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第四章 帰りたいのに帰れない
異世界からのメッセージ ※イラストあり
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日本に帰還してからも、俺はたびたび恐ろしい夢を見た。
あの次元の狭間で出会った神人三人のうちの二人、美少女魔王の神人ジューアと、童顔の男・医聖アヴァロニスが荒廃した世界で闇に呑まれる光景だ。
あれはいつの時代のことなのだろう。
美しい海辺の賑やかな国が、一瞬で暗く煤けていくCGみたいな光景だ。心臓に悪い。
また別のシーンでは、赤い軍服の黒髪ショートボブの女性が、目の前に大規模な結界を張って、多数の人々を守っている場面が見えた。
ど田舎村でカズアキを助けようと、王様の大剣最後の魔石を使ったとき現れた女性だ。
確か――王様や勇者の時代の聖女様だ。
必死で闇の侵食を防ぐ聖女様の、赤く輝く結界が徐々に小さくなっていく。……粘った闇の力のほうが強いのだ。
また別の場所では、青い軍服の青銀の髪の人物――あの竜殺しのべっぴんが戦っている。
影のように実態のない敵を相手に、ユキりんみたいな魔法樹脂の剣を宙に浮かせて攻撃を繰り返しているが、……劣勢だ。
その傍らには、べっぴんそっくりな白い軍服姿のイケオジが、青く輝く両刃の剣を構えて敵に向けて大きく一閃させた。
――クソ眩しい。視界がホワイトアウトする。
かと思ったら、場面はまた変わって、今度は海の上の白亜の神殿の前に来ていた。
「うええええん……皆、皆……どこなのだぷぅ……?」
愛らしい幼児の泣き声が聞こえる。
この声はまさか……!
見つけた! 案の定、半透明ピンクのぷるぷるボディに青いお目々のウパルパ様だ!
海に面した神殿のエントランスで、小さな身体で泣きながら辺りをよちよち歩いている。誰かを探しているようだが……
「きゃー! き、来たのだ、来るでない、ここはわれの聖域ぞ、守ってみせるのだ!」
キリッと凛々しい顔になったウパルパ様が、全身を虹色キラキラに輝かせて海を睨みつける。
「!?」
振り返ると、青く綺麗だったはずの海が赤黒い邪気に汚染されている。
あと少しで神殿のある浮島に辿り着く、というときに地面が揺れた。
「ご無事ですか!」
そこへ竜殺しのべっぴんが、負傷したイケオジを担いで合流してきた。
聖女様も仲間らしき数人と一緒に駆けつけてきた。
全員、満身創痍だ。このままじゃ海から襲ってくる脅威に全員飲み込まれてしまう……
「むり、もう無理なのだぷぅ。母なる海よ、われらを護ってほしいのだぷぅー!」
ネオンイエローの、虹色キラキラに輝く聖なる魔力がウパルパ様から迸る。
途端、神殿は集まった人々と浮島ごとウパルパ様の魔力に包まれ、――海の底へと沈んでいった……
☆ ☆ ☆
俺はみどり社長の資金提供バックアップを受け、八十神の助けを借りて再び異世界転移を試みることにした。
八十神が夢の王様の側近だったことを思い出したのは、俺が異世界転移した後だそうだ。
こいつが異世界人の貴族だった〝元の自分〟を思い出していたことで、異世界に戻る方法にはわりと簡単に道筋がついた。
国内外のパワースポットをひたすら巡り、土地のエネルギーである龍脈のエネルギーをチャージする。
その力で夢見をひたすら繰り返しながら、アケロニア王国へ辿り着け、と。
「みどり社長の仕事は国内、海外両方あるからね。御米田、君は彼女の出張にできるだけ同行して現地のパワースポットを探すんだ」
八十神が言うには、日本だとパワースポットは神社仏閣や文化史跡、それに山や古代遺跡に集中しているらしい。
そのやり方なら、みどり社長の仕事の邪魔にもならない。出張先で自由時間を見つけて、現地の探索をすればいいだけだ。
八十神から夢見の詳しい説明を聞いて、俺はようやく自分や、あの王様の実態を理解した。
夢見の術はとても燃費の悪い、けれど得るものの多い魔法らしい。
夢の世界を通じて、理論上どんな世界や過去、未来へも飛ぶことができる。
王様が行きたかったのは、勇者の救いに繋がる世界だ。
まったく無関係な世界だと取っ掛かりがなくて難しいらしい。幸い、この世界の御米田家はアケロニア王国から過去、転移して来た王族たちの子孫だ。
その縁を頼ってあの王様と八十神の本体は夢見を行なったと……
八十神から聞き出した話をノートにまとめながら、俺は疑問を訊いてみた。
「なあ、こっちの世界にいるまま夢見の術が使えるなら、過去に飛んでカズアキを助けられないか?」
しかし八十神は渋い顔になって首を振った。
「……難しいだろうな。夢見は最初の基点となる時点より〝過去〟に亡くなった人物は生き返れない」
「………………そうか」
夢見の基点はこの場合、どこになるんだろう。
異世界の未来で王様が行った時点か?
それとも、今俺のいるここになるのか?
