38 / 44
ご主人様が侮辱された!(※ユキレラへは「待て」のご命令。つらい!)
しおりを挟む
「ああ! このような異国の地で、私は運命を見つけた! 麗しの君よ、どうか私のものになってはくれまいか!」
(あ? 何だべ、芝居でも始まっただか?)
学生時代の友人たちとダンスを踊ってくるとルシウスが言ったので、踊り終わる頃に合わせて冷たいスパークリングワインを調達に行っていたユキレラ。
ちょうど曲の切れ目に、そんな芝居がかった男の声が聞こえてきて、何かの演目かと思ったら違かった。
(る、ルシウス様がプロポーズ受けてるっぺー!??)
思わず持っていたシャンパングラスを落としそうになったユキレラだ。
よりによって、ダンスホールのど真ん中で。
慌てて近くを通りかかったボーイにグラスを預けてご主人様の近くに駆け寄る。
だが、ルシウスはちらりとユキレラを見て『来なくていい』とアイコンタクトを送ってきた。
イエッサー!
忠犬ユキレラは待てができる良いユキレラ。
ユキレラのご主人様ルシウスは、リースト伯爵家の本家筋の次男で、現役子爵だ。
既に実家を出て独立しているので、さすがに同性の男性からのプロポーズを受けることは難しい。
ということをやんわりと伝え、最初は笑って流していたルシウスだったが、悪いことに相手は本気だった。
次第に困ったように断りを述べるようになったルシウスとは対照的に、相手の王族の機嫌はどんどん悪くなる。
仕舞いには切れてプロポーズ相手のはずのルシウスを怒鳴りつけるときた。
「お前のような顔だけの者はただ愛されていれば良いのだ!」
会場のあちこちで「あちゃあ」という顔をしている者たちがいる。
おそらく、ルシウスをよく知る者たちだろう。
何人か、ユキレラのセフレたちの顔も見えている。
「え、マジで? 魔王様に何かましてくれちやってるの、あの男?」
「あたくしたちのルシウス様に何たる暴言、いや妄言を。許すまじ」
紳士淑女の皆さんの顔もマジ切れしている者がちらほらと。
淑女の方々の中には、手に持った扇をバキリと折りかけている者までいる。
「顔だけ、とは随分なことを申される」
とても低い声がルシウスの腹の底から出た。
えっ、そんな低い声初めて聴きましたよ!? というような地獄の底から出しているような声だった。
「改めて自己紹介致しましょう。冒険者ランク及び騎士ランクS、魔法剣士のリースト子爵ルシウスと申します。で、何か私に仰いましたかな?」
ざわ、と会場が揺れた。
冒険者ランクと騎士ランクS。
それぞれAランクまでなら努力だけで辿り着けるが、Sランクとの間には努力だけでは超えられない断層がある。
Sランクは、冒険者としてなら冒険者ギルドのギルドマスターに就任可能であるし、国の騎士団なら副団長以上に就任可能なランクだった。
(ルシウス様、ほんと秘密多すぎだべ! 聞いてないっぺよー!!!)
「おお! それならなお素晴らしい! Sランクとは、歴史あるタイアド王国の王族である私の伴侶に相応しい飾りでないか!」
「飾り……だと……? よくもまあ言えたものだ……」
あれっ、誰だこの声? とユキレラが張りのあるアルトの女声に隣を振り向くと、真紅のドレス姿の黒髪黒目の三十手前ぐらいの美女がいる。
ダイヤのティアラにアップスタイルの編み込み入りのまとめ髪で、露わになったうなじが大変色っぽい。
この国で黒髪黒目は王族だけ。
そして王家の女性で該当するのは次期女王のグレイシア王太女殿下だ。大当たり!
ルシウス本人もだいぶお冠だったが、その上司でもある王太女のグレイシアもとても良い笑顔だった。
仲裁? するわけがない。
そもそも、予定にないこの他国の王族の来国には大変迷惑しているのだ。
親指を立てて、勢いよく下を指差した。
やっちまいな!
(あ? 何だべ、芝居でも始まっただか?)
学生時代の友人たちとダンスを踊ってくるとルシウスが言ったので、踊り終わる頃に合わせて冷たいスパークリングワインを調達に行っていたユキレラ。
ちょうど曲の切れ目に、そんな芝居がかった男の声が聞こえてきて、何かの演目かと思ったら違かった。
(る、ルシウス様がプロポーズ受けてるっぺー!??)
