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【番外編】夏ももう終わりなのだ
ウパルパ最強伝説なんてなかったのだ……?
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ピアディは再び攻撃力ゼロのよわよわウパルパに逆戻りだ。
ココナッツどころか、カゴに入っていたマンゴーや桃などの皮の柔らかい果物にすら、もう小さく柔らかな爪は歯が立たない。
「ぷぅ……」
儚い最強伝説だった。
しょんぼりして、ピアディはテーブルの上に転がっていたココナッツのかけらに齧りついた。
しゃくしゃくの歯応えのフレッシュなココナッツはほんのり甘くて美味しかったけれど、攻撃力ゼロでは自分だけだと実を割ることもできない。
ピアディがココナッツに意識を向けている間に、保護者たちは飛び散ってしまったココナッツのかけらや汁をお片づけだ。
とはいえ、 キレイキレイの魔法があれば、汚れて水浸しのテーブルもソファも皆のお洋服も一瞬で元通り。
後始末をしてくれた聖剣の聖者様たちに、部屋を汚してしまったピアディはといえば。
じわ……
とウルトラマリンの青い瞳が涙でうるうるしている。最強の文字が遠ざかっていく……
ぽふ。
「ぷぅ?」
そんなピアディにそっと触れる、真っ白なもふもふのお手々があった。
ピアディが〝うんめい〟と呼ぶ、まだ赤ちゃんの雛竜だ。
雛竜は浅瀬の海のような水色の大きなお目々で、じーっとココナッツを自棄食いするピアディを見つめてくる。
「ピュイッ(ピアディはたたかわなくていいよー。ぼくがまもるもん)」
一鳴きして、雛竜はテーブルのカゴの中に残っていた小玉スイカに飛び乗った。
なるほど、と雛竜のやりたいことに気づいた勇者君が皿を持ってきて、スイカをセットしてくれた。
「ピューイッ(えーい!)」
もふもふのお手々の小さな爪を一閃。見事に小玉スイカは真っ二つだ。
まだ小さな雛竜の爪には大した攻撃力などない。――魔法による強化術で威力を増強したのだ。綿毛竜は魔法が使える竜種である。
「ピュイッ」
そこから更に四分の一にカット。また更に何度かカットし、スライスしたものを抱えて、うやうやしくピアディに差し出した。
「ピュアー(ピアディ、どうぞなのだー)」
「ぷぅ(べ、ベビー!)」
スイカを差し出されたピアディは感激して、大きな青い目をキラキラと輝かせた。
「ぷぅ!(ベビー……いや〝うんめい〟よ、だいすきなのだー!)」
「ピュイッ(ぼくもピアディ、だいすきー)」
短い四肢ではスライスも持てないピアディは、雛竜にスイカを支えてもらいながら果肉に齧りついた。
ぱくっと齧って、水分たっぷりの甘い甘いスイカをしゃりしゃりもぐもぐしてから、顔を上げて浅瀬の海の目の雛竜と顔を見合わせてはにっこり。
「何という甲斐性か。雛竜6号殿は大物になりそうな予感がするな」
「ピアディ様。〝さいあい〟の称号はいつでも雛竜に譲りますよー?」
こちらは残ったスイカをいただきながらの、勇者君の親戚のお兄さんや、ピアディの鮭の人だ。
特にピアディに〝さいあい〟認定されている鮭の人はとても良い笑顔である。
※雛竜たんの通称は「雛竜6号(仮)」。
ココナッツどころか、カゴに入っていたマンゴーや桃などの皮の柔らかい果物にすら、もう小さく柔らかな爪は歯が立たない。
「ぷぅ……」
儚い最強伝説だった。
しょんぼりして、ピアディはテーブルの上に転がっていたココナッツのかけらに齧りついた。
しゃくしゃくの歯応えのフレッシュなココナッツはほんのり甘くて美味しかったけれど、攻撃力ゼロでは自分だけだと実を割ることもできない。
ピアディがココナッツに意識を向けている間に、保護者たちは飛び散ってしまったココナッツのかけらや汁をお片づけだ。
とはいえ、 キレイキレイの魔法があれば、汚れて水浸しのテーブルもソファも皆のお洋服も一瞬で元通り。
後始末をしてくれた聖剣の聖者様たちに、部屋を汚してしまったピアディはといえば。
じわ……
とウルトラマリンの青い瞳が涙でうるうるしている。最強の文字が遠ざかっていく……
ぽふ。
「ぷぅ?」
そんなピアディにそっと触れる、真っ白なもふもふのお手々があった。
ピアディが〝うんめい〟と呼ぶ、まだ赤ちゃんの雛竜だ。
雛竜は浅瀬の海のような水色の大きなお目々で、じーっとココナッツを自棄食いするピアディを見つめてくる。
「ピュイッ(ピアディはたたかわなくていいよー。ぼくがまもるもん)」
一鳴きして、雛竜はテーブルのカゴの中に残っていた小玉スイカに飛び乗った。
なるほど、と雛竜のやりたいことに気づいた勇者君が皿を持ってきて、スイカをセットしてくれた。
「ピューイッ(えーい!)」
もふもふのお手々の小さな爪を一閃。見事に小玉スイカは真っ二つだ。
まだ小さな雛竜の爪には大した攻撃力などない。――魔法による強化術で威力を増強したのだ。綿毛竜は魔法が使える竜種である。
「ピュイッ」
そこから更に四分の一にカット。また更に何度かカットし、スライスしたものを抱えて、うやうやしくピアディに差し出した。
「ピュアー(ピアディ、どうぞなのだー)」
「ぷぅ(べ、ベビー!)」
スイカを差し出されたピアディは感激して、大きな青い目をキラキラと輝かせた。
「ぷぅ!(ベビー……いや〝うんめい〟よ、だいすきなのだー!)」
「ピュイッ(ぼくもピアディ、だいすきー)」
短い四肢ではスライスも持てないピアディは、雛竜にスイカを支えてもらいながら果肉に齧りついた。
ぱくっと齧って、水分たっぷりの甘い甘いスイカをしゃりしゃりもぐもぐしてから、顔を上げて浅瀬の海の目の雛竜と顔を見合わせてはにっこり。
「何という甲斐性か。雛竜6号殿は大物になりそうな予感がするな」
「ピアディ様。〝さいあい〟の称号はいつでも雛竜に譲りますよー?」
こちらは残ったスイカをいただきながらの、勇者君の親戚のお兄さんや、ピアディの鮭の人だ。
特にピアディに〝さいあい〟認定されている鮭の人はとても良い笑顔である。
※雛竜たんの通称は「雛竜6号(仮)」。
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