリップ様に声をかける。彼は振り返った瞬間に目を見開いて固まった。
「なんだ、それは」
「最新流行のドレスと髪型です」
「それが?」
「ええ」
てかてか光る紫とショッキングピンクの地に、黄色で刺繍を施した「騒がしい」としか表現しようのないドレス。マダムが三度は泣きそうになった、私の自作デザインである。
そして男爵邸で一番器用だというメイドが「一体どうしたらいいのでしょうか、奥様」と困惑しながら仕上げてくれた、渦巻き貝が二つ頭にくっついたような髪型。地の金髪にピンク色の髪の毛を付け足しているから、ここはここで派手だ。
さらにアクセサリーは宝石ですらなく、子どもが遊ぶような大きな安っぽいビーズをつなげた、私のハンドメイド。
「最新流行」なんて真っ赤な嘘。一応今日のドレスコードは「春らしいピンク」だからルールは守っているけれど、どこからどう見てもただただ異様。しかし壊れたふりをするなら、見た目からわかりやすく壊れておくべきだと思ったのだ。
フィリップ様の隣にいるローレンスも私を凝視しているが、相変わらず無表情で感情のかけらもない。怒っているのか呆れているのかもわからない。
フィリップ様はちっと舌打ちする。
「一緒に入場したくない」
ええ、そうでしょうとも。私だって近くにこんな女がいたら、一緒に入場したくないどころか、知り合いだとも思われたくない。
「今から着替える時間もつもりもありませんわ」
おかしな妻でも、あなたは私と一緒でなければ、今日の舞踏会には出席すらできない。だから私をエスコートして、思う存分恥をかいて、心おきなく私を領地送りにしてください。私も恥をかくけれど、すぐ領地に飛ばされるのだからどうでもいい。
会場に着くと、貴婦人たちは扇で口を隠しながら私を見る。
《悪趣味にもほどがあるわ》
思った通りの反応。フィリップ様の顔色がますます悪くなり、私の口元はニヤつく。彼は私から腕を離そうとするけれど、離れてあげない。さあ、悪趣味な服を着てニヤつく妻を見せびらかしなさい。
音楽が止まり、人々の視線が一斉に会場の奥へ向かう。国王陛下ご夫妻のご到着だ。
王妃様は私の姿に目を止める。
薄い薄いピンクに銀糸を織り込んだ上品極まりないドレスの裾を翻し、水色の髪をなびかせて、王妃様は上座から私のほうへまっすぐ歩いてきた。
私は頭に乗っている渦巻き貝が崩れ落ちないかドキドキしながら、きちんと礼をする。
「そのドレス、どこの仕立て屋のデザインなの?」
王妃様直々にお叱りを受けるなんて。けれどこれで領地送りは確実だ。
「これは私がデザインしたものを、マダム・マレーが仕立てたものでございます。見苦しいと思われたのでしたら…」
「見苦しいだなんて!むしろ素晴らしいわ!!」
階段を降りて、玄関で私を待っていたフィリップ様に声をかける。彼は振り返った瞬間に目を見開いて固まった。
「なんだ、それは」
「最新流行のドレスと髪型です」
「それが?」
「ええ」
てかてか光る紫とショッキングピンクの地に、黄色で刺繍を施した「騒がしい」としか表現しようのないドレス。マダムが三度は泣きそうになった、私の自作デザインである。
そして男爵邸で一番器用だというメイドが「一体どうしたらいいのでしょうか、奥様」と困惑しながら仕上げてくれた、渦巻き貝が二つ頭にくっついたような髪型。地の金髪にピンク色の髪の毛を付け足しているから、ここはここで派手だ。
さらにアクセサリーは宝石ですらなく、子どもが遊ぶような大きな安っぽいビーズをつなげた、私のハンドメイド。
「最新流行」なんて真っ赤な嘘。一応今日のドレスコードは「春らしいピンク」だからルールは守っているけれど、どこからどう見てもただただ異様。しかし壊れたふりをするなら、見た目からわかりやすく壊れておくべきだと思ったのだ。
フィリップ様の隣にいるローレンスも私を凝視しているが、相変わらず無表情で感情のかけらもない。怒っているのか呆れているのかもわからない。
フィリップ様はちっと舌打ちする。
「一緒に入場したくない」
ええ、そうでしょうとも。私だって近くにこんな女がいたら、一緒に入場したくないどころか、知り合いだとも思われたくない。
「今から着替える時間もつもりもありませんわ」
おかしな妻でも、あなたは私と一緒でなければ、今日の舞踏会には出席すらできない。だから私をエスコートして、思う存分恥をかいて、心おきなく私を領地送りにしてください。私も恥をかくけれど、すぐ領地に飛ばされるのだからどうでもいい。
会場に着くと、貴婦人たちは扇で口を隠しながら私を見る。
《悪趣味にもほどがあるわ》
思った通りの反応。フィリップ様の顔色がますます悪くなり、私の口元はニヤつく。彼は私から腕を離そうとするけれど、離れてあげない。さあ、悪趣味な服を着てニヤつく妻を見せびらかしなさい。
音楽が止まり、人々の視線が一斉に会場の奥へ向かう。国王陛下ご夫妻のご到着だ。
王妃様は私の姿に目を止める。
薄い薄いピンクに銀糸を織り込んだ上品極まりないドレスの裾を翻し、水色の髪をなびかせて、王妃様は上座から私のほうへまっすぐ歩いてきた。
私は頭に乗っている渦巻き貝が崩れ落ちないかドキドキしながら、きちんと礼をする。
「そのドレス、どこの仕立て屋のデザインなの?」
王妃様直々にお叱りを受けるなんて。けれどこれで領地送りは確実だ。
「これは私がデザインしたものを、マダム・マレーが仕立てたものでございます。見苦しいと思われたのでしたら…」
「見苦しいだなんて!むしろ素晴らしいわ!!」
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