婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン

ローストポテトと揚げ油の謎

 オープンサンド以外に料理人ゲンジが用意してくれたのはチキンベースの野菜スープ、それにローストポテトだ。

 カーナ王国はタコス文化の国だ。サルサに使う玉ねぎやトマトなどナス科の野菜の生産が盛んで、同じようにジャガイモも種類豊富で安く新鮮なものが常に流通している。

 ちょうど新ジャガが出回る時期だった。小振りの新ジャガを薄い皮ごと茹でて軽く潰し、包丁の背で潰したニンニクと、ハーブのローズマリーと一緒にオリーブオイルで和えてからオーブンで焼く。
 一度茹でてから潰しておくのがポイントだ。そこにオリーブオイルが絡んで、焼いたところがカリッとホクッと堪らない。
 焼き上がったら岩塩をぱらりと振りかけ、熱々のところをいただく。

「酒……これにはビール一択じゃね?」
「わかりますともビクトリノ様。でもね、昼から酒飲もうとするとジューアお姉様が怒るんですよ……」

 ちらりとユキレラが、アイシャの隣の席のジューアを見る。

「陽も沈まぬうちから酒など飲むものではない。堕落の第一歩だぞ」
「「はい!」」

 暗に飲むなら夜にしろということだ。ちなみに神人ジューアは酒好きでかなり強い。

「ローストポテト美味しいですよね。でも油で揚げるフライドポテトのほうが簡単だと思いますけど」
「これはルシウス君たちのアケロニア王国の食べ方でね。あそこの国は昔、油の食中毒が多発した時期があって、今は揚げ物の少ない地域でねえ」

 ローストポテトも油を絡めて焼く料理だが、揚げ物のように繰り返し油脂を加熱し続けて使わない分、安全なのだそうだ。

「サツマイモのローストポテトも美味しかったですよね」
「そうそう、あっちはココナッツオイルを絡めると風味が増して美味しいよね。カレーのスパイスで味付けしたのもなかなか」
「「た、食べたいです~!」」
「うん、じゃあ市場で良いサツマイモ見つけたらね」

 ゲンジは料理人でレストラン・サルモーネのメニュー考案を担当している。店で直接調理することはほとんどなく、最近では調理師ギルドで飯ウマ属性を生かして後進の指導にも携わっているそうだ。
 それ以外はルシウス邸で皆の食事を作ってくれている。リクエストは大歓迎と言われているので、既にアイシャもトオンも遠慮はない。



「ココナッツオイルといえばさ、この国の揚げ油は精製ココナッツオイルなんだよね。カーナ王国に来て何がビックリしたかって、ルシウス君が露店の屋台でイカや魚のフライ食べてるんだもん。あんなにおうちで『外食で油もの食っちゃダメ!』って言われてたのに」
「精製ココナッツオイルだと何かあるんです?」
「ほら、普通だとココナッツオイルはあの甘い香りがあるだろ? お菓子には良いけど料理だと邪魔な匂いなわけ。それを精製して無味無臭に加工したのが精製ココナッツオイル」

 それがなぜ、ルシウスの話に繋がるのか?

「俺の専門の料理ジャンルだとココナッツオイルに縁がないから知らなかったんだけどさ。ココナッツ由来の油脂って酸化しにくいから、食中毒リスクは限りなく低いんだって。ルシウス君たら、鑑定スキルで屋台の揚げ物を見てそれを知って、もう大喜びで揚げ物三昧」
「ああ~そういえば俺たちのとこに来てくれた当初も喜んで食べてましたね、イカフライ。そっか、大好きだけど故郷じゃ食べられないから揚げ物愛が爆発したのか……」

 トオンのような元からカーナ王国の国民は、子供の頃から食べ慣れているからココナッツオイルに違和感はない。

「ココナッツオイルは精製しても、未精製でも身体に良いんだよね。酸化しにくいから身体に負担をかけないし、すぐ消化されてエネルギーに変わるから太りにくい。……まあ、ルシウス君みたいな筋肉のある大きな身体の子は元々そんなに心配もないんだけどさ」

 ゲンジが言うには、ココナッツオイルは素揚げやフライには良くても、ゲンジの専門なる和食ジャンルの天ぷらなど繊細でカラリと揚げる必要のある料理には向かないらしい。
 実際、以前食べさせてくれたシラスのかき揚げは大豆油と胡麻油の混合だったそうだ。



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