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第三章 異世界転移の謎を解け!
俺、お出迎えは真っ赤なスポーツカー(三章終)
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警察署で一通り事情聴取されて、解放されたのは数日後だった。
飯は食わせてもらってたが、毎日長時間拘束されて寝不足だわな……
「あー……太陽が黄色い……」
隣町のもなか町の警察署から出るなり、朝陽が目に突き刺さった。
「御米田ユウキさん! お話を聞かせてください!」
マスコミや雑誌の記者と思しき人々が、警察署の周りにまだ若干、待機していた。
おお……俺すっかり有名人じゃないか。
とそこへ、勢いよく彼らを吹き飛ばすようにしてやってきた車があった。
イタリアの赤い、流線型フォルムが美しいスーパーカー……って運転手にいるの、みどり社長じゃないか!?
外車だから運転席は左側だ。窓を開けてニカッと笑いかけてくる、サングラスと金歯の光るオバチャン……和むわあ。
親指をビッと立てて後部座席を指した。
「乗りんしゃい、ユウキ君」
くうう。格好ええべ、みどりしゃん!
そして驚愕の変化が訪れた。
俺が異世界から帰ってきて、もなか村を出た後。
世界はそのイレギュラーに修正をかけたらしい。
気づいたのは、俺が立ち上げたネット掲示板の派生スレに、『もなか村版マンデラエフェクト』が立って人々が書き込み始めたのを知ってからだ。
マンデラエフェクトって知ってるか?
大勢の人が間違った記憶を持つ現象のことだ。
名前の由来は、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領からきている。1980年代に彼が刑務所で死んだと覚えている人が大勢いたんだが、実は彼は2013年まで生きていた。
なのに1980年代に死んだと記憶してる人の数があまりに多くて、一時期話題になったんだ。
似たような事例は他にもある。例えば人間の肋骨の形や(肋骨の先端に縦の胸骨なんてあったっけ?)、学校で習ってきた漢字の形が違っているなど、事例には事欠かない。
検索してみて、世界がどれだけ大量に改変されてるかを知って、俺はぞっと背筋が寒くなったもんだ。
『オレが知ってるもなか村は
御米田ユウキと一緒に
異世界転移してたはずなんだが』
『ネット小説読みすぎw
妄想と現実の区別もついてないとかwww』
マンデラエフェクトは、人々の勘違いも多いが、本当に世界が改変されたかのようなオカルト現象も多いと言われている。
俺のもなか村は――後者だ。
そうして世間はもなか村も、俺のことも次第に忘れていった。
『世界の補正に巻き込まれました
このスレも役目を終えたようです
皆、ありがとう
さよなら』
こうして俺は、ネット掲示板への最後の書き込みを終えた。
驚いたことに、あのパクリ野郎八十神が会社を辞めて、みどり社長の元に身を寄せていた。
悔しいが俺と張るぐらい優秀だった男だ。みどりさんの元でも活躍することだろう。
その八十神は、俺を迎えにきた真っ赤なスポーツカーの助手席にいたんだが……
車に乗ってすぐ互いを意識したが、無言のまま高速道路を走らせること一時間。
最初のサービスエリアの休憩で、シアトル系カフェでコーヒーでも飲もうぜ、と席に着いた途端にガン謝りされた。
「御米田……もう事情は把握してると思うが、とにかく……もう何でもいいから謝らせてくれ。すまなかった!」
まだ朝早い時間帯だったので、周りに客が少なかったのが幸いだった。それでもチラホラと通り過ぎる人たちがこちらを見てくる。
ちょ、外でこんなの恥ずかしいのだが!?
ひたすら謝られたが、俺の中ではこいつも元カノも旬を過ぎた人物だ。
「あ、そう。もういいって。終わったことだろ?」
本当に、まったく、これっっっぽっちも、気にしてねえがら!
そんで糖分補給にシュガー二本入れた深煎りコーヒーを飲みながら、八十神の話を聞いた。
「僕も異世界から来た人間なんだ。向こうで会ったかい? ジオライド・ラーフというんだが」
「会ったよ、金髪の奴だろ? 王様と一緒にな」
まあ会ったのはアケロニア王国じゃなくて、次元の狭間を通してだったけど。
「お前まで異世界関係者とはな。まさか他にもいたり?」
「………………まあ、世界は広いからね」
「い、いるのか? いないのか? どっちだよ!?」
日本に戻ってきて、他にも大きな変化が一つあった。
あの、人生をとことん舐めくさっていた後輩鈴木が覚醒していた。
いや、言葉の比喩だけど。でも憑き物が取れたかのように真人間になっていた。
顔つきがもう全然違う。眠そうで、見るからにやる気のなさそうな印象が消えていた。
どうしたんだ鈴木! おまえそんなにキレイな人間じゃなかっただろ!?
聞けば、長く疎遠だった母親と金銭トラブルがあって、殺されそうになったけど辛くも逃れて母親は逮捕されたそうだ。
あの毒叔母ついにやらかしたか……
その場でニュース記事を見せられて目の玉飛び出るかと思ったほど驚いたわ。
「ユウキ先輩。今まで言わなかったですけど、……義理ですがオレ、あんたの従兄弟だったんです。カズアキお兄ちゃんの弟でした」
「……うん。俺も思い出すの遅くなって悪かったな」
俺もつい最近、カズアキのお陰で思い出したばかりだ。
何でこいつが俺にだけ懐いてたかも、ようやく理解した。御米田家顔のカズアキや叔父さんそっくりだったからだべ?
……カズアキが遺した日記には、弟のオサム君をすごく可愛がっていて、懐かれて嬉しいと書かれてあった。
それに、よくよく読んでみると、一度ももなか村に来なかったオサム君が、俺たち御米田家の面々と会いたいとよく言ってたとも書かれてたわけさ。
ともあれ毒叔母だ。鈴木と揉めて銀座の歩道橋から落としかけたけど、未遂だったからすぐ釈放されたって。
その後は実家のお兄さんに地方の施設に放り込まれたそうだ。
「金持ち御用達の養護施設ッスよ。クソババアの実家はクソが付くほど金持ちですからね。しこたま寄付金積んで一生出て来れないようにするって言ってました。死ぬまで飼い殺しッスよ、ハハッ、ざまぁ」
……前言撤回。鈴木は鈴木だった。鈴木節も相変わらずだった。
そんな鈴木や八十神は、うちの親父やみどり社長といった、縁のある面子で『異世界研究会』を発足していた。
もちろん俺も速攻で加入したことは言うまでもない。
気づくと、もなか村は俺が東京の会社を辞める何年も前に廃村になっていた。
村民たちの家々や村役場は残っていたが、もう誰も住んでいないから荒れ放題だ。
農業や畜産のため隣町から通っていた人たちも、基盤は全部もなか村から隣町に引き上げていた。あったはずの田んぼや畑も全部放置されて雑草が生え放題で……
けど、もなか村が異世界転移した証拠はまだいくつか残っていた。
大きなものは、やはり墓地だ。もなか村にあった墓地は丸ごと消失したままなのだ。アケロニア王国のど田舎村に今もあると思われた。
次がもなか酒造。俺が頑張って再現した日本酒の異界最中を作った設備も材料も研究ノートも、ぜーんぶど田舎村に残してきてしまった。
また、廃村後の荒れ果てたもなか村の中で、ばあちゃんちだけが毎日手入れを欠かさなかったと言わんばかりにきれいだった。
異世界でばあちゃんや俺、ピナレラちゃんやユキりんが住んでいたときのままに。
彼らの服など私物も残ったまま。
ユキりんが張りきって魔法樹脂に封入してた鮭なんかも丸ごと残ってる。一緒に作ったスモークサーモンなんかも。
悪いことしたな、あんなに食うの楽しみにしてたのに全部こっちに持ってきちまった。
「でも、もう誰もいない。なら、――帰るか。アケロニア王国へ」
その後の俺は、再びアケロニア王国への転移を目指して、セイバー片手に全国、全世界を旅していくことになる。
「勇者君は無事に目を覚ましたのかな。起きたならこれ、届けてやったほうがいいよな」
カズアキの遺品になってしまったLEDセイバーは、中に究極の魔石アダマンタイトが詰まっている。
八十神に見せたら、慄きながら「世界遺産級のアーティファクトだ!」とのこと。異世界ならそれだけで小国の一つや二つ買える価値があるとも言っていた。
セイバー自体が女魔王様の特製で魔力の塊だ。
きっと勇者君や、彼を大切に思ってた王様の役に立つだろう。
☆ ☆ ☆
異世界に戻ると決めたら、俺の心も軽くなった。
だがその日の夜に見た夢は不穏だった。
前も見た夢だ。どこか海辺で二人の男女が真っ黒な闇と対峙している。
どちらも異世界転移したとき、次元の狭間で出会った虹色に光ってた神人様だ。
一人はミルクティ色の髪と緑の目の童顔男。医聖アヴァロニス。俺に大切な人を守ったら元の世界に帰れるかもって預言した奴だ。
もう一人は青銀の長い髪とティールカラーの瞳の麗しの美少女。ユキりんや竜殺しのべっぴんたちのご先祖様だという、魔王の神人ジューア。
二人とも光り輝く透明な剣を持っていたが、闇相手に劣勢のようだった。
アヴァロニスが諦念の表情を浮かべている。
「ここまでか」
「諦めるな愚か者! 死ぬなら貴様一人で死ね、私は最後まで足掻いてみせる!」
だが二人を襲う闇は避けようがない。
闇は浜辺をどんどん飲み込んで、いよいよ二人をも、というとき。
ドンッ
ジューアがアヴァロニスを後方に突き飛ばした。
逃げ遅れたジューアは爪先から白いワンピースの裾を闇に掴まれて、一気に全身を黒く覆い尽くされていく。
「ジューア!」
「生き残るなら、貴様のほう、だ……少しでも生き延びて、救いを……探せ……」
俺は思わず二人に駆け寄った。
だが、できなかった。目の前に粘ついた黒い闇が壁のように立ち塞がって近づけなかったのだ。
ふと、そのときだ。闇に飲み込まれかけているジューアお姉様の、ティールの瞳が俺を捉えた。
「貴様は……。………………!」
真っ黒になった腕を伸ばして、俺を指差した。正確には、――俺が持っていたカズアキのLEDセイバーをだ。
そうだ! このセイバーは光の色によって浄化効果もあったはず、と思い出したところで意識が暗転した。
またいつか、彼らとは会う気がする。
異世界転移で始まって日本にまた戻ってきた俺の冒険は、まだ続くようだった――
第三章 異世界転移の謎を解け! 完
エピローグに続く
※ご覧いただきありがとうございました
新作の「回帰した貴公子はやり直し人生で勇者に覚醒する」もよろしくお願いします
御米田たちアケロニア王族のご先祖さまのお話+ウパルパ様
あっちの兄が御米田と同じタイプ。
飯は食わせてもらってたが、毎日長時間拘束されて寝不足だわな……
「あー……太陽が黄色い……」
隣町のもなか町の警察署から出るなり、朝陽が目に突き刺さった。
「御米田ユウキさん! お話を聞かせてください!」
マスコミや雑誌の記者と思しき人々が、警察署の周りにまだ若干、待機していた。
おお……俺すっかり有名人じゃないか。
とそこへ、勢いよく彼らを吹き飛ばすようにしてやってきた車があった。
イタリアの赤い、流線型フォルムが美しいスーパーカー……って運転手にいるの、みどり社長じゃないか!?
外車だから運転席は左側だ。窓を開けてニカッと笑いかけてくる、サングラスと金歯の光るオバチャン……和むわあ。
親指をビッと立てて後部座席を指した。
「乗りんしゃい、ユウキ君」
くうう。格好ええべ、みどりしゃん!
そして驚愕の変化が訪れた。
俺が異世界から帰ってきて、もなか村を出た後。
世界はそのイレギュラーに修正をかけたらしい。
気づいたのは、俺が立ち上げたネット掲示板の派生スレに、『もなか村版マンデラエフェクト』が立って人々が書き込み始めたのを知ってからだ。
マンデラエフェクトって知ってるか?
大勢の人が間違った記憶を持つ現象のことだ。
名前の由来は、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領からきている。1980年代に彼が刑務所で死んだと覚えている人が大勢いたんだが、実は彼は2013年まで生きていた。
なのに1980年代に死んだと記憶してる人の数があまりに多くて、一時期話題になったんだ。
似たような事例は他にもある。例えば人間の肋骨の形や(肋骨の先端に縦の胸骨なんてあったっけ?)、学校で習ってきた漢字の形が違っているなど、事例には事欠かない。
検索してみて、世界がどれだけ大量に改変されてるかを知って、俺はぞっと背筋が寒くなったもんだ。
『オレが知ってるもなか村は
御米田ユウキと一緒に
異世界転移してたはずなんだが』
『ネット小説読みすぎw
妄想と現実の区別もついてないとかwww』
マンデラエフェクトは、人々の勘違いも多いが、本当に世界が改変されたかのようなオカルト現象も多いと言われている。
俺のもなか村は――後者だ。
そうして世間はもなか村も、俺のことも次第に忘れていった。
『世界の補正に巻き込まれました
このスレも役目を終えたようです
皆、ありがとう
さよなら』
こうして俺は、ネット掲示板への最後の書き込みを終えた。
驚いたことに、あのパクリ野郎八十神が会社を辞めて、みどり社長の元に身を寄せていた。
悔しいが俺と張るぐらい優秀だった男だ。みどりさんの元でも活躍することだろう。
その八十神は、俺を迎えにきた真っ赤なスポーツカーの助手席にいたんだが……
車に乗ってすぐ互いを意識したが、無言のまま高速道路を走らせること一時間。
最初のサービスエリアの休憩で、シアトル系カフェでコーヒーでも飲もうぜ、と席に着いた途端にガン謝りされた。
「御米田……もう事情は把握してると思うが、とにかく……もう何でもいいから謝らせてくれ。すまなかった!」
まだ朝早い時間帯だったので、周りに客が少なかったのが幸いだった。それでもチラホラと通り過ぎる人たちがこちらを見てくる。
ちょ、外でこんなの恥ずかしいのだが!?
ひたすら謝られたが、俺の中ではこいつも元カノも旬を過ぎた人物だ。
「あ、そう。もういいって。終わったことだろ?」
本当に、まったく、これっっっぽっちも、気にしてねえがら!
そんで糖分補給にシュガー二本入れた深煎りコーヒーを飲みながら、八十神の話を聞いた。
「僕も異世界から来た人間なんだ。向こうで会ったかい? ジオライド・ラーフというんだが」
「会ったよ、金髪の奴だろ? 王様と一緒にな」
まあ会ったのはアケロニア王国じゃなくて、次元の狭間を通してだったけど。
「お前まで異世界関係者とはな。まさか他にもいたり?」
「………………まあ、世界は広いからね」
「い、いるのか? いないのか? どっちだよ!?」
日本に戻ってきて、他にも大きな変化が一つあった。
あの、人生をとことん舐めくさっていた後輩鈴木が覚醒していた。
いや、言葉の比喩だけど。でも憑き物が取れたかのように真人間になっていた。
顔つきがもう全然違う。眠そうで、見るからにやる気のなさそうな印象が消えていた。
どうしたんだ鈴木! おまえそんなにキレイな人間じゃなかっただろ!?
聞けば、長く疎遠だった母親と金銭トラブルがあって、殺されそうになったけど辛くも逃れて母親は逮捕されたそうだ。
あの毒叔母ついにやらかしたか……
その場でニュース記事を見せられて目の玉飛び出るかと思ったほど驚いたわ。
「ユウキ先輩。今まで言わなかったですけど、……義理ですがオレ、あんたの従兄弟だったんです。カズアキお兄ちゃんの弟でした」
「……うん。俺も思い出すの遅くなって悪かったな」
俺もつい最近、カズアキのお陰で思い出したばかりだ。
何でこいつが俺にだけ懐いてたかも、ようやく理解した。御米田家顔のカズアキや叔父さんそっくりだったからだべ?
……カズアキが遺した日記には、弟のオサム君をすごく可愛がっていて、懐かれて嬉しいと書かれてあった。
それに、よくよく読んでみると、一度ももなか村に来なかったオサム君が、俺たち御米田家の面々と会いたいとよく言ってたとも書かれてたわけさ。
ともあれ毒叔母だ。鈴木と揉めて銀座の歩道橋から落としかけたけど、未遂だったからすぐ釈放されたって。
その後は実家のお兄さんに地方の施設に放り込まれたそうだ。
「金持ち御用達の養護施設ッスよ。クソババアの実家はクソが付くほど金持ちですからね。しこたま寄付金積んで一生出て来れないようにするって言ってました。死ぬまで飼い殺しッスよ、ハハッ、ざまぁ」
……前言撤回。鈴木は鈴木だった。鈴木節も相変わらずだった。
そんな鈴木や八十神は、うちの親父やみどり社長といった、縁のある面子で『異世界研究会』を発足していた。
もちろん俺も速攻で加入したことは言うまでもない。
気づくと、もなか村は俺が東京の会社を辞める何年も前に廃村になっていた。
村民たちの家々や村役場は残っていたが、もう誰も住んでいないから荒れ放題だ。
農業や畜産のため隣町から通っていた人たちも、基盤は全部もなか村から隣町に引き上げていた。あったはずの田んぼや畑も全部放置されて雑草が生え放題で……
けど、もなか村が異世界転移した証拠はまだいくつか残っていた。
大きなものは、やはり墓地だ。もなか村にあった墓地は丸ごと消失したままなのだ。アケロニア王国のど田舎村に今もあると思われた。
次がもなか酒造。俺が頑張って再現した日本酒の異界最中を作った設備も材料も研究ノートも、ぜーんぶど田舎村に残してきてしまった。
また、廃村後の荒れ果てたもなか村の中で、ばあちゃんちだけが毎日手入れを欠かさなかったと言わんばかりにきれいだった。
異世界でばあちゃんや俺、ピナレラちゃんやユキりんが住んでいたときのままに。
彼らの服など私物も残ったまま。
ユキりんが張りきって魔法樹脂に封入してた鮭なんかも丸ごと残ってる。一緒に作ったスモークサーモンなんかも。
悪いことしたな、あんなに食うの楽しみにしてたのに全部こっちに持ってきちまった。
「でも、もう誰もいない。なら、――帰るか。アケロニア王国へ」
その後の俺は、再びアケロニア王国への転移を目指して、セイバー片手に全国、全世界を旅していくことになる。
「勇者君は無事に目を覚ましたのかな。起きたならこれ、届けてやったほうがいいよな」
カズアキの遺品になってしまったLEDセイバーは、中に究極の魔石アダマンタイトが詰まっている。
八十神に見せたら、慄きながら「世界遺産級のアーティファクトだ!」とのこと。異世界ならそれだけで小国の一つや二つ買える価値があるとも言っていた。
セイバー自体が女魔王様の特製で魔力の塊だ。
きっと勇者君や、彼を大切に思ってた王様の役に立つだろう。
☆ ☆ ☆
異世界に戻ると決めたら、俺の心も軽くなった。
だがその日の夜に見た夢は不穏だった。
前も見た夢だ。どこか海辺で二人の男女が真っ黒な闇と対峙している。
どちらも異世界転移したとき、次元の狭間で出会った虹色に光ってた神人様だ。
一人はミルクティ色の髪と緑の目の童顔男。医聖アヴァロニス。俺に大切な人を守ったら元の世界に帰れるかもって預言した奴だ。
もう一人は青銀の長い髪とティールカラーの瞳の麗しの美少女。ユキりんや竜殺しのべっぴんたちのご先祖様だという、魔王の神人ジューア。
二人とも光り輝く透明な剣を持っていたが、闇相手に劣勢のようだった。
アヴァロニスが諦念の表情を浮かべている。
「ここまでか」
「諦めるな愚か者! 死ぬなら貴様一人で死ね、私は最後まで足掻いてみせる!」
だが二人を襲う闇は避けようがない。
闇は浜辺をどんどん飲み込んで、いよいよ二人をも、というとき。
ドンッ
ジューアがアヴァロニスを後方に突き飛ばした。
逃げ遅れたジューアは爪先から白いワンピースの裾を闇に掴まれて、一気に全身を黒く覆い尽くされていく。
「ジューア!」
「生き残るなら、貴様のほう、だ……少しでも生き延びて、救いを……探せ……」
俺は思わず二人に駆け寄った。
だが、できなかった。目の前に粘ついた黒い闇が壁のように立ち塞がって近づけなかったのだ。
ふと、そのときだ。闇に飲み込まれかけているジューアお姉様の、ティールの瞳が俺を捉えた。
「貴様は……。………………!」
真っ黒になった腕を伸ばして、俺を指差した。正確には、――俺が持っていたカズアキのLEDセイバーをだ。
そうだ! このセイバーは光の色によって浄化効果もあったはず、と思い出したところで意識が暗転した。
またいつか、彼らとは会う気がする。
異世界転移で始まって日本にまた戻ってきた俺の冒険は、まだ続くようだった――
第三章 異世界転移の謎を解け! 完
エピローグに続く
※ご覧いただきありがとうございました
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