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第二章 異世界ど田舎村を救え!
俺とばあちゃんの悔い
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誰にでも優しく穏やかなばあちゃんだが、過去に一度だけ怒髪天つく勢いで激怒したことがある。
俺には同い年の従兄弟がいた。父方の叔父の長男だ。けどバイト先の事故で高校の頃に亡くなっている。
その葬儀のとき。穏やかなはずのばあちゃんが叔母さん、つまり従兄弟の母親で叔父さんの奥さんに激怒したんだ。
「葬儀が終わって叔父さんちに集まったとき、従兄弟の部屋から日記が出てきてさ」
「何が書いてあったんです?」
「んー……」
「おにいちゃ?」
俺は胡座の上に座って見上げてくるピナレラちゃんのキャラメル色のツヤ髪を撫で撫でした。そのまま話すとまだ幼いこの子によくない。少し言葉を選ぶ必要がありそうだが……
「母親がちょっと問題有りの人だったんだ。学校から帰ってきても弟にはおやつがあるのに兄貴だったそいつの分はなかったとか」
「兄弟差別ですか」
「んだ。上の学校に行くのに進路相談も全然話を聞いてくれなかったこととか書いてあった」
日付は中学時代から始まって、事故死した高校一年の冬で止まっていた。
地元の高校に進学してからも、従兄弟がバイトのときに限って自分以外の家族三人で外食に出てたようだ。しかも従兄弟への土産などもなかった。
「亡くなる前の日の日記には、家族が出前で頼んだピザが自分に一切れも残されてなくて残念だったって書いてあった。それ見たら俺も辛くなっちまって」
息子の日記に書いてあることが本当かと叔父さんに詰め寄られて、全部本当だと叔母さんが逆ギレして全部白状した。
そこからの出来事は正直、まだ当時多感な高一だった俺にも辛かった。俺だけじゃない。旦那だった叔父さんや、俺の両親も含めて御米田家側は全員ショックだったと思う。
そもそも叔母さんは姑のばあちゃんと反りが合わなかった。
だからばあちゃんに性格がそっくりな長男も大っ嫌いだったと言い始めたんだ。
『だからなに? 私は母親としてちゃんと世話をしていたわ!』
実際その通りだったようだが、いきなり豹変した奥さんに叔父さんが茫然自失としてしまって。
代わりにうちの親父が日記を読んでその場で叔母さんに事実確認を一つ一つやったんだ。
「結果、叔母さんはもう真っ黒。従兄弟をバイトに行かせてたところからしておかしかったんだ」
「ばいとってなあにー?」
「短い時間だけお勤めすることだ。従兄弟はレストランに働きに行ってたんだよ」
「そのバイトがおかしいとは?」
まず、従兄弟がバイトするよう仕向けたのは叔母だった。
家の経済状況が厳しいと嘘を仄めかせて、できるだけ家にいる時間を減らさせていたんだ。嫌いな息子に家にいてほしくなかったんだな。
大卒だがサラリーマンの俺の親父と違って、叔父さんは高卒だったけど若いうちから独立して成功して、なかなかの金持ちだった。
当時まだ四十手前で東京にそこそこ広い庭と車庫付きの家建ててたもん。うちはふつうに賃貸のマンション暮らし。
だから叔母も外に働きには出ず専業主婦だった。……本来なら従兄弟もバイトの必要なんてなかったほど金持ちだったんだよ。
と俺はユキりんだけでなくピナレラちゃんにもわかりやすく説明した。
「で、従兄弟は真冬の大雪の日にバイトに行って。雪で落ちてきた店の看板の当たりどころが悪くて死んじまった」
「そうでしたか……」
「まだ学生だったんだ。そんな大雪の日なんて別にバイトぐらい休んだって良かったはずなのに」
これらの事実を知ったばあちゃんは、俺たち御米田家の面々が初めて見る激怒ぶりだった。
毒叔母を叩こうと手を上げたばあちゃんを親父が慌てて押さえてたっけ。あんなに感情を剥き出しにしたばあちゃんを俺も親父も親戚たちも初めて見た。
叔父夫婦はその後離婚して、弟のほうは母親似だったことから叔母が強引に親権を獲得している。
「で、さっき俺たち思い出したんだ。子供の頃、ばあちゃんちで起きたこと」
今日と同じようにばあちゃんがパンケーキを焼いてくれた。
ちょうど親父が海外出張先のアメリカから帰国したばかりで、土産に持って帰ってきた現地で人気のパンケーキミックスがあったからそれで。
洒落た店で食べるわけでもない。おうちのおやつだから今日と同じように台所のテーブルの上にバターやメープルシロップ、ジャムや缶詰のフルーツなんかを用意して各自で好きなだけチョイスして食べるスタイル。
「俺と従兄弟はまだ子供だったから、ばあちゃんが最初からパンケーキにバターのっけて、メープルシロップもかけてくれたんだよな」
「なるほど……?」
「だけど甘いものが好きだった従兄弟は、ばあちゃんに『もっと甘いのかけて』って頼んだんだ。そうしたら」
『いじきたない! やめなさい!』
鋭い声で叔母が従兄弟を怒鳴りつけた。
さっきフラッシュバックしてきたのはそれだ。
俺たち御米田家側は、俺や従兄弟がまだ子供だった頃のこのパンケーキ事件の頃から既に、叔母が従兄弟を虐待してたと気づいて本当に血の気が引いたもんだった。
特にばあちゃんや親父は「あの頃ちゃんと気づいてたら」ってずっと悔やんでも悔やみきれない様子だった……
「俺に言われたわけじゃないのに、すごい怖い声と顔で怒鳴ってたから、俺も自分に言われたわけじゃねえのに泣きそうになっちまって」
「それで?」
「まだじいちゃんが生きてた頃だ。そのときはじいちゃんが『物食ってるときに大声出すんじゃない!』って怒って、叔母さんも謝ってそれでおしまい」
「それ本当に終わったんですか? 何だか後を引きそうな出来事ですけど」
「そうだな。翌年から叔父さん家族は、叔母さんだけ来なくなった。じいちゃんに怒られたせいだったかもしれない。でも叔母さんに赤ちゃんができたからってのもあったみたいだな」
それから中三の冬までは叔父さんと従兄弟の二人だけが長期休みにもなか村へ帰省していた。
叔母と、下に生まれた弟はそれ以降一度もばあちゃんちに来ていない。
「俺もうちの両親も、……ばあちゃんも、叔父さんの家族に違和感を感じてたんだが、確かめる前にカズアキは事故で死んじまった」
母親から意図的に家族の輪から外され、働く必要のないアルバイトに出て、社会人だって通勤の困難な大雪の日に事故で。
で、葬式の日にカズアキの日記が見つかって、すべてが書かれていた日記によって叔母の悪行が親戚たちにバレた。
「バレたのはそれだけじゃない。結局、叔父さん夫婦は離婚したけど残った弟の親権を争うときにとんでもない事実が判明した。――弟の父親が別の男だったんだ」
「うわあ……最悪じゃないですか。托卵ですか」
「まったくだよ。長男が大嫌いなばあちゃんそっくりだったから、叔父さんと次の子供作ってまた似たら最悪だって思って浮気。もう絶対、再構築は無理だなって当時の俺から見ても思ったもん」
この辺になるとピナレラちゃんは話が難しくてわからないようで、集中が途切れてテレビのリモコンに手が伸びていた。
俺もユキりんも後味悪い気分を抱えつつ、一緒に配信される幼児向けアニメを観て何となく話はそれで終わり。
その後はばあちゃんも仏壇の部屋から戻ってきて、夕方に飯作ってくれていつもの日常だった。
NEXT→幼女の夜泣きに御米田たちは困ってしまった……
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その葬儀のとき。穏やかなはずのばあちゃんが叔母さん、つまり従兄弟の母親で叔父さんの奥さんに激怒したんだ。
「葬儀が終わって叔父さんちに集まったとき、従兄弟の部屋から日記が出てきてさ」
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「おにいちゃ?」
俺は胡座の上に座って見上げてくるピナレラちゃんのキャラメル色のツヤ髪を撫で撫でした。そのまま話すとまだ幼いこの子によくない。少し言葉を選ぶ必要がありそうだが……
「母親がちょっと問題有りの人だったんだ。学校から帰ってきても弟にはおやつがあるのに兄貴だったそいつの分はなかったとか」
「兄弟差別ですか」
「んだ。上の学校に行くのに進路相談も全然話を聞いてくれなかったこととか書いてあった」
日付は中学時代から始まって、事故死した高校一年の冬で止まっていた。
地元の高校に進学してからも、従兄弟がバイトのときに限って自分以外の家族三人で外食に出てたようだ。しかも従兄弟への土産などもなかった。
「亡くなる前の日の日記には、家族が出前で頼んだピザが自分に一切れも残されてなくて残念だったって書いてあった。それ見たら俺も辛くなっちまって」
息子の日記に書いてあることが本当かと叔父さんに詰め寄られて、全部本当だと叔母さんが逆ギレして全部白状した。
そこからの出来事は正直、まだ当時多感な高一だった俺にも辛かった。俺だけじゃない。旦那だった叔父さんや、俺の両親も含めて御米田家側は全員ショックだったと思う。
そもそも叔母さんは姑のばあちゃんと反りが合わなかった。
だからばあちゃんに性格がそっくりな長男も大っ嫌いだったと言い始めたんだ。
『だからなに? 私は母親としてちゃんと世話をしていたわ!』
実際その通りだったようだが、いきなり豹変した奥さんに叔父さんが茫然自失としてしまって。
代わりにうちの親父が日記を読んでその場で叔母さんに事実確認を一つ一つやったんだ。
「結果、叔母さんはもう真っ黒。従兄弟をバイトに行かせてたところからしておかしかったんだ」
「ばいとってなあにー?」
「短い時間だけお勤めすることだ。従兄弟はレストランに働きに行ってたんだよ」
「そのバイトがおかしいとは?」
まず、従兄弟がバイトするよう仕向けたのは叔母だった。
家の経済状況が厳しいと嘘を仄めかせて、できるだけ家にいる時間を減らさせていたんだ。嫌いな息子に家にいてほしくなかったんだな。
大卒だがサラリーマンの俺の親父と違って、叔父さんは高卒だったけど若いうちから独立して成功して、なかなかの金持ちだった。
当時まだ四十手前で東京にそこそこ広い庭と車庫付きの家建ててたもん。うちはふつうに賃貸のマンション暮らし。
だから叔母も外に働きには出ず専業主婦だった。……本来なら従兄弟もバイトの必要なんてなかったほど金持ちだったんだよ。
と俺はユキりんだけでなくピナレラちゃんにもわかりやすく説明した。
「で、従兄弟は真冬の大雪の日にバイトに行って。雪で落ちてきた店の看板の当たりどころが悪くて死んじまった」
「そうでしたか……」
「まだ学生だったんだ。そんな大雪の日なんて別にバイトぐらい休んだって良かったはずなのに」
これらの事実を知ったばあちゃんは、俺たち御米田家の面々が初めて見る激怒ぶりだった。
毒叔母を叩こうと手を上げたばあちゃんを親父が慌てて押さえてたっけ。あんなに感情を剥き出しにしたばあちゃんを俺も親父も親戚たちも初めて見た。
叔父夫婦はその後離婚して、弟のほうは母親似だったことから叔母が強引に親権を獲得している。
「で、さっき俺たち思い出したんだ。子供の頃、ばあちゃんちで起きたこと」
今日と同じようにばあちゃんがパンケーキを焼いてくれた。
ちょうど親父が海外出張先のアメリカから帰国したばかりで、土産に持って帰ってきた現地で人気のパンケーキミックスがあったからそれで。
洒落た店で食べるわけでもない。おうちのおやつだから今日と同じように台所のテーブルの上にバターやメープルシロップ、ジャムや缶詰のフルーツなんかを用意して各自で好きなだけチョイスして食べるスタイル。
「俺と従兄弟はまだ子供だったから、ばあちゃんが最初からパンケーキにバターのっけて、メープルシロップもかけてくれたんだよな」
「なるほど……?」
「だけど甘いものが好きだった従兄弟は、ばあちゃんに『もっと甘いのかけて』って頼んだんだ。そうしたら」
『いじきたない! やめなさい!』
鋭い声で叔母が従兄弟を怒鳴りつけた。
さっきフラッシュバックしてきたのはそれだ。
俺たち御米田家側は、俺や従兄弟がまだ子供だった頃のこのパンケーキ事件の頃から既に、叔母が従兄弟を虐待してたと気づいて本当に血の気が引いたもんだった。
特にばあちゃんや親父は「あの頃ちゃんと気づいてたら」ってずっと悔やんでも悔やみきれない様子だった……
「俺に言われたわけじゃないのに、すごい怖い声と顔で怒鳴ってたから、俺も自分に言われたわけじゃねえのに泣きそうになっちまって」
「それで?」
「まだじいちゃんが生きてた頃だ。そのときはじいちゃんが『物食ってるときに大声出すんじゃない!』って怒って、叔母さんも謝ってそれでおしまい」
「それ本当に終わったんですか? 何だか後を引きそうな出来事ですけど」
「そうだな。翌年から叔父さん家族は、叔母さんだけ来なくなった。じいちゃんに怒られたせいだったかもしれない。でも叔母さんに赤ちゃんができたからってのもあったみたいだな」
それから中三の冬までは叔父さんと従兄弟の二人だけが長期休みにもなか村へ帰省していた。
叔母と、下に生まれた弟はそれ以降一度もばあちゃんちに来ていない。
「俺もうちの両親も、……ばあちゃんも、叔父さんの家族に違和感を感じてたんだが、確かめる前にカズアキは事故で死んじまった」
母親から意図的に家族の輪から外され、働く必要のないアルバイトに出て、社会人だって通勤の困難な大雪の日に事故で。
で、葬式の日にカズアキの日記が見つかって、すべてが書かれていた日記によって叔母の悪行が親戚たちにバレた。
「バレたのはそれだけじゃない。結局、叔父さん夫婦は離婚したけど残った弟の親権を争うときにとんでもない事実が判明した。――弟の父親が別の男だったんだ」
「うわあ……最悪じゃないですか。托卵ですか」
「まったくだよ。長男が大嫌いなばあちゃんそっくりだったから、叔父さんと次の子供作ってまた似たら最悪だって思って浮気。もう絶対、再構築は無理だなって当時の俺から見ても思ったもん」
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