異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
46 / 216
第一章 異世界転移、村ごと!

俺、幼女にいつ言おう「御米田ピナレラにならないか?」

しおりを挟む

  * * *


 嵐の予兆を知らされ、俺はばあちゃん、ピナレラちゃんと一緒に服の着替えと、まだまだ残っていた備蓄用の食料や米をカートに載せて男爵の家に向かった。

 備蓄は非常用持ち出し袋に入れて既に男爵の屋敷に預けた分以外の、非常食だ。
 水やお湯を入れるだけで食えるアルファ化米のパックを段ボールに詰めた。もなか村はスーパーも雑貨屋も無くなってしまったから、これだけはばあちゃんにペットボトルの水と一緒に備蓄してけろって念押ししてたやつだ。
 あとはお約束の缶入り乾パンや携帯食など。非常食用は三年から五年保存が可能で、これも必ず一定量を確保しとけって言ってあった。

 朝飯を済ませて八時頃になると、外の風が少しやんだ。その隙に三人でピャーッと、いや、ばあちゃんとピナレラちゃんはカートに荷物と一緒に乗ってもらって俺がひたすら押しまくった。
 農業用のゴムタイヤ付きリヤカーだから砂利道も走れるのは良かったよな。カゴタイプだから人が乗っても安定するとこもいい。
 何せ空はもう黒い雲が覆ってたし、ぽつぽつと雨もパラついていたので、八十すぎのばあちゃんや四歳児ピナレラちゃんの足に合わせてたら男爵の屋敷に着く前に本降りになるかもしれない。

 カートの耐荷重量は200キロ。アルミ製だからスチール製の半分以下だが、ばあちゃんは50キロちょっと、ピナレラちゃんも15キロほどだろう。荷物は米入れて40キロぐらい。
 合計は……考えないことにして俺は頑張ってカートを押して男爵の屋敷を目指した。

 屋敷に着くと案の定、一気に空は乱れて雨が降り始めた。
 さあて、ピナレラちゃんに「御米田家の子にならんか?」ってお話を……と思ったらピナレラちゃんは屋敷の手伝いに行ってしまった。うう、働き者の良い子だああ……
 後で男爵にも話を通しておかねえと。

 ばあちゃんは持参したもなか村の米で、男爵家の料理人とおにぎりを作ることにしたようだ。おにぎりは温めなくても食えるから、夜の分もまとめて大量に握るらしい。

「来だか。ユウキ」
「勉さん、ポーションはどうなって」

 男爵の屋敷で出迎えてくれた勉さんは、見た感じ、まだ杖を持ってるし足は治ってないようだ。
 だが勉さんはニヤリと笑って、分厚いレンズの黒縁眼鏡を外した。

「どんだ? なかなかええ男じゃろ」
「あー! 勉三さん、顔! 顔治ってるー!?」

 まだちょっと眉の辺りが歪んでるが……うっわ、さすが遠縁。痩せすぎなのと顎の形が違うのを除くと、うちの親父によく似てる。眼光が鋭くて睨まれるとチビりそうになる威圧感とかそっくり。
 子供の頃は、目の周りが陥没した顔に従兄弟はビビッてたし、俺もちょっと怖かった。この人、口調もかなりきついしな。
 だがこの人はばあちゃんちのご近所さんでもあって、俺も従兄弟もよく勉強や遊びで世話になったものだ。
 特にものすごく頭がいい。今でこそ障害者年金と生活保護で生きているが、本当なら東京の大学に進学してエリート街道を邁進していたはずの人だ。

 だがこの人が足を悪くして、デカい眼鏡のフレームと分厚いレンズで目元を隠さなきゃいけないほど酷い顔になった理由がある。
 勉三さんは例の、もなか村の山の一つを外資に売り払った地主の息子と友人だった。もうその頃にはゴルフ場もできて村の湧水汚染は深刻だったそうだが……特に芝の除草剤だ。せめて環境汚染を軽減する薬剤に変えろと忠告するも友人やその親の地主は聞かず。
 最終的に物理、友人やその取り巻きたちと殴り合いの喧嘩に発展し、片足がバキバキに折られて顔も目の周りが潰れて視力もガタ落ちした。
「一対一ならおらぁ怪我なんぞしながっだ!」が勉さんの口癖だが、相手は六人だったそうなので単純で数で負けたわけだ。
 ――いや負けてない、勝ったんだ。結果的に相手全員を病院送りにして、地主親子はもなか村にも、隣のもなか町にもいられなくなってどこかへ引っ越していった。

 しかし喧嘩には勝ったが、合格していた東京の大学の入学式までに治らず、東京に行けなかった。
 目も両目揃って、あのぶ厚いレンズの眼鏡でギリギリ物がぼんやり見えるぐらいの視力低下。足も骨はくっついたけど杖なしでは歩けない。
 一年二年で回復するほど甘い怪我ではなかった。……泣く泣く、休学ではなく入学辞退した。それが顛末だ。
 当時はまだご両親がいたそうだし、何とか家の中でできる仕事で生計を立てていたが、亡くなった後は村長の勧めで大人しく生活保護を申請して現在に至る。

「あとは毎日ポーション塗っで、飲めば治るとさ。足もな」
「よかったなあ、勉さん。眼鏡はまだ必要なのけ?」
「んだ。レンズはもちょっと度の低いのに変えるべさ。隣のど田舎町まで行けば眼鏡屋もあるそうだで」

 こんなに嬉しそうにはしゃいでいる勉さんを初めて見る。何十年も不自由だった目や足が治るんだ、そりゃ浮かれもするよな。

「あ。この匂い」

 厨房のほうから漂う生姜とニンニク、醤油の香ばしい匂い。これは――唐揚げだ!

 浮き浮きした足取りで食堂にばあちゃんたちの手伝いに向かう俺を見送りながら、村長と勉さんがこんな話をしてたらしい。

「ユキちゃんにいつ話す?」
「まあ、いつでもよかんべ」

 後から振り返れば、まだまだ異世界体験がイージーモードのうちに、ちゃんとチュートリアルせつめいは済ませておいてほしかったっぺ!








NEXT→ (´∀`)ノカリャアゲ!🍙

しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...