破壊のオデット

真義あさひ

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美女と野獣、いざ対戦

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「まあ。それならわたくしが、あなたたちの対戦の場を手配しますわ」

 ここで、さりげなく後ろからグリンダが立ち上がり、オデットたちのテーブルへやって来た。
 金の長い巻き毛をかき上げながら、群青の瞳で二人を見下ろす。

「オデットの引退試合なのでしょう? 是非、大々的にやりましょう」

 もちろん、ドマ伯爵令息サムエルにも否やはない。

「生徒会長、お願いしてもいいんですか?」
「任せておきなさい。あなたも、たくさん友人を連れて観戦してもらうと良いでしょう。お父上のドマ伯爵やご家族もね」

 そう、観客は多ければ多いほど良い。

 ここまでが、オデットとグリンダによる事前の仕込みである。



 対戦の場は、親友のグリンダが王家の親戚の伝手を使い、王都騎士団の練兵場を手配してくれた。
 観覧席もあるため、噂を聞きつけた騎士たちや、対戦者の友人、家族などが集まっている。

 そこには王太子ユーグレンの姿もあった。
 黒髪黒目の王太子は、王家の貴色の黒い軍服に長身を身を包み、端正な顔立ちに興味津々の色をのせて練兵場を見つめている。

「オデット嬢の戦う姿を見られると聞いてな。楽しみにしていたのだ」
「うーん、それはどうでしょうか。多分、そんなに楽しいものではないと思いますわ」

 グリンダが苦笑する。
 あらかじめ、オデットから彼女がサムエル相手にどう立ち回るか聞いているため、面白いものでないのはわかっていた。

「あ、終わったようですね」
「は!? もうなのか!??」

 グリンダとちょっとした会話をしている間に、練兵場では決着がついていた。



「は? な、何なんだこれは!?」
「何だと申されましても。サムエル様」

 両者とも、それぞれの家の軍服で試合に臨んでいる。
 この国では成人貴族はすべて国の軍属になる。その上で国の騎士団か、各貴族家の騎士団や兵団かに所属する義務があるため、まだ学生の彼らも家ごとの軍服を持っていた。

 オデットのリースト侯爵家はネイビーのライン入りの白い軍服。女性でもスカートではなくパンツスタイルだ。本来ならミスリル銀の装飾が付くが今回は試合の邪魔になるため外している。
 武器はもちろん、ダイヤモンドのメイスで。

 サムエルのドマ伯爵家は暗緑色の軍服で、辛子色のラインが入っている。
 こちらは体術のみでの対戦だったが、試合開始から数十秒ほどでサムエルは地面に沈んでいた。
 本人に大したダメージはない。身体強化の術が効いていて、オデットのメイスの棘がその熊のようなずんぐりむっくりの身体に突き刺さることもない。

 ただし、オデット側も身体強化を使っているから、衝撃と重さだけはある。

「も、もう一度だ!」
「はい、何度でも。サムエル様」

 そしてまたオデットのメイスに吹き飛ばされる。
 そんなことを何度も何度も繰り返した。

 サムエルは汗だくで暗緑色の軍服は泥だらけになったが、オデットは涼しい顔で汗ひとつかかず、その腰までの長い青銀の髪にもほとんど乱れはない。
 白い軍服は美しく汚れのないまま。

 そのオデットとサムエルの対比は残酷なほど、力の差を観客たちに見せつけた。



「あら? 私、自分より強い方だから婚約したはずですのに。どうやら間違いだったみたいですね?」

 婚約破棄を仄めかすと、サムエルが激昂する。

「貴様のような半裸の恥ずかしい姿を百年も晒していた痴女が、この貴族社会で結婚相手など見つかるはずがない! 俺が貰ってやらなければ、貴様は一生独身の行かず後家だぞ!」
「まあまあまあ。あなた、そんなに私のことを心配してくださってたの?」

 そもそも、オデットは自分より弱い男となど結婚するつもりが最初からない。

 ましてや、己の決死の百年を侮辱した男に容赦は不要。

 遠慮なくサムエルを、魔力で強化したダイヤモンドのメイスで殴り飛ばした。


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