異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ

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第三章 異世界転移の謎を解け!

その頃、日本では~side 八十神、魔王からの贈り物

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 最初に王に付き合って夢見を行う前、ジオライドは勇者の仲間たちがいる西の小国を訪れている。

 そこには例の竜殺しの君の叔父君がいた。
 聖剣の聖者と呼ばれた傑物で、魔王とも呼ばれている。恐らく世界で一、二を争う実力者だった。

 彼は王と勇者の仲間たちの確執には中立の立場を表明していた。
 そんな彼ならば王に何か良い助言をくれるかもしれない。
 このアダマンタイト原石はそう期待して訪ねたジオライドに彼がくれたものだ。



 突如現れたアケロニア国王の側近ジオライドを、聖剣の聖者は暖かく迎えてくれた。

 一通り事情を聞いた彼は呆れていた。
 でも僕たちを見捨てることはなさらなかった。

『――お前に、聖剣の聖者の祝福を授けよう』

 麗しの君の叔父だけあって、よく似た麗しい容貌の持ち主だった。
 そんな彼は身体に響く美しく低い声で、僕の望み通り様々な助言をくださった。

『向かう先は魔法のない世界だ。夢の中では元の自分を保てぬやもしれん』

 実際その通りだった。王も僕も夢の中ではただの地球人に過ぎなかった。

『力の喪失を感じたときは聖地へ行け。どこでもよい、活力と意識の明晰さを与える土地ならばどこでも。力の場を通じて皆の祈りがお前に届くはずだ』

 このお言葉が、僕が夢見に加えた設定の一つになっている。
 何か人生で上手くいかないことや、おかしなことが続いたと感じたら聖地に行くように、と自動的に行動を起こせる設定として。

 実際、御米田から奪った野口穂波と苦労して別れた後、気力の低下を感じた僕は都内の寺や神社、実家京都の鞍馬山にも参拝している。
 特に鞍馬山の魔王殿では彼と同じ〝魔王〟のキーワードと、聖地の極めて強いエネルギーに触れたことで異世界のジオライドを思い出せた。

『どうか彼を助けてやってくれ。そのための祝福をお前に』

 強い魔力を持つ聖剣の聖者は、普段から全身に青く光る魔力を帯びている。
 その聖なる青い魔力を、アダマンタイト鉱石に込めて下賜してくださったのだ。



 聖剣の聖者は大変面倒見の良いお方だった。
 他にも細々した注意事項を聖者の忠告や託宣として頂戴している。

 例えば、我らの王と勇者、竜殺しの君の三人は、三人でいる限り相性がとても良いことなどだ。

『本来なら恋愛や結婚にこだわる必要はないはずなのだ……。もし三人の内で結ばれることがなくとも友人付き合いだけは許してやってほしい』

 さすがに鋭い。ジオライドたち側近はどうすれば王の心からあの麗しの君を消すか必死だからだ。
 早く王妃を迎えろと責めても頑固として受け入れない。本命は愛人では駄目なのかと説得しようとしたら激怒された。実に難しい……
 実際、竜殺しの君は勇者しか見ていないし、王は相手にされていないから愛人契約を打診しても難航しただろうが。そもそも今は他国の宰相だ。頼むから本当に諦めて欲しい……

 それ以外はほとんどが過保護な母親の言葉のようだったが、中には看過できないこともあった。

『夢見を繰り返し行うと、夢と現実の区別がつかなくなることがある。ゆえに長期に渡って、継続的に行ってはならない』

 王が勇者を救う手立てを求めて夢見を行うようになって、約二年ほどだったか。
 勇者が倒れて四年だが、最初の二年は医師や薬師を主に頼っていた。しかし結果が出ず痺れを切らした王が独断で行ったのが夢見の術だ。

『いざとなったら、彼の国王の即位式のとき贈った宝剣があるだろう? あれに嵌め込んだ魔石には私や歌聖うちの子を始めとした多くの聖賢の祝福を込めてある。迷わず大剣の力を使うよう伝えなさい』

 しかし後に王は夢見の中で御米田ユウキにその大剣を渡してしまった。

 そして資金と魔力切れを王が我ら側近に告白して今に至る。

 これらの事態をジオライドは恐る恐る、聖剣の聖者宛の手紙を書いて送った。
 かの小国の歌聖殿や大聖女様、それに――竜殺しの君がついにアケロニア王国へとやってきたのは、彼が勇者の仲間たちを説得してくれたのだと思う。


 ピコン!


 スマホのメッセージアプリに通知が来た。
 さっき辞めたばかりの会社の、先輩にあたる女性からだ。

『八十神君が辞めたって聞いて野口さんが荒れてるみたい。もう会うこともないだろうけど、一応気をつけて』

「……うわ」

 ぞわわわわっと鳥肌が立った。

 僕はあの女と別れた後、徹底的に彼女を避けていた。
 彼女の僕への執着は、周囲からも度を越しているように見えていたようだ。同じ部や親しい社員たちも協力して、できるだけ社内バッティングしないよう助けてもらっていた。
 今回こうして連絡をくれる程度には。

 今も彼女を思い出すとチクチクと皮膚の表面が痛い。

「邪や魔ほどではない……それは間違いないが、随分と念の強い女だな」

 異世界だったら呪術師でもやっていけたタイプだろう。

 アダマンタイトをまた取り出して見つめ、握るとチクチクがしゅわっと炭酸が弾けるような感覚と一緒に消える。相手の念が浄化されたのだ。

「これはお守りに有効活用させてもらおう」

 アダマンタイトは万能の魔石でもある。人から受ける邪気の防御と反射にはうってつけだ。



 一息ついて、サンドイッチを紙袋から取り出し――あっと目を見開いた。

 スモークサーモンとサラダのサンドイッチだ。サーモン……竜殺しの君の好物じゃないか。
 必然的に王の好物でもあって、よく食事にリクエストしていたことを思い出す。

「王は……夢から覚めたら何を得るのだろう」

 夢見の術には行為そのものに夢から得た報酬があると聞いていた。
 古い時代から、大量の魔力消費と費用負担がありながら人々がチャレンジし続けてきた秘術なのはそのせいだ。

 多くは過去や未来、違う世界、あるいは可能性の世界を旅することで得られる智慧。
 普通に人生を送るより多くの経験を積むから、新しいスキルを獲得することもあるという。

「美味い。……がリースト侯爵領の鮭と比べるとやはり落ちるな」

 八十神アキラが食したことのない、王家御用達ブランド鮭の味とサンドイッチを比べていた。

 今日はもうアパートに帰ろう。
 夜に、次の就職先のみどり社長に退職の報告と今後の相談だ。





→もなか村では鮭漁の季節

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