回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する

真義あさひ

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禍々しい水晶玉を通じて、テオドールと国王の会談を覗き見する者がいた。

闇の空間に、不気味な笑みを浮かべる者、邪悪な呪術師――ロットヴェインだ。
姿はケイやテオドールに見せていた侍女のものだったが、その周囲にはおぞましい瘴気が渦巻いている。

ロットヴェインは狂気に満ちた瞳で呪術の儀式を行っていた。
黒い霧が触手のようにうねり、次元の狭間に穴を開けていく。

「フフフ……勇者候補は二人。良いなあ」

ロットヴェインの唇が邪悪に歪んだ。

「だが、希望など許さぬ。すべては、主の御心のままに……」

闇の空間は、異界の次元に存在していた。
闇の触手が蠢き、怨念の囁きが響き渡る。

「次元の狭間を繋ぎ、過去を捻じ曲げ、未来を歪める。勇者の末裔たちよ、絶望の運命を受け入れるがいい……」

ロットヴェインは狂気の笑みを浮かべた。

彼女の目的は、二人の勇者の末裔の血を喰らうこと。
それによって、不死の呪術を完成させるつもりだった。

「勇者の血は、私が喰らうのだ……そして、不死の力を手に入れる」

ロットヴェインはアルトレイ伯爵家に侵入してからずっと、何年もかけて呪術の力でテオドールとケイの運命を操作しようとしていた。

黒い霧を渦巻かせ、二人の運命の糸に闇の呪いを絡ませて、目的の成就の日は近い。

「さあ、絶望の運命に堕ちるがいい」



  ☆ ☆ ☆



ケイは回帰後の人生を歩みながらも、常に不安が心の中に渦巻いていた。

(俺は、本当にやり直せているのだろうか?)

母ポーラを守るために回帰したはずだった。
だが、正妻セオドラの陰湿な嫌がらせは続いている。

ケイは焦りを感じていた。

(このままでは、また前世と同じように……)

「どうしたのだ、相棒」

ピアディが心配そうに見上げてくる。

「男前が台無しな顔なのだ」

ケイは溜息をついた。

「俺は、本当にやり直せているのか分からない。前世と同じように、母様を失うんじゃないかって不安になるんだ」

ピアディは真剣な目でケイを見つめた。

「そなたは、勇者の光を持っている。これはもう間違いない」

「……ああ」

「だが、その力を引き出すためには、過去の亡霊を超えねばならぬ」

「過去の亡霊……?」

「うむ。そなたの心に巣食う、前世の苦痛と絶望だ。それを乗り越えれば、勇者の力は覚醒するかも」

ケイはハッと気づきを得た。

「そうだ。俺はどうしても回帰前の人生を引きずってしまってる。回帰した人生はこんなにも前と違ってるのに」

同じこともあるが、違うことも多い。
兄など比べようもないくらい、弟思いのブラコンと化しているではないか。

ピアディは満足げに頷いた。

「うむ、その意気なのだ」
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