85 / 216
第二章 異世界ど田舎村を救え!
俺、川で焼き魚と芋煮 ※おいちい回
しおりを挟む
「そろそろ魚が焼けます。どうしますか?」
「鍋のほうはどうなった? 具に火ぃ通ったか?」
「大丈夫そうです」
「よし」
さすがにまだ四歳のピナレラちゃんは見学のみ。火の番はユキりんに任せて俺は川魚釣りに集中していた。
もう季節は七月、夏だ。とはいえ、ど田舎村もアケロニア王国の最果ての北部で寒い。旬も終わりのはずの鮎がまだ残ってて、たんまり釣れた。
釣れた鮎は家から持参していたクーラーボックスへ放り込み、氷締めだ。男爵から貰っていた氷の魔石をかざすとクラッシュアイスが溢れてくる。
……ここは魔法のある異世界だ。最近の俺は王様から貰ったチート大剣の影響か魔力の使い方を覚え始めた。魔力をちょいっと流せば魔石や魔導具の扱いもお手の物。
「あ、焚き火の中に木炭入れておいて。持ってきたやつ全部」
「わかりました」
釣竿を片付けて、調理中の焚き火に戻る。
うむ、鮎はこんがり良い焼け具合。
すぐ隣には、石で組み立てた簡易かまどにステンレス鍋をかけている。中身は――芋煮だ。
芋煮。それは山形県の郷土料理にして東北ソウルフードの一つ。地域によって名称や具、味付けのベースなど様々だが、もなか村はオーソドックスに里芋中心の濃口醤油味である。
ちょうどばあちゃんちにも去年収穫した分の備蓄があった。俺は里芋は洗って薄皮を剥いておき、その他の具はばあちゃんに頼んで下処理をお願いしてあった。
ゴボウ、こんにゃく、ネギ、舞茸などのキノコ類。山の川べりで作る予定だから今回は肉抜き。もなか山には龍神伝説の祠があって、魚はいいが昔から肉食厳禁と言われている。
牛肉入りの芋煮は村で皆が集まったときに作る予定だ。
御米田家の芋煮は、最初に大量の洗い里芋を醤油で炒めるところから始まる。これは芋煮と里芋の煮っころがしを一緒に作るためだとばあちゃんが言っていた。家で作るときは炒めた里芋は半分別の鍋に移し、砂糖を足して煮っころがしにする。
あとは残りの具を全部入れて、里芋が煮えるまでひたすら煮る。旬の里芋なら短め、季節外れの備蓄用を使うなら十分以上コトコトと。
汁を少しだけ味見して、追加で醤油を少しだけ足して出来上がり。
焼き魚はここに来る途中で採ってきた笹の葉を皿代わりに。芋煮はキャンプ用のプラスチック丼で。
テーブルや椅子は辺りの岩や石を上手く活用して、さあ昼飯だ!
「さ、二人とも召し上がれ」
「いただきます」
「いただきましゅ!」
子供二人がさっそく鮎の塩焼きの串に手を伸ばす。そうそう、パリッとこんがり焼けた鮎にはかぶりつくのが一番だ。
俺もさっそく……
「あゆしゃん。おいちいねえ」
ほくほくの白身魚を頬張って、ピナレラちゃんの『おいちい』が出た。ニコニコの笑顔でむしゃむしゃ食べている。
隣のユキりんは無言だ。だがもう二匹目に手が伸びている。さすが育ち盛り十四歳。
「もなかの鮎はやっぱ美味いな。はらわたまで食えるし」
鮎に限らず川魚は寄生虫リスクがあるから養殖もの以外の内臓を食うなと言われる。
だが今回みたいに源泉近くの渓流で釣った鮎は、焼けば普通にはらわたが食える。鮎は川底の藻を食うから内臓に爽やかな香りと苦味混じりの旨みがあって美味い。
よそ者に話すと許可なく山に入り込むから、もなか川の外では絶対に話すなと言われて俺も育っている。
俺たち用に大小様々な鮎を九匹焼いている。
まだまだ釣れるだろうし、今日はばあちゃんへの土産と、村長と勉さんのいる男爵家への差し入れ分も釣るのがノルマだ。
「二人とも、芋煮も食ってみろ。もなか村の名物だ、美味いぞ」
「あい!」
「……はい」
「アッ、熱いからちゃんとフーフーしてだぞ!?」
ピナレラちゃんは元気なお返事、ユキりんはちよっと控えめなお返事。
丼から直接汁をずずっとすすり、二人の動きが止まった。かと思ったら今ではすっかり慣れた箸使いで具を口に運んでいる。
俺も醤油味のとろみのある汁を一口。……舞茸などのキノコやゴボウからいい出汁が出ている。ああ、もなかの味だなあと思う。染みる。
本来なら砂糖を加えて甘じょっぱい味もいいのだが、ど田舎村のあるアケロニア王国では料理には滅多に砂糖は使わないそうだ。今回は現地人の味覚に合わせてアレンジしてある。
しかし濃口醤油だけでこの深い味が出るのだから、芋煮は奥が深いっぺ。
「おにいちゃ。おいも、おいちい!」
「……すごいです。空さんの煮物も美味しかったですけど、汁物でも美味しいお芋ですね」
そうだろう。この独特な舌触りは里芋ならではだべ。うちの芋煮は最初に醤油で炒めるから香ばしさも加わってさらに美味いのだ。
七月の今月下旬から秋にかけてが里芋の収穫期だ。その前に去年の収穫分を消費せんとな。
NEXT→御米田には焼きおにぎりに秘密兵器があった……🍙
