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プロローグ4 ※ゲス展開にご注意回
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憧れの先輩にキスしてもらえた。
浮かれた気分のまま、余韻を味わいたいからと家の馬車を先に返したのが良くなかった。
自宅へは徒歩でも30分とかからないからと、歩いて帰ろうとしたのがオデットの運の尽きだ。
放課後の夕方過ぎ、生徒会室を後にして夜道を歩くオデットは誘拐されてしまったのだ。
オデットを誘拐したのは奴隷商だった。
しかも奴隷商をけしかけてきたのは、何とオデットに告白してきたあの男子生徒と、その婚約者の侯爵令嬢ではないか。
罠に嵌められた、と気づいたときにはもう遅い。
そのまま誘拐されあっという間に国外に運ばれて、気づいたときにはオークションにかけられていた。
オークションでは売り物だからと髪も肌も手入れされ、光沢ある緑色のシルクのドレスを着せられた。
しかし丁重な扱いはそこまで
売られた先は嗜虐趣味のある豚のように醜悪な男のもとだった。
故郷ではその頃には既に魔法剣士として、強さを恐れられるようになっていたオデットも、魔力封じの術によって魔法どころか、身体強化も何も使えなくなって抵抗する術がなかった。
魔法が使えなければ、オデットはか弱いただの少女に過ぎなかった。
もっと自分の肉体そのものを鍛えておけば良かったと思っても後悔先に立たず。
(でも、この身には自動発動の魔法が仕掛けられている)
オデットはリースト伯爵家、直系の娘だ。莫大な魔力を持つ血筋の女だった。
そんな彼女には、身を守るための魔法が仕掛けられている。
本人が不慮の事故で死ぬようなことがあれば、自動的に。
あるいは、本人にとって命の危機に等しい状況に陥ったと思えば、自分の意思でも可能になる。
ただ、安易に発動することのないよう、発動条件が少々厳しかった。
落札者の男に従わないオデットは、振り下ろされる鞭で、白い肌はあちこちミミズ腫れで赤く腫れ上がった。
緑のドレスもあちこち破けている。
男の芋虫のような指が、オデットのドレスを胸元から引き裂いた。
胸が片方、乳首まで露わになる。
男が舌舐めずりする。臭い息を放つ唇がオデットに近づいてきた。
ここだ、とオデットは魔法の発動を決めた。
男の太って弛んだ肉体を思い切り突き飛ばす。
オデットの身体を足元から順に、透明な魔力の樹脂が覆っていく。
「ふふ。お前のような豚に、高嶺の花はもったいなくてよ」
そこで指を咥えて悔し泣きでもしてなさい、と最後まで言う前にオデットは完全に透明な樹脂の中に封印された。
オデットの身を封じたものは、“魔法樹脂”という。
彼女の実家、リースト伯爵家が得意とする魔法のひとつで、魔力で透明な樹脂を形成し、物品を封入するものだった。
中に封じ込められたものは、時間の経過が止まる。
解凍されるまで、これからオデットは何年、何十年、何百年でも、己の魔力が続く限り、16歳の肉体のまま時間も意識も止まった状態で過ごすことになる。
浮かれた気分のまま、余韻を味わいたいからと家の馬車を先に返したのが良くなかった。
自宅へは徒歩でも30分とかからないからと、歩いて帰ろうとしたのがオデットの運の尽きだ。
放課後の夕方過ぎ、生徒会室を後にして夜道を歩くオデットは誘拐されてしまったのだ。
オデットを誘拐したのは奴隷商だった。
しかも奴隷商をけしかけてきたのは、何とオデットに告白してきたあの男子生徒と、その婚約者の侯爵令嬢ではないか。
罠に嵌められた、と気づいたときにはもう遅い。
そのまま誘拐されあっという間に国外に運ばれて、気づいたときにはオークションにかけられていた。
オークションでは売り物だからと髪も肌も手入れされ、光沢ある緑色のシルクのドレスを着せられた。
しかし丁重な扱いはそこまで
売られた先は嗜虐趣味のある豚のように醜悪な男のもとだった。
故郷ではその頃には既に魔法剣士として、強さを恐れられるようになっていたオデットも、魔力封じの術によって魔法どころか、身体強化も何も使えなくなって抵抗する術がなかった。
魔法が使えなければ、オデットはか弱いただの少女に過ぎなかった。
もっと自分の肉体そのものを鍛えておけば良かったと思っても後悔先に立たず。
(でも、この身には自動発動の魔法が仕掛けられている)
オデットはリースト伯爵家、直系の娘だ。莫大な魔力を持つ血筋の女だった。
そんな彼女には、身を守るための魔法が仕掛けられている。
本人が不慮の事故で死ぬようなことがあれば、自動的に。
あるいは、本人にとって命の危機に等しい状況に陥ったと思えば、自分の意思でも可能になる。
ただ、安易に発動することのないよう、発動条件が少々厳しかった。
落札者の男に従わないオデットは、振り下ろされる鞭で、白い肌はあちこちミミズ腫れで赤く腫れ上がった。
緑のドレスもあちこち破けている。
男の芋虫のような指が、オデットのドレスを胸元から引き裂いた。
胸が片方、乳首まで露わになる。
男が舌舐めずりする。臭い息を放つ唇がオデットに近づいてきた。
ここだ、とオデットは魔法の発動を決めた。
男の太って弛んだ肉体を思い切り突き飛ばす。
オデットの身体を足元から順に、透明な魔力の樹脂が覆っていく。
「ふふ。お前のような豚に、高嶺の花はもったいなくてよ」
そこで指を咥えて悔し泣きでもしてなさい、と最後まで言う前にオデットは完全に透明な樹脂の中に封印された。
オデットの身を封じたものは、“魔法樹脂”という。
彼女の実家、リースト伯爵家が得意とする魔法のひとつで、魔力で透明な樹脂を形成し、物品を封入するものだった。
中に封じ込められたものは、時間の経過が止まる。
解凍されるまで、これからオデットは何年、何十年、何百年でも、己の魔力が続く限り、16歳の肉体のまま時間も意識も止まった状態で過ごすことになる。
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