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三人目の加害者
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リースト伯爵家のサロンで、友人の生徒会長グリンダから貰った紅茶を侍女に入れてもらい、オデットは優雅に寛いでいた。
テーブルの上にはオデットに申し込まれた婚約打診の釣書が積まれている。
気に入った者がいるなら好きに選びなさいと、現当主のヨシュアが渡してきたものだ。
(さて。まだ復讐は終わってないのよ)
百年前、オデットを奴隷商に売り飛ばしたことに直接関わった者は三人。
ひとりめは、当時のフォーセット侯爵令嬢。
ふたりめは、その婚約者の男性。フォーセット侯爵家の分家出身だった。
三人目が、オデットの婚約者だったドマ伯爵令息ダニエルだ。
リースト伯爵家の第二子だったオデットは、ドマ伯爵家の嫡男である彼に、学園卒業と同時に輿入れ予定だった。
婚約は家同士の事業提携を目的として結ばれたものである。
この三人目が厄介だったのだ。
オデットの強さを妬んで、何かと足を引っ張ることしかしてこない、ろくでなしの男。
百年前、ふたりの愚か者がオデットを誘拐しようという計画を立てたとき、よりにもよって一枚噛んだのが、この己の婚約者だった。
なぜオデットがそれを知っているのか?
誘拐され奴隷商に引き渡されるとき、その場にいてニヤニヤと笑っていたのが婚約者のダニエルだったからだ。
ドマ伯爵令息ダニエル。
彼こそがオデットに魔力封じのための魔導具を首に嵌めた本人なのだ。
本来なら強力な魔法剣士のオデットを誘拐し、無力化させた張本人だった。
オデットを売った大金の入った袋を、これ見よがしに見せつけてきた記憶はまだ新しい。
当時まだ学生だった彼も、百年後の現在はとっくに死んで墓の下だ。
既にフォーセット侯爵家やその相手の家には、判明した時点で当時のリースト伯爵家が報復している。
王家からの叱責や制裁も受けたようだ。
フォーセット侯爵家は数年前の事件のせいで、既にない。
侯爵令嬢の婚約者だった分家は既に没落。
オデットの婚約者の家だったドマ伯爵家は、なぜかそのまま無事で、百年後の今日まで残っている。
同じ実行犯のフォーセット侯爵令嬢とその婚約者の男が、なぜ残る共犯者のドマ伯爵令息ダニエルのことを隠していたかは、今となってはもうわからない。
恐らくはダニエルが二人を何らかの形で脅していたのだろうけれど。
オデットはテーブルの上に積み上げられた釣書の一番上のものを手に取った。
開くと、『ドマ伯爵令息サムエル』の名前がある。
そして、よりにもよって今また、ドマ伯爵家が再びオデットに婚約の打診をしてきた。
百年前当時の権利を主張してオデットとの婚約を迫ってきているのだ。
どうやら、自分たちの先祖がオデットにしたことを、子孫の彼らは知らないらしい。
「フフ。熊みたいな見た目の癖に外面の良かったあの男らしいわ。婚約を申し込んできたのは、庶子とはいえあの男の子孫。面白いわね」
この事実を伝えれば、ヨシュアやルシウスが報復と制裁に動いてしまう。
有能そうな彼らの手にかかれば、相手の家を潰すまであっという間だろう。
だが、それではつまらない。
自分はもっと遊びたいのだ。
それには、ヨシュアとルシウスの両方が邪魔だった。
「余計な手出しをしないよう、牽制しておかなきゃね」
呟いて、オデットは微笑んだ。
麗しの美貌に似つかわしくない、獰猛な笑みだった。
テーブルの上にはオデットに申し込まれた婚約打診の釣書が積まれている。
気に入った者がいるなら好きに選びなさいと、現当主のヨシュアが渡してきたものだ。
(さて。まだ復讐は終わってないのよ)
百年前、オデットを奴隷商に売り飛ばしたことに直接関わった者は三人。
ひとりめは、当時のフォーセット侯爵令嬢。
ふたりめは、その婚約者の男性。フォーセット侯爵家の分家出身だった。
三人目が、オデットの婚約者だったドマ伯爵令息ダニエルだ。
リースト伯爵家の第二子だったオデットは、ドマ伯爵家の嫡男である彼に、学園卒業と同時に輿入れ予定だった。
婚約は家同士の事業提携を目的として結ばれたものである。
この三人目が厄介だったのだ。
オデットの強さを妬んで、何かと足を引っ張ることしかしてこない、ろくでなしの男。
百年前、ふたりの愚か者がオデットを誘拐しようという計画を立てたとき、よりにもよって一枚噛んだのが、この己の婚約者だった。
なぜオデットがそれを知っているのか?
誘拐され奴隷商に引き渡されるとき、その場にいてニヤニヤと笑っていたのが婚約者のダニエルだったからだ。
ドマ伯爵令息ダニエル。
彼こそがオデットに魔力封じのための魔導具を首に嵌めた本人なのだ。
本来なら強力な魔法剣士のオデットを誘拐し、無力化させた張本人だった。
オデットを売った大金の入った袋を、これ見よがしに見せつけてきた記憶はまだ新しい。
当時まだ学生だった彼も、百年後の現在はとっくに死んで墓の下だ。
既にフォーセット侯爵家やその相手の家には、判明した時点で当時のリースト伯爵家が報復している。
王家からの叱責や制裁も受けたようだ。
フォーセット侯爵家は数年前の事件のせいで、既にない。
侯爵令嬢の婚約者だった分家は既に没落。
オデットの婚約者の家だったドマ伯爵家は、なぜかそのまま無事で、百年後の今日まで残っている。
同じ実行犯のフォーセット侯爵令嬢とその婚約者の男が、なぜ残る共犯者のドマ伯爵令息ダニエルのことを隠していたかは、今となってはもうわからない。
恐らくはダニエルが二人を何らかの形で脅していたのだろうけれど。
オデットはテーブルの上に積み上げられた釣書の一番上のものを手に取った。
開くと、『ドマ伯爵令息サムエル』の名前がある。
そして、よりにもよって今また、ドマ伯爵家が再びオデットに婚約の打診をしてきた。
百年前当時の権利を主張してオデットとの婚約を迫ってきているのだ。
どうやら、自分たちの先祖がオデットにしたことを、子孫の彼らは知らないらしい。
「フフ。熊みたいな見た目の癖に外面の良かったあの男らしいわ。婚約を申し込んできたのは、庶子とはいえあの男の子孫。面白いわね」
この事実を伝えれば、ヨシュアやルシウスが報復と制裁に動いてしまう。
有能そうな彼らの手にかかれば、相手の家を潰すまであっという間だろう。
だが、それではつまらない。
自分はもっと遊びたいのだ。
それには、ヨシュアとルシウスの両方が邪魔だった。
「余計な手出しをしないよう、牽制しておかなきゃね」
呟いて、オデットは微笑んだ。
麗しの美貌に似つかわしくない、獰猛な笑みだった。
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