「鍋のほうはどうなった? 具に火ぃ通ったか?」
「大丈夫そうです」
「よし」
さすがにまだ四歳のピナレラちゃんは見学のみ。火の番はユキりんに任せて俺は川魚釣りに集中していた。
もう季節は七月、夏だ。とはいえ、ど田舎村もアケロニア王国の最果ての北部で寒い。旬も終わりのはずの鮎がまだ残ってて、たんまり釣れた。
釣れた鮎は家から持参していたクーラーボックスへ放り込み、氷締めだ。男爵から貰っていた氷の魔石をかざすとクラッシュアイスが溢れてくる。
……ここは魔法のある異世界だ。最近の俺は王様から貰ったチート大剣の影響か魔力の使い方を覚え始めた。魔力をちょいっと流せば魔石や魔導具の扱いもお手の物。
「あ、焚き火の中に木炭入れておいて。持ってきたやつ全部」
「わかりました」
釣竿を片付けて、調理中の焚き火に戻る。
うむ、鮎はこんがり良い焼け具合。
すぐ隣には、石で組み立てた簡易かまどにステンレス鍋をかけている。中身は――芋煮だ。
芋煮。それは山形県の郷土料理にして東北ソウルフードの一つ。地域によって名称や具、味付けのベースなど様々だが、もなか村はオーソドックスに里芋中心の濃口醤油味である。
ちょうどばあちゃんちにも去年収穫した分の備蓄があった。俺は里芋は洗って薄皮を剥いておき、その他の具はばあちゃんに頼んで下処理をお願いしてあった。
ゴボウ、こんにゃく、ネギ、舞茸などのキノコ類。山の川べりで作る予定だから今回は肉抜き。もなか山には龍神伝説の祠があって、魚はいいが昔から肉食厳禁と言われている。
牛肉入りの芋煮は村で皆が集まったときに作る予定だ。
御米田家の芋煮は、最初に大量の洗い里芋を醤油で炒めるところから始まる。これは芋煮と里芋の煮っころがしを一緒に作るためだとばあちゃんが言っていた。家で作るときは炒めた里芋は半分別の鍋に移し、砂糖を足して煮っころがしにする。
あとは残りの具を全部入れて、里芋が煮えるまでひたすら煮る。旬の里芋なら短め、季節外れの備蓄用を使うなら十分以上コトコトと。
汁を少しだけ味見して、追加で醤油を少しだけ足して出来上がり。
焼き魚はここに来る途中で採ってきた笹の葉を皿代わりに。芋煮はキャンプ用のプラスチック丼で。
テーブルや椅子は辺りの岩や石を上手く活用して、さあ昼飯だ!
「さ、二人とも召し上がれ」
「いただきます」
「いただきましゅ!」
子供二人がさっそく鮎の塩焼きの串に手を伸ばす。そうそう、パリッとこんがり焼けた鮎にはかぶりつくのが一番だ。
俺もさっそく……
「あゆしゃん。おいちいねえ」
ほくほくの白身魚を頬張って、ピナレラちゃんの『おいちい』が出た。ニコニコの笑顔でむしゃむしゃ食べている。
隣のユキりんは無言だ。だがもう二匹目に手が伸びている。さすが育ち盛り十四歳。
「もなかの鮎はやっぱ美味いな。はらわたまで食えるし」
鮎に限らず川魚は寄生虫リスクがあるから養殖もの以外の内臓を食うなと言われる。
だが今回みたいに源泉近くの渓流で釣った鮎は、焼けば普通にはらわたが食える。鮎は川底の藻を食うから内臓に爽やかな香りと苦味混じりの旨みがあって美味い。
よそ者に話すと許可なく山に入り込むから、もなか川の外では絶対に話すなと言われて俺も育っている。
俺たち用に大小様々な鮎を九匹焼いている。
まだまだ釣れるだろうし、今日はばあちゃんへの土産と、村長と勉さんのいる男爵家への差し入れ分も釣るのがノルマだ。
「二人とも、芋煮も食ってみろ。もなか村の名物だ、美味いぞ」
「あい!」
「……はい」
「アッ、熱いからちゃんとフーフーしてだぞ!?」
ピナレラちゃんは元気なお返事、ユキりんはちよっと控えめなお返事。
丼から直接汁をずずっとすすり、二人の動きが止まった。かと思ったら今ではすっかり慣れた箸使いで具を口に運んでいる。
俺も醤油味のとろみのある汁を一口。……舞茸などのキノコやゴボウからいい出汁が出ている。ああ、もなかの味だなあと思う。染みる。
本来なら砂糖を加えて甘じょっぱい味もいいのだが、ど田舎村のあるアケロニア王国では料理には滅多に砂糖は使わないそうだ。今回は現地人の味覚に合わせてアレンジしてある。
しかし濃口醤油だけでこの深い味が出るのだから、芋煮は奥が深いっぺ。
「おにいちゃ。おいも、おいちい!」
「……すごいです。空さんの煮物も美味しかったですけど、汁物でも美味しいお芋ですね」
そうだろう。この独特な舌触りは里芋ならではだべ。うちの芋煮は最初に醤油で炒めるから香ばしさも加わってさらに美味いのだ。
七月の今月下旬から秋にかけてが里芋の収穫期だ。その前に去年の収穫分を消費せんとな。
NEXT→御米田には焼きおにぎりに秘密兵器があった……🍙
806
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる