異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
45 / 216
第一章 異世界転移、村ごと!

sideど田舎村の男爵領主1-2~二つの世界のつながり

しおりを挟む
「おらはベントリー・ウェイザー。元は王家の親戚だ」
「記録にお名前が残っております。この領の当時の騎士団長閣下ですね」

 そう思って彼を見れば、記録された人物特徴が一致する。髪の色、背格好、やや四角ばった顎の形、きつめの口調もだ。しかし足を悪くした痩せぎすの姿は苦労した生活を思わせ憐れみを覚えるほどだ。
 ウェイザー家はかつて王女の降嫁した筆頭公爵家だ。だとすると残りの三人は……?

「清治は元神官。名前はセージ。まあそのまんまだ。遠縁だから目ん玉の色は黒くない。だが王家の血を引いとる」
「クウさんとユウキ君もですね?」
「空さんはクーティア・アルトレイだ。ほんとならおらたちのご主人様だ」

 やはり。かつて神隠しに遭って行方不明のままの大公令嬢。当時の王弟のご令嬢で、間違いなく王家の姫君だ。

「ユウキは空さんの孫だが魔力が強い。それを利用して、こちらの世界に戻ってきだんだ」

 ベンの話を要約するとだ。
 約百年前、当時この地にあったダンジョンに大公令嬢クーティアが迷い込み、彼女の護衛だった騎士団長のベントリー、教師だったセージが後を追った。
 令嬢を発見できたはいいが、戻れなくなった。
 しかも転移したとき三人全員が元の年齢より若くなって転移したという。
 それどころか、異世界〝ニホン〟に辿り着いた時期も年単位でバラバラだったそうだ。

「本当ならおらが一番年上、次がセージ、クーティア様はまだ幼な子だったんだ。逆になっちまっただ」

 そこから三人は孤児として現地それぞれの一般人に引き取られ、もなか村の村民として現在まて生きてきたということだった。

「もうアケロニア王国に戻るのは諦めてただ。けんど、村民がおらたち以外おらんくなって、欲が出た。もなか村の土地の力を使って、セイジが覚えとった空間転移魔法の研究を進めとったんだ」
「土地の力、ですか?」
「あっちの世界では龍脈、ドラゴンパワーラインと言っとった。おらたちに言わせりゃ〝魔力の豊富な土地〟てだけだが」

 この異世界転移術はベンとセイジ主導で、クウには話だけはしてあるそうだ。その孫ユウキ君にはこれから説明するつもりだということだった。

「しかし、だということはニホンなる異世界には他にもあなたがた王族の末裔が転移したと?」
「多分な。古い時代から互いに交流してた形跡があったべ。けんどおらたち三人を境に日本へやってくる者はおらんがった」
「こちら側のダンジョン崩落のせいでしょうね。もなか村側の次元の扉もダンジョンだったのですか?」
「神隠し伝説は洞窟だ。祠がある。だけんどもなか村にはもっと大事なものがある」
「他にも?」
「もなか村には龍脈が通ってる。その龍脈を集める媒体に、おらたち異世界人の遺骨が魔石代わりに使われたんじゃねえかって。だからいちばん重要なのは、――遺骨が集まった墓地だ」

 私は思わず息を飲んだ。なんということだ。それは、その仕組みはまるで!

「ベン! それは禁じられた呪術だ!」
「そんだ。龍脈の力を遺骨にまとわせると、同じ血筋の子孫に福徳の恩恵が流れる。でもな、おらたち一世代目の異世界人ならともかく、現地人と交わった子孫たちはもう最初の呪術もなんも知らんのだ」

 自力で異世界転移の術式を作り上げたことといい、さすが優秀で知られたアケロニア王族、と私は舌を巻く思いだった。

「もしや。ニホンにあなたがたやこの世界の人間が転移してしまうのは、魔力を狙った誰かが意図的に……?」
「古い時代に、多分な」

 だがもうその仕組みを知る者もおらず、もなか村の力に気づいたかつての支配者たちも、いくつかの先祖の墓参りにくるぐらいだったそうだ。

「やはり、そこまでして……この国に、還りたかったのですか」
「本音を言うとそれほどじゃねがった。クーティア様も現地人とご結婚なすってご子息たちも儲けられてたし。けんど龍脈に絡め取られた魂が土地に縛られとったから。祖国に還してやりてえなってずっと思ってたんだあ」

 ということは、この人たちは。

「もう、元の世界に戻るつもりはないんですね」
「んだな。まあ、ユウキはわからん。あれはまだ若い。戻るなら、もなか村の龍脈管理を教え込んでおかねえと」

 ベンの話を聞き終えて、私は深い溜め息をついた。一緒に聞いていた薬師の部下も同じだ。

「国に、なんと報告したものか」

 事実をありのまま報告するしかないんだろうな……

 薬師小屋の外は強い風が吹き始めている。今日は午後から嵐になるだろう。




しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...