「それに、もうカズアキ君は転生して異世界で勇者になっているからね」
「あ。そ、そうだった」
「そもそも、未練を残して死んだ人間は転生できないから、彼を救う必要はないってことでもある」
「………………」
未練。なかったんだな、カズアキ。
アケロニア王国で再会した十四歳のカズアキは、弟のことは気にしていたが、毒叔母や……父親のことはそんなに深く考えていなかったっけ。
俺は勇者のことは、意識不明のまま寝てるところしか見ていない。
でもカズアキの転生体なら、きっとカズアキと同じ呑気な食いしん坊なんだろうなとは。
夢見の術は、それから何度か練習してみたところ、再現の目処が立った。
カズアキが残したセイバーの中にみっちり詰まっていたアダマンタイト結晶のお陰で、わざわざパワースポット巡りを繰り返さなくても魔力源が確保できたからだ。
その時点で、八十神からスマホを渡された。
数年前のモデルだ。使い込まれて少し傷がある。
「ゲンキさんから預かっていた。君が異世界から戻ってくる直前、謎のメッセージが大量に送られてきてて」
「謎のメッセージ?」
スマホの電源を入れて驚いた。
『とつぜん、ゆうきさんが、きえて、しまいました』
『いえごと ゆうきさん、が、きえた』
こんなカタコトのメッセージが何十件と親父宛のLI◯Eに届いている。
「ユキりんだ……」
ど田舎村に残してきた俺のスマホから送ったんだ。
慌てて俺は、戻って来てから契約した新しいスマホから、異世界の自分のスマホ宛にメッセージを送った。
だが、どれだけ待ってもユキりんからの返事が返って来ることは、なかった……
未来のどこかでウパルパ様たちが大変なことになっている
あの次元の狭間で出会った神人三人のうちの二人、美少女魔王の神人ジューアと、童顔の男・医聖アヴァロニスが荒廃した世界で闇に呑まれる光景だ。
あれはいつの時代のことなのだろう。
美しい海辺の賑やかな国が、一瞬で暗く煤けていくCGみたいな光景だ。心臓に悪い。
また別のシーンでは、赤い軍服の黒髪ショートボブの女性が、目の前に大規模な結界を張って、多数の人々を守っている場面が見えた。
ど田舎村でカズアキを助けようと、王様の大剣最後の魔石を使ったとき現れた女性だ。
確か――王様や勇者の時代の聖女様だ。
必死で闇の侵食を防ぐ聖女様の、赤く輝く結界が徐々に小さくなっていく。……粘った闇の力のほうが強いのだ。
また別の場所では、青い軍服の青銀の髪の人物――あの竜殺しのべっぴんが戦っている。
影のように実態のない敵を相手に、ユキりんみたいな魔法樹脂の剣を宙に浮かせて攻撃を繰り返しているが、……劣勢だ。
その傍らには、べっぴんそっくりな白い軍服姿のイケオジが、青く輝く両刃の剣を構えて敵に向けて大きく一閃させた。
――クソ眩しい。視界がホワイトアウトする。
かと思ったら、場面はまた変わって、今度は海の上の白亜の神殿の前に来ていた。
「うええええん……皆、皆……どこなのだぷぅ……?」
愛らしい幼児の泣き声が聞こえる。
この声はまさか……!
見つけた! 案の定、半透明ピンクのぷるぷるボディに青いお目々のウパルパ様だ!
海に面した神殿のエントランスで、小さな身体で泣きながら辺りをよちよち歩いている。誰かを探しているようだが……
「きゃー! き、来たのだ、来るでない、ここはわれの聖域ぞ、守ってみせるのだ!」
キリッと凛々しい顔になったウパルパ様が、全身を虹色キラキラに輝かせて海を睨みつける。
「!?」
振り返ると、青く綺麗だったはずの海が赤黒い邪気に汚染されている。
あと少しで神殿のある浮島に辿り着く、というときに地面が揺れた。
「ご無事ですか!」
そこへ竜殺しのべっぴんが、負傷したイケオジを担いで合流してきた。
聖女様も仲間らしき数人と一緒に駆けつけてきた。
全員、満身創痍だ。このままじゃ海から襲ってくる脅威に全員飲み込まれてしまう……
「むり、もう無理なのだぷぅ。母なる海よ、われらを護ってほしいのだぷぅー!」
ネオンイエローの、虹色キラキラに輝く聖なる魔力がウパルパ様から迸る。
途端、神殿は集まった人々と浮島ごとウパルパ様の魔力に包まれ、――海の底へと沈んでいった……
☆ ☆ ☆
俺はみどり社長の資金提供バックアップを受け、八十神の助けを借りて再び異世界転移を試みることにした。
八十神が夢の王様の側近だったことを思い出したのは、俺が異世界転移した後だそうだ。
こいつが異世界人の貴族だった〝元の自分〟を思い出していたことで、異世界に戻る方法にはわりと簡単に道筋がついた。
国内外のパワースポットをひたすら巡り、土地のエネルギーである龍脈のエネルギーをチャージする。
その力で夢見をひたすら繰り返しながら、アケロニア王国へ辿り着け、と。
「みどり社長の仕事は国内、海外両方あるからね。御米田、君は彼女の出張にできるだけ同行して現地のパワースポットