4 / 64
夏休みは海で冒険なのだ(完結)
さいあいにご相談なのだ
しおりを挟む
『魔王おばばと仲直りせよ』
聖女様からの強制クエストである。
期限は夏休みが終わるまで。
クリアできないと、おやつ抜きにされてしまう。深刻なダメージだ。それだけは避けなきゃいけない。
ピアディは真っ白でもふもふな綿毛竜のユキノを見上げた。
ユキノの真っ赤なお目々は、ピアディの真っ青なお目々と対照的だ。
ユキノは本当は二階建ての建物より大きなドラゴンなのだが、仔犬サイズからドラゴンの大型サイズまで自在に身体の大きさを変えることができる。
今は小さなピアディに合わせて、中型犬サイズだ。
「ぷぅ(ユキノたん、なにか良いアイデア出してほしいのだ)」
「ピューピュイッ(そういうことなら頭のいい人のとこに行こう)」
ぱくっと綿毛竜ユキノの大きな口にくわえられて、大きな海上神殿から出て海の上を飛んで向かったのは、内陸のカーナ神国の首都だ。
この国は少し前までは王様のいる国だったのだが、聖女様をいじめたことが原因で崩壊して、今はお魚さん王国の末裔ピアディが支配者となっている。
首都の旧王城はそのまま首脳部の官邸として使われている。
国の長はピアディだが、まだ幼くて統治する能力がないので、優秀な者をピアディの代理人として宰相に任命して国政を取り仕切らせていた。
「おや、ピアディ様。ユキノ君も。どうされましたか?」
官邸の一番広い執務室でピアディたちを出迎えた宰相こそが、ピアディの〝さいあい〟。
「ぷぅ!(さいあい、さいあい、われを助けてほしいのだ)」
「何かお困りごとでも?」
ユキノの口からピアディを受け取ってくれた、ネイビーのラインの入った白い軍服姿の若い青年の名前はヨシュア。
胸元に聖女様から下賜された鮭の形のブローチを着けていることから、〝鮭の人〟とも呼ばれている大魔道士だ。
とても頭の良い人間で、今はカーナ神国の宰相を務めてくれている。
青みがかった銀髪のハンサムショートに白い肌、湖面の水色の瞳。
瞳の虹彩の中には銀色の花が咲いているような模様がある。こういう目の模様は魔力の強い人に出やすい。
とても綺麗な男の人だが、あの魔王おばばそっくりだ。彼はおばばの縁者なのである。
それからピアディは一生懸命、鮭の人に自分の大変な苦境を説明した。
おやつ、おやつ抜きにされてしまうのです!
「ふむふむ。ジューアお姉様と仲良くしたい。どうやればいいのか知りたいんですね」
「ぷぅ(たてまえなのだけど!)」
「正直ですねえ」
仕事の手を止めて話を聞いてくれた鮭の人は、顎に手を当てて考え込んだ。
がすぐに、ふふっと笑って、ピアディのウルトラマリンのお目々を覗き込んできた。
「手ぶらでいきなり行って『仲良くして』なんて言っても、ただの押し付けでしょう? 手土産があると良いですね」
「ぷぅ(おみやげ?)」
「偉大なる魔王様とはいえ、ジューアお姉様も女の方です。多分、宝石とか美しいものが好きだと思いますよ」
「ぷぅ?」
「そうですねえ。お姉様が持ってないもので、貴重な宝石や宝物、魔石や魔導具などはどうでしょう?」
そう鮭の人が助言するままに、まずは敵情視察に行くことにした。
「ぷぅ!(おばばの部屋にれっつごー!)」
「ピュイッ!(ごー!)」
にこにこ笑顔の鮭の人に見送られて、首都の魔王おばばの根城に向かうことにした。
「えっ、あれ止めなくて良いんですか?」
「魔王様に食われちまうんでは……」
周りの同僚たちがひそひそと話しているが、宰相様は麗しく笑っている。
「大丈夫さ。ユキノ君が付いてるからね」
聖女様からの強制クエストである。
期限は夏休みが終わるまで。