思わず持っていたシャンパングラスを落としそうになったユキレラだ。
よりによって、ダンスホールのど真ん中で。
慌てて近くを通りかかったボーイにグラスを預けてご主人様の近くに駆け寄る。
だが、ルシウスはちらりとユキレラを見て『来なくていい』とアイコンタクトを送ってきた。
イエッサー!
忠犬ユキレラは待てができる良いユキレラ。
ユキレラのご主人様ルシウスは、リースト伯爵家の本家筋の次男で、現役子爵だ。
既に実家を出て独立しているので、さすがに同性の男性からのプロポーズを受けることは難しい。
ということをやんわりと伝え、最初は笑って流していたルシウスだったが、悪いことに相手は本気だった。
次第に困ったように断りを述べるようになったルシウスとは対照的に、相手の王族の機嫌はどんどん悪くなる。
仕舞いには切れてプロポーズ相手のはずのルシウスを怒鳴りつけるときた。
「お前のような顔だけの者はただ愛されていれば良いのだ!」
会場のあちこちで「あちゃあ」という顔をしている者たちがいる。
おそらく、ルシウスをよく知る者たちだろう。
何人か、ユキレラのセフレたちの顔も見えている。
「え、マジで? 魔王様に何かましてくれちやってるの、あの男?」
「あたくしたちのルシウス様に何たる暴言、いや妄言を。許すまじ」
紳士淑女の皆さんの顔もマジ切れしている者がちらほらと。
淑女の方々の中には、手に持った扇をバキリと折りかけている者までいる。
「顔だけ、とは随分なことを申される」
とても低い声がルシウスの腹の底から出た。
えっ、そんな低い声初めて聴きましたよ!? というような地獄の底から出しているような声だった。
「改めて自己紹介致しましょう。冒険者ランク及び騎士ランクS、魔法剣士のリースト子爵ルシウスと申します。で、何か私に仰いましたかな?」
ざわ、と会場が揺れた。
冒険者ランクと騎士ランクS。
それぞれAランクまでなら努力だけで辿り着けるが、Sランクとの間には努力だけでは超えられない断層がある。
Sランクは、冒険者としてなら冒険者ギルドのギルドマスターに就任可能であるし、国の騎士団なら副団長以上に就任可能なランクだった。
(ルシウス様、ほんと秘密多すぎだべ! 聞いてないっぺよー!!!)
「おお! それならなお素晴らしい! Sランクとは、歴史あるタイアド王国の王族である私の伴侶に相応しい飾りでないか!」
「飾り……だと……? よくもまあ言えたものだ……」
あれっ、誰だこの声? とユキレラが張りのあるアルトの女声に隣を振り向くと、真紅のドレス姿の黒髪黒目の三十手前ぐらいの美女がいる。
ダイヤのティアラにアップスタイルの編み込み入りのまとめ髪で、露わになったうなじが大変色っぽい。
この国で黒髪黒目は王族だけ。
そして王家の女性で該当するのは次期女王のグレイシア王太女殿下だ。大当たり!
ルシウス本人もだいぶお冠だったが、その上司でもある王太女のグレイシアもとても良い笑顔だった。
仲裁? するわけがない。
そもそも、予定にないこの他国の王族の来国には大変迷惑しているのだ。
親指を立てて、勢いよく下を指差した。
やっちまいな!
15
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。
ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と
主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り
狂いに狂ったダンスを踊ろう。
▲▲▲
なんでも許せる方向けの物語り
人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
表紙:meadow様(X:@into_ml79)
挿絵:Garp様(X:garp_cts)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
悪役令息の兄って需要ありますか?
焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。
その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。
これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。
魔王さまのヒミツ♡
黒木 鳴
BL
歴代最年少で魔王の地位に就いたレイには隠し通さなければならない秘密がある。それは……「魔王もうやだぁぁぁ~~!!下剋上こわいよぉぉぉーーー!!!」その実態が泣き虫ポンコツ魔王だということ。バレれば即・下剋上を挑まれることは必至!なので先々代の魔王を父に持ち、悪魔公爵ジェラルドが膝を折ったという2枚看板を武器にクールな魔王を演じている。だけどその実力を疑う者たちも出てきて……?!果たしてレイの運命は……?!溺愛腹黒系悪魔×初心な小悪魔系吸血鬼。お茶目なパパんも大活躍!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる