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第三章 異世界転移の謎を解け!
俺、王様のチート剣を失う
しおりを挟む十二月も終わり、年が明けた。
ど田舎村はアケロニア王国の北端の辺境だ。北部だけあって寒い。三月頃まで雪が降って消えないとは聞いていたが……
気温は氷点下まで落ちるが、日本にいた頃のもなか村と同じぐらいだ。
降雪量もそんな感じ。
大雪が降ったときだけ建物の雪下ろしが必要で、それ以外は畑仕事もなく、秋までに蓄えた食糧で豊かに暮らせる過ごしやすい場所だった。
何せ温泉が出る地域なので、お湯を引いて主な街道の雪を溶かす設備がある。
飛び地の僻地でさえなければ、自然豊かで飯の旨い、温泉もある観光客を呼び込めた地域だ。
わかっちゃいたが、この異世界は中世ヨーロッパ風の雰囲気に反して、文明の進み具合は日本より上かもしれん……
年が明けてもばあちゃんの具合は一進一退だった。
俺はばあちゃんに飲ませる日本酒の異界最中を醸造し、ユキりんとカズアキは隣町の冒険者ギルドに出稼ぎ。
夕方に男爵の屋敷に集まって、ばあちゃんやピナレラちゃんの様子を確認して家に帰ってくる。
この繰り返しだった。
年越しと年明けにど田舎村では、隣町の神殿からの指導で、村長が神官として新年の豊穣を願う儀式を行なった。
小さい祭りを開催して、そこで近隣から集まった人々に異界最中や甘酒を振る舞ったところ、なかなかの好評だった。
この調子なら俺の異世界での職業は、このまま酒造りになりそうだな……
せっかく違う世界に転移してきたのだから、地球のコンビニやスーパーみたいなチェーン店の概念を持ち込んで、流通の覇権を握ってみたかったんだが。残念。
ど田舎村は秋の終わりからすごく寒くなっていたので、冬に入るなり御米田家では速攻居間にこたつを出した。
そんで俺たちは家にいるときは、大抵居間にいた。
自室に戻るのは夜だけだ。
「テレビ、付かないね……」
こたつでお茶を飲みながら、茶菓子を齧るカズアキが首を傾げている。
「「………………」」
俺とユキりんは無言だ。
こういうとき、カズアキが〝過去〟からもなか村に来ていることを実感する。
なぜかネットの繋がるもなか村は、テレビの電波にも繋がってたんだが、――カズアキにとって未来の情報を含むテレビは見えなかった。
ザーというホワイトノイズが流れてるようにしか見えないようだ。
俺とユキりんの目には、日本の田舎のぽつんとある一世帯だけを訪ねる番組が映ってるんだが……
ああ、こいつにはやっぱり未来はないんだな、とわかって俺は苦しくなった。
カズアキは過去に戻る覚悟を決めていた。
俺は……その日ができるだけ遠ければいい、そう思っている。
その日、夕飯も風呂も翌日の飯の準備も全部終わらせた俺は、部屋に戻るとおもむろに片手を目の前に突き出した。
最近、毎晩やってるが……
「出てこい、王様のチート剣!」
カズアキに未来の真実を教えたことで、夢の王様から貰ったチート剣の魔石は三つとも使い切ってしまっていた。
「……やっぱり駄目か」
あれ以来、大剣が出せない。
魔石のチートを使い切るまでが、王様から俺への大剣貸与の期間だったのだろう。
いつの間にか、あの大剣は俺の中から無くなってしまったのだ。
「そりゃないぜ王様……だから魔石チャージしてけろって祈ってたのに」
じゃあ代わりに、と左腕を前に突き出した。
「バックラー、出てこい」
胸の辺りから真紅の魔力が吹き出して、左腕に黒光りする金属製の小剣付きの丸い盾が出現する。
攻守両用の盾剣バックラー。アケロニア王族が血筋に受け継いでいる武器だ。こちらは問題なく出すことができた。
くそ。ただでさえ異世界転移らしいチートが少ないのに、王様の馬鹿! 俺を見捨てねえでほしいっぺ!
「仕方ない。やはり勉さんを見習って武器の訓練するしかないか」
今ならユキりんもカズアキも修行に付き合ってくれそうだし。
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