クリアできないと、おやつ抜きにされてしまう。深刻なダメージだ。それだけは避けなきゃいけない。
ピアディは真っ白でもふもふな綿毛竜のユキノを見上げた。
ユキノの真っ赤なお目々は、ピアディの真っ青なお目々と対照的だ。
ユキノは本当は二階建ての建物より大きなドラゴンなのだが、仔犬サイズからドラゴンの大型サイズまで自在に身体の大きさを変えることができる。
今は小さなピアディに合わせて、中型犬サイズだ。
「ぷぅ(ユキノたん、なにか良いアイデア出してほしいのだ)」
「ピューピュイッ(そういうことなら頭のいい人のとこに行こう)」
ぱくっと綿毛竜ユキノの大きな口にくわえられて、大きな海上神殿から出て海の上を飛んで向かったのは、内陸のカーナ神国の首都だ。
この国は少し前までは王様のいる国だったのだが、聖女様をいじめたことが原因で崩壊して、今はお魚さん王国の末裔ピアディが支配者となっている。
首都の旧王城はそのまま首脳部の官邸として使われている。
国の長はピアディだが、まだ幼くて統治する能力がないので、優秀な者をピアディの代理人として宰相に任命して国政を取り仕切らせていた。
「おや、ピアディ様。ユキノ君も。どうされましたか?」
官邸の一番広い執務室でピアディたちを出迎えた宰相こそが、ピアディの〝さいあい〟。
「ぷぅ!(さいあい、さいあい、われを助けてほしいのだ)」
「何かお困りごとでも?」
ユキノの口からピアディを受け取ってくれた、ネイビーのラインの入った白い軍服姿の若い青年の名前はヨシュア。
胸元に聖女様から下賜された鮭の形のブローチを着けていることから、〝鮭の人〟とも呼ばれている大魔道士だ。
とても頭の良い人間で、今はカーナ神国の宰相を務めてくれている。
青みがかった銀髪のハンサムショートに白い肌、湖面の水色の瞳。
瞳の虹彩の中には銀色の花が咲いているような模様がある。こういう目の模様は魔力の強い人に出やすい。
とても綺麗な男の人だが、あの魔王おばばそっくりだ。彼はおばばの縁者なのである。
それからピアディは一生懸命、鮭の人に自分の大変な苦境を説明した。
おやつ、おやつ抜きにされてしまうのです!
「ふむふむ。ジューアお姉様と仲良くしたい。どうやればいいのか知りたいんですね」
「ぷぅ(たてまえなのだけど!)」
「正直ですねえ」
仕事の手を止めて話を聞いてくれた鮭の人は、顎に手を当てて考え込んだ。
がすぐに、ふふっと笑って、ピアディのウルトラマリンのお目々を覗き込んできた。
「手ぶらでいきなり行って『仲良くして』なんて言っても、ただの押し付けでしょう? 手土産があると良いですね」
「ぷぅ(おみやげ?)」
「偉大なる魔王様とはいえ、ジューアお姉様も女の方です。多分、宝石とか美しいものが好きだと思いますよ」
「ぷぅ?」
「そうですねえ。お姉様が持ってないもので、貴重な宝石や宝物、魔石や魔導具などはどうでしょう?」
そう鮭の人が助言するままに、まずは敵情視察に行くことにした。
「ぷぅ!(おばばの部屋にれっつごー!)」
「ピュイッ!(ごー!)」
にこにこ笑顔の鮭の人に見送られて、首都の魔王おばばの根城に向かうことにした。
「えっ、あれ止めなくて良いんですか?」
「魔王様に食われちまうんでは……」
周りの同僚たちがひそひそと話しているが、宰相様は麗しく笑っている。
「大丈夫さ。ユキノ君が付いてるからね」
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
110
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる