異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

文字の大きさ
120 / 216
第二章 異世界ど田舎村を救え!

その頃、日本では~side八十神、京都に帰省しお社長の正体に気づく

しおりを挟む
 あの御米田の元カノと別れた後から、僕はどうにも不調で仕方がなかった。
 普段ならやらない凡ミスは連発するわ、社内のカフェスペースに行けば下ろしたてのワイシャツにコーヒーをこぼすわで。

 偏頭痛にも悩まされたし、胃腸の調子もおかしかった。口の中にはいくつも口内炎ができ、先日などついに医者通いだ。
 顔色が悪いことを心配してくれた同じ部署の上司の勧めで半休取って医者に行ったら『胃潰瘍のなりかけ』ときてさらにイライラした。

 あの女と切れるまでのいざこざもだが、やはり僕がやってしまった御米田の企画盗用や女を奪ったことなどが堪えていた。
 どちらも、いつもの僕だったら絶対にやらない愚かな行為だった。特に他人の女を盗るなどホスト経験のある僕にはタブーだったはずだ。トラブルになるのが目に見えているからね。
 これまで社内恋愛したときもかなり気をつけていた。一回だけ相手の女から複数又かけられて他の男と揉めかけたがそれぐらい。

 確かに僕は出世欲の強い男だがあのときの僕は完全におかしかった。
 しかも謝ろうにも御米田はとっくに会社を退職していたし、スマホのメッセージアプリもブロックされている。

 先日、浅草のうなぎ屋で御米田の父親に会って、……許されてようやく僕の中で過ちに一区切りついた。
 次に御米田に会う機会があれば誠意を持って謝ろう。それであいつが許してくれるかはわからないが、その日が来ることを念頭に置いて日々を生き直すことにした。

 だが、あまりにも不調続きで何かがおかしいと思い始めた。
 こういうときは厄除けやお祓いに行くものだと、ホスト時代に世話になったオーナーやお得意様がよく言ってたものだ。
 東京なら神社仏閣は山ほどあるが……

 僕が選んだのは故郷の京都だ。例のコンペ特典の海外支社への栄転も消えた今、仕事も通常通りで特に忙しいこともない。
 京都の夏は茹るほど暑くなる。行くならまだ七月の今月のうちだ。
 金曜だけ有給を取って、金土日の二泊三日で帰省することにした。



 僕のうちは母子家庭だった。
 京都の叡山電鉄の沿線に小さな家があって、そこで母親と高校まで二人暮らしだった。

 母は僕を産むまでは芸妓をやっていたと聞いている。出身地は京都ではない他の地域らしいが詳しく教えてくれることはなかった。
 父親はわからない。けど母子家庭でも経済的に困ってはいなかったから父方からの支援はあったのかもしれない。

 僕を産んだ後の母は芸妓に戻らず、昼間はスーパーのパート、夜はクラブの雇われママで僕を育ててくれた。
 そういう生活だったから僕も水商売の苦労をよく知っていた。ホストクラブのバイトも大学に通ってる間だけと最初から決めていたのだ。

 そして東京新橋の手堅い総合商社に入社した。内定を貰って報告した母が喜んでくれて僕も嬉しかったな……
 母も今は夜の街から遠ざかり、細々と芸妓時代から嗜んでいた短歌の先生として教室を開いたり、地方の生徒の歌の添削をしたりして暮らしている。

 自宅に着いたのは金曜の昼前だった。
 東京から京都へは新幹線で一時間。京都駅からバスを一回乗り換えて自宅最寄りの駅へ。そこから徒歩で十数分。住宅街の片隅にある、バブル期の後に建てられた二階建ての小さな家が僕の実家。

「どうしたの、アキラ。急に帰ってくるなんて連絡貰ったときは驚いたわ」

 久し振りに会った母はまだ五十代の始めだ。僕がまだ家にいた頃と変わらずほっそりした女性である。
 顔は僕とそっくりの美人だ。僕は母親似なのだ。
 地元の人といるときは京言葉を使う母だが、僕と一緒のときは共通語だ。こちらが母の素らしい。僕も東京に出てから長いせいで京言葉はすっかり抜けてしまった。
 昔まだ雇われママだった頃は着物姿も多かったが、最近の母はもう普通に洋服のワンピース姿が日常のようだ。

「いや、もう何年も帰省してないなって思って。仕事も今そんなに忙しくなかったから」
「そう? 悪いんだけど夜は町内会の懇親会があってねえ。外で食べてきてくれる?」
「わかった」

 何か事情があることは母も察してるだろうが探りを入れてくることはなかった。昔から僕たち親子はこういうところがドライだ。



 夕方、母が出かけた後に実家最寄り駅近くをぶらぶらと歩いた。
 スーパーは子供の頃から変わらなかったが、観光客向けの雑貨屋、飲食店などはだいぶ様変わりしていた。
 今年は七月でもう真夏日も多い。京都駅まで出るのも億劫だった僕は、線路沿いから一本住宅街寄りの道にある古い喫茶店に寄ることにした。
 夜はバーになるが十時までなら未成年でも入れる。高校の頃はよくここで母親がいない夜の時間を勉強しながら潰していた店だった。

「アラッ。もしかしてアキラ君!?」

 野太い声のオーナーママにさっそく捕まった。ママと呼ばせるがこの人は男だ。見た目も男だが心は女というやつらしい。自分でオカマだからと昔からネタにしている。

「よく覚えてますね。ママ」
「アキラ君可愛かったもん。将来絶対ええ男になるって確信しとったもん~」

 窓際の席に行こうとして問答無用でカウンターに座らされた。

 ママの手作りレーズンバターで飲むウイスキーがとにかく美味い。ここは夜は国産ウイスキーが飲める穴場なのだ。
 夜の八時を過ぎると地元の学生もほとんどいなくなるから静かに酒を楽しめる。

 軽食も美味くて安い。地元農家から仕入れてる野菜たっぷりの焼きうどんは僕の子供の頃からの好物だ。
 オカマのママとの他愛ないおしゃべりも楽しくて……

「ん?」

 締めに頼んだ、ゆらゆらと湯気で揺らめくカツオ節ごとうどんを箸すくいながら、ふと何かを思い出しそうになった。
 じっとカウンターのママを見つめる。四角い顔の中年のオッサンだ。ママは男だとわかりやすいオカマだが……

 脳裏にパッと浮かんだのは、取引先のあの甲高いのにダミ声のズーズー弁、米俵みどり社長だ。

「しまった。僕としたことが」

 あれがオカマの反対のオナベかとなると自信がなかったが……そうだ、あれは男性というより女性の立ち居振る舞いや雰囲気ではなかったか?

 僕は焼きうどんが冷めるのもかまわず、即座にスマホで米俵社長の会社を検索した。
 会社の公式サイトの社長挨拶の写真だけではわからない。あの解釈を間違えたハイブランドスーツ姿でイモ顔の演歌歌手崩れの姿は変わらない。
 だがSNSで検索しなおすと個人アカウントに辿り着く。投稿画像欄を見ると、夫や息子たちとの旅行やパーティー写真が出てくる……やはり女性だったか……

 だ、だとすると僕は初接待の場で何をした?
 タイの可愛い女の子情報を聞き出して場を盛り上げたつもりで、実は相手をドン引きさせていたのではないか!?

「アキラ君。うどん、冷めるで?」
「……はい」

 もそもそと冷めかけた焼きうどんに再び箸を戻す。美味いはずの焼きうどんの味はもうわからなかった。





NEXT→京都の鞍馬山には魔王殿というお社がある……


しおりを挟む
感想 271

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...