破壊のオデット

真義あさひ

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お家乗っ取りは重罪である

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「よろしいでしょうか? その件につきましては学園の生徒会長としてわたくしから、報告がございます」

 挙手して、それまで黙っていたグリンダが発言の許可を求めた。
 彼女は王家の親戚ウェイザー公爵家の令嬢だが、学園の生徒会長で校内の様々な情報が入ってくる立場にある。

「オデットに求婚したドマ伯爵令息サムエルですが、クラスメイトたちと問題発言のあったことが判明しております」
「問題発言? どんな?」
「『あの女、オデットと結婚できたら俺が新侯爵だぜ』とのこと」
「うーん……これは駄目なやつだな」
「アウト。よしオデット、好きにするがいい。それなりの後始末は任せておけ!」

 話を聞いて、速攻で王太子と女王が前言撤回した。

「貴族同士だから政略結婚は普通にある。だが、今既に当主が健在である家の新当主になる発言はアウトだ」

 この国では貴族家のお家乗っ取りは即処刑も有り得るほどの重罪である。
 リースト伯爵家のように、特殊な魔力や魔法を受け継ぐ血筋の一族を、そう簡単に簒奪されては貴重な術が失われてしまう。
 そのための法律だった。

 そもそも、現段階でヨシュアがリースト伯爵家の当主なのに、侯爵に陞爵した後、なぜオデットと結婚したからといって自分が侯爵になれると思うのか。
 謎でしかない。

「その発言だけで、ドマ伯爵家の五男がどの程度の男か、一気に判明したな。グリンダ、報告に感謝する」
「もったいないお言葉です、ユーグレン王太子殿下」

 庶子だからなのか、貴族社会の仕組みを理解していない。
 貴族の子息子女が多く通う学園に通学していながら、現時点で学んでもいない。
 そういった情報が、その短い台詞で読み取れるわけだ。



「オデット嬢。二週間から三週間くらいなら、ヨシュアとルシウス殿をこの王都から遠ざけてやれる。どうする?」

 追放することは王家が許可しない。
 だが、好きに動きたいというなら、時間稼ぎはしてやれるとユーグレン王太子が言った。

「どういうことでしょう?」
「出奔して行方不明になっていた先王弟が、カーナ王国で確認されたんだ。今はあちらの王家の関係者に協力しているそうで」
「カーナ王国……」

 円環大陸西部の小国だ。代々聖女や聖者を輩出することで知られている。

「ちょうど、国王が代替わりするとのことでな。急なことだが、我が国からも即位祝いの使者を遣わす予定なのだ」

 先王弟カズンの母がまだ健在で、彼女を使者に立てる予定だったのが、先日ヨシュアに変更されたのだという。
 というより、先王弟に会いたいヨシュアが使者の座をもぎ取ったものと思われる。

(なるほど、屋敷の中が急に慌ただしくなった理由はそれね)

「ふむ、カーナ王国へは馬車で行って帰ってくるだけでも半月はかかる。ならばその期間中、ルシウスにも仕事を与えてこの王都から離してやろう」

 女王グレイシアも企みに乗ってくれるようだ。

「カーナ王国にヨシュアが出立するのは今月下旬。それから二週間前後の猶予をオデットに与える。この間に王家もドマ伯爵家について調査するとしよう」

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