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第二章 異世界ど田舎村を救え!
その頃、日本では~side八十神、鞍馬山で魔王の声を聞く
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冷めた焼きうどんを何とか完食した後、聞き上手なママに誘導されるがままに全部話してしまった。
米俵社長を男と間違えて、自分でもアホやろってぐらい猥談を振ってしまったこと。ママには大爆笑された。はは……僕も笑うしかない。
「この阿呆。東京に戻ったらすぐ謝りに行きなさい!」
「……もちろんです……」
この際ついでとばかりに会社での自分の愚行や、女絡みの失敗などもオブラートに包んで話した。
するとママは少し考える素振りを見せた後で明るく軽い口調で言ってきた。
「厄除けもええけど、お山に登ってきたらどう?」
「鞍馬山ですか。元々そのつもりでした。明日、午前中に登ってきます」
言うとママは満足そうに頷いた。
「社務所でお守りを買うてな。音の鳴るやつ。鈴は魔除けになるから」
翌日土曜日、朝イチで僕は叡山電鉄に乗り鞍馬山へと向かった。
入山料にあたる愛山費を払い、週末だがまだ朝早いから観光客もそこまでいない。せっかく久し振りに登るのだからとリフトカーは使わず入口の仁王門から徒歩で進むことにした。
鞍馬山は歴史の史跡の宝庫だ。寺や神社で手を合わせ賽銭を備えつつのんびりと他の登山客たちと挨拶しながらひたすら山道を登った。
本殿の金堂で、昨晩喫茶店のママに言われた通りお守りを買った。
虎の形をした福虎守りが澄んだいい音を出していたのでそれと、降魔扇という牛若丸と本尊の天狗姿護法魔王尊が描かれた扇子を。鞍馬山は義経伝説と天狗伝説の地でもある。
降魔扇の説明書きには『災禍抜除(禍を祓い清める)破邪顕正(よこしまを正す)の祈りがこめられております。浄風と共に、清めの活力をお受け下さい。』とある。
これは……買うべきだろう。最近の不調や不運を一気に跳ね飛ばしてほしいものだ。扇子なら夏はあおぐために日常的に携帯できるし。
ついでにご朱印帳を買い、その場で御朱印に真言を唱えてもらった。如何にもご利益がありそうだ。部屋に飾ろうと思う。
そのまま本殿を過ぎて奥の院に辿り着くが、ちょうど人の切れ目だったようだ。誰もいなかったので中で一休みすることにした。
さすがに歩き通しで汗だくだ。持参していたタオルハンカチで額や首の周りを拭き、本殿で買い求めたばかりの降魔扇を取り出した。あおいで涼を取ろうとしたのだ。
護法魔王尊が本尊の鞍馬山で。
奥の院の魔王殿で。
その魔王を降ろす意味の降魔扇を開いて。
――そのとき何かのスイッチがカチリと嵌まる音がした。あの御米田ゲンキとうなぎを食った時と同じ音だ。
『――お前に、聖剣の聖者の祝福を授けよう』
『向かう先は魔法のない世界だ。夢の中では元の自分を保てぬやもしれん』
『力の喪失を感じたときは聖地へ行け。どこでもよい、活力と意識の明晰さを与える土地ならばどこでも。力の場を通じて皆の祈りがお前に届くはずだ』
『どうか彼を助けてやってくれ。そのための祝福をお前に』
「!?」
低い男の美声が脳裏に響いた。そして一瞬だけあおいだ扇から青い光が吹き出し、僕の頭を包み込んですぐに消えた。
僕は慌てて魔王殿の中を見回した。何だ今の声は!? ……誰もいない。入口から外を見ても奥の院の広場に人影はなかった。
頭がクラクラする。しばらく魔王殿の中のベンチに座って休んでいたら、他の登山客がやってきてよくわからないお経だか祝詞だかを唱え始めたので、そっと離れた。
歩きながらふと気づいた。ここ最近ずっと悩まされていた頭痛や胃の疼痛がなくなっている。
ミントのガムやタブレットを噛んだときのような清涼感があった。
貴船神社方面への山道を降っていく。さすがに急な山道のこちら側から登ってくる登山客はいなかった。まだ午前中の早い時間なこともあるだろう。
すれ違う周りの登山客は登りも下りも皆息を切らしている
だが不思議と僕はこの山に登っていて疲れたことはない。むしろ山を降りた後の方ががくっと疲れるというか。
鞍馬山の本尊はかつて金星からやってきたという護法魔王尊だ。やはり生まれ育った地域のお山だしご利益があるのかもしれない。
貴船神社側の参道へ降りて、あとは神社のお参り。ここまで来たならやはり奥社も参拝せねば片手落ちだろう。
戻ってくるとカフェや料理屋の開店時間になっている。川床の料理屋で川魚や湯葉の京料理ランチを堪能して、タクシーで駅まで戻る。
学生時代なら足が棒になりながら駅まで歩いただろうが躊躇なくタクシーを使えるのは社会人ならではだろう。
それでも歩き疲れていたが心地よい疲れだった。
地元の駅まで戻ってきたときにはすっかり気力を取り戻していた。
NEXT→八十神は御米田の今を知った……
米俵社長を男と間違えて、自分でもアホやろってぐらい猥談を振ってしまったこと。ママには大爆笑された。はは……僕も笑うしかない。
「この阿呆。東京に戻ったらすぐ謝りに行きなさい!」
「……もちろんです……」
この際ついでとばかりに会社での自分の愚行や、女絡みの失敗などもオブラートに包んで話した。
するとママは少し考える素振りを見せた後で明るく軽い口調で言ってきた。
「厄除けもええけど、お山に登ってきたらどう?」
「鞍馬山ですか。元々そのつもりでした。明日、午前中に登ってきます」
言うとママは満足そうに頷いた。
「社務所でお守りを買うてな。音の鳴るやつ。鈴は魔除けになるから」
翌日土曜日、朝イチで僕は叡山電鉄に乗り鞍馬山へと向かった。
入山料にあたる愛山費を払い、週末だがまだ朝早いから観光客もそこまでいない。せっかく久し振りに登るのだからとリフトカーは使わず入口の仁王門から徒歩で進むことにした。
鞍馬山は歴史の史跡の宝庫だ。寺や神社で手を合わせ賽銭を備えつつのんびりと他の登山客たちと挨拶しながらひたすら山道を登った。
本殿の金堂で、昨晩喫茶店のママに言われた通りお守りを買った。
虎の形をした福虎守りが澄んだいい音を出していたのでそれと、降魔扇という牛若丸と本尊の天狗姿護法魔王尊が描かれた扇子を。鞍馬山は義経伝説と天狗伝説の地でもある。
降魔扇の説明書きには『災禍抜除(禍を祓い清める)破邪顕正(よこしまを正す)の祈りがこめられております。浄風と共に、清めの活力をお受け下さい。』とある。
これは……買うべきだろう。最近の不調や不運を一気に跳ね飛ばしてほしいものだ。扇子なら夏はあおぐために日常的に携帯できるし。
ついでにご朱印帳を買い、その場で御朱印に真言を唱えてもらった。如何にもご利益がありそうだ。部屋に飾ろうと思う。
そのまま本殿を過ぎて奥の院に辿り着くが、ちょうど人の切れ目だったようだ。誰もいなかったので中で一休みすることにした。
さすがに歩き通しで汗だくだ。持参していたタオルハンカチで額や首の周りを拭き、本殿で買い求めたばかりの降魔扇を取り出した。あおいで涼を取ろうとしたのだ。
護法魔王尊が本尊の鞍馬山で。
奥の院の魔王殿で。
その魔王を降ろす意味の降魔扇を開いて。
――そのとき何かのスイッチがカチリと嵌まる音がした。あの御米田ゲンキとうなぎを食った時と同じ音だ。
『――お前に、聖剣の聖者の祝福を授けよう』
『向かう先は魔法のない世界だ。夢の中では元の自分を保てぬやもしれん』
『力の喪失を感じたときは聖地へ行け。どこでもよい、活力と意識の明晰さを与える土地ならばどこでも。力の場を通じて皆の祈りがお前に届くはずだ』
『どうか彼を助けてやってくれ。そのための祝福をお前に』
「!?」
低い男の美声が脳裏に響いた。そして一瞬だけあおいだ扇から青い光が吹き出し、僕の頭を包み込んですぐに消えた。
僕は慌てて魔王殿の中を見回した。何だ今の声は!? ……誰もいない。入口から外を見ても奥の院の広場に人影はなかった。
頭がクラクラする。しばらく魔王殿の中のベンチに座って休んでいたら、他の登山客がやってきてよくわからないお経だか祝詞だかを唱え始めたので、そっと離れた。
歩きながらふと気づいた。ここ最近ずっと悩まされていた頭痛や胃の疼痛がなくなっている。
ミントのガムやタブレットを噛んだときのような清涼感があった。
貴船神社方面への山道を降っていく。さすがに急な山道のこちら側から登ってくる登山客はいなかった。まだ午前中の早い時間なこともあるだろう。
すれ違う周りの登山客は登りも下りも皆息を切らしている
だが不思議と僕はこの山に登っていて疲れたことはない。むしろ山を降りた後の方ががくっと疲れるというか。
鞍馬山の本尊はかつて金星からやってきたという護法魔王尊だ。やはり生まれ育った地域のお山だしご利益があるのかもしれない。
貴船神社側の参道へ降りて、あとは神社のお参り。ここまで来たならやはり奥社も参拝せねば片手落ちだろう。
戻ってくるとカフェや料理屋の開店時間になっている。川床の料理屋で川魚や湯葉の京料理ランチを堪能して、タクシーで駅まで戻る。
学生時代なら足が棒になりながら駅まで歩いただろうが躊躇なくタクシーを使えるのは社会人ならではだろう。
それでも歩き疲れていたが心地よい疲れだった。
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