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第二章 異世界ど田舎村を救え!
未来のどこかの時間軸~side夢の王様
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「だからなぜそこで私に祈るのだ……。愛を欲しがる以前の問題だ。ど田舎村では出会いの場がそもそもないではないか」
夢の王様、つまりこの私相手に日々祈るオコメダ・ユウキに私はやや引き気味だった。
私はアケロニア国王――――。そうだな、オコメダ・ユウキと同じように気軽に王様と呼ぶといい。
ある秘術を用いて、私はこの国の最果ての村の過去を覗き見ている。そう、あの〝ど田舎村〟だ。時間軸はおよそ百年前。
いま私の治めるアケロニア王国には頭の痛い問題が山積みだ。
ある聖者に解決策を請うと、彼からこのような預言を賜った。
『アケロニア王国内、最果ての地にひとつの答えがある』
我が国で最果ての地といえば、最北端にあるアルトレイ公領しかない。
本土と地続きでありながら、山や川に囲まれた飛び地になっているせいで時代遅れの素朴な僻地と化している。今では別称のど田舎領の名前のほうが通りが良い。
曰く付きの土地でもある。
過去には必ず王族が大公として治めていたが、今から二百年ほど前か。当時の幼い大公令嬢が行方不明となり、続くように王家の親戚だった騎士団長や神官まで消息不明となって、――誰も戻って来なかった。
父大公は失意のうちに亡くなり、残った現地の王族は皆、王都に引き上げてしまった。
ところがそれから百年後。今の私の時代からは百年前だな。
行方不明になっていたアルトレイ公領の大公令嬢たち三人が年老いた姿で戻ってきたのだ。
彼女たちはこの世界とは違う世界〝異世界〟に飛んでしまっていたのだそうだ。
異世界からこの世界に転生したり転移したりは珍しいが、比較的知られた現象だ。大国なら転生者や転移者の集まるコミュニティや集落が必ずある。
もちろん我が国にも。王都に近い温泉地にも一ヶ所あるので保養地として王家が別荘を持っている。
だが彼らのような、こちら側の世界から異世界に飛んで、また戻ってきた例はとても珍しい。
記録によれば、老いた大公令嬢たちがいた異世界の国を〝日本〟といった。
――日本。聞き覚えのある国名だった。
実は我がアケロニア王家の王族にもひとりだけ異世界転生者がいた。彼が前世で暮らしていた国の名前が日本と言っていた。
「そう……そうだ、王族たちの帰還だけでは足りなかった。土地を含めて村ごと……異世界の設備や資料は魅力的だが目的はそこではない……」
私は玉座に腰掛けたまま目を閉じた。まぶたの裏には遠く離れた百年前のど田舎村の自然に溢れた光景が浮かんでいる。
この世界にはない材質で建てられた白い箱型の建物、村役場。敷地内には小規模の公営温泉の小屋もある。
あまり標高の高くない山に囲まれた田畑では様々な農作物が育てられている。
やはりこの世界にはない意匠の木造りの平屋。――オコメダ・ユウキの家だ。
黒いアスファルトなる資材の敷き詰められた道路をまっすぐ進んで鉄の橋を渡った先に、細長い縦長の石のモニュメントが立ち並ぶ広場に出る。
モナカ・ヴィレッジの共同墓地だ。
「過去に日本へ転移した王族や子孫たちの墓、か。検証して王家の墓に埋葬し直すことになるだろうな……だが」
『アケロニア王国内、最果ての地にひとつの答えがある』
聖者から賜った預言と照らし合わせても、まだ答えらしきものは見当たらない。
オコメダ・ユウキはといえば、ど田舎村に早々に馴染んで地元民とも仲良くなっているようだが……
「愛らしい幼女も普通の子供のようであるし。だとすると、やはりこちらか」
目を閉じた暗い視界の先には、幼女のおままごとに付き合っている十代前半の少年の姿がある。
ショコラブラウンの柔らかな髪、澄んだアメジストの瞳の少年。まだ小柄だがとても美しい顔立ちをしている。
しかしその表情にはどことなく影がある。
今でこそ根絶されたが、百年前は我が国にもまだ奴隷商の暗躍があった。彼はその被害者なのだ。
「ユキリーン・リースト。記録によればユキリーン・オコメダ……なるほど、家出した先でオコメダ家の養子になったか。話には聞いていたが、あのリースト家の男子がなあ……」
リースト家は我がアケロニア王国の有名な魔法の大家だ。今は侯爵家だが百年前はまだひとつ下の爵位の伯爵家だった。
血筋に麗しの美貌と数多の魔法を受け継いでおり、優秀な者が揃った一族なので王家も一目置いている。
私は学生時代、本家の若くして当主となった人物と縁があったのでリースト一族についてはとても詳しい。
一族の結束が非常に強固で、家族仲や親戚仲も良いから、ユキリーンのように家出する子供の話など聞いたことがなかった。
そもそも身内に過保護なリースト家の者がまだ未成年の家族を放置するとも考えにくい。
「オコメダ・ユウキとユキリーン。二人をしばらく追う必要がありそうだ」
王家が持つ資料にはない、どのような秘密が彼らにはあるのだろうか?
NEXT→その頃、日本の元カノは実家青森に帰省していた……
夢の王様、つまりこの私相手に日々祈るオコメダ・ユウキに私はやや引き気味だった。
私はアケロニア国王――――。そうだな、オコメダ・ユウキと同じように気軽に王様と呼ぶといい。
ある秘術を用いて、私はこの国の最果ての村の過去を覗き見ている。そう、あの〝ど田舎村〟だ。時間軸はおよそ百年前。
いま私の治めるアケロニア王国には頭の痛い問題が山積みだ。
ある聖者に解決策を請うと、彼からこのような預言を賜った。
『アケロニア王国内、最果ての地にひとつの答えがある』
我が国で最果ての地といえば、最北端にあるアルトレイ公領しかない。
本土と地続きでありながら、山や川に囲まれた飛び地になっているせいで時代遅れの素朴な僻地と化している。今では別称のど田舎領の名前のほうが通りが良い。
曰く付きの土地でもある。
過去には必ず王族が大公として治めていたが、今から二百年ほど前か。当時の幼い大公令嬢が行方不明となり、続くように王家の親戚だった騎士団長や神官まで消息不明となって、――誰も戻って来なかった。
父大公は失意のうちに亡くなり、残った現地の王族は皆、王都に引き上げてしまった。
ところがそれから百年後。今の私の時代からは百年前だな。
行方不明になっていたアルトレイ公領の大公令嬢たち三人が年老いた姿で戻ってきたのだ。
彼女たちはこの世界とは違う世界〝異世界〟に飛んでしまっていたのだそうだ。
異世界からこの世界に転生したり転移したりは珍しいが、比較的知られた現象だ。大国なら転生者や転移者の集まるコミュニティや集落が必ずある。
もちろん我が国にも。王都に近い温泉地にも一ヶ所あるので保養地として王家が別荘を持っている。
だが彼らのような、こちら側の世界から異世界に飛んで、また戻ってきた例はとても珍しい。
記録によれば、老いた大公令嬢たちがいた異世界の国を〝日本〟といった。
――日本。聞き覚えのある国名だった。
実は我がアケロニア王家の王族にもひとりだけ異世界転生者がいた。彼が前世で暮らしていた国の名前が日本と言っていた。
「そう……そうだ、王族たちの帰還だけでは足りなかった。土地を含めて村ごと……異世界の設備や資料は魅力的だが目的はそこではない……」
私は玉座に腰掛けたまま目を閉じた。まぶたの裏には遠く離れた百年前のど田舎村の自然に溢れた光景が浮かんでいる。
この世界にはない材質で建てられた白い箱型の建物、村役場。敷地内には小規模の公営温泉の小屋もある。
あまり標高の高くない山に囲まれた田畑では様々な農作物が育てられている。
やはりこの世界にはない意匠の木造りの平屋。――オコメダ・ユウキの家だ。
黒いアスファルトなる資材の敷き詰められた道路をまっすぐ進んで鉄の橋を渡った先に、細長い縦長の石のモニュメントが立ち並ぶ広場に出る。
モナカ・ヴィレッジの共同墓地だ。
「過去に日本へ転移した王族や子孫たちの墓、か。検証して王家の墓に埋葬し直すことになるだろうな……だが」
『アケロニア王国内、最果ての地にひとつの答えがある』
聖者から賜った預言と照らし合わせても、まだ答えらしきものは見当たらない。
オコメダ・ユウキはといえば、ど田舎村に早々に馴染んで地元民とも仲良くなっているようだが……
「愛らしい幼女も普通の子供のようであるし。だとすると、やはりこちらか」
目を閉じた暗い視界の先には、幼女のおままごとに付き合っている十代前半の少年の姿がある。
ショコラブラウンの柔らかな髪、澄んだアメジストの瞳の少年。まだ小柄だがとても美しい顔立ちをしている。
しかしその表情にはどことなく影がある。
今でこそ根絶されたが、百年前は我が国にもまだ奴隷商の暗躍があった。彼はその被害者なのだ。
「ユキリーン・リースト。記録によればユキリーン・オコメダ……なるほど、家出した先でオコメダ家の養子になったか。話には聞いていたが、あのリースト家の男子がなあ……」
リースト家は我がアケロニア王国の有名な魔法の大家だ。今は侯爵家だが百年前はまだひとつ下の爵位の伯爵家だった。
血筋に麗しの美貌と数多の魔法を受け継いでおり、優秀な者が揃った一族なので王家も一目置いている。
私は学生時代、本家の若くして当主となった人物と縁があったのでリースト一族についてはとても詳しい。
一族の結束が非常に強固で、家族仲や親戚仲も良いから、ユキリーンのように家出する子供の話など聞いたことがなかった。
そもそも身内に過保護なリースト家の者がまだ未成年の家族を放置するとも考えにくい。
「オコメダ・ユウキとユキリーン。二人をしばらく追う必要がありそうだ」
王家が持つ資料にはない、どのような秘密が彼らにはあるのだろうか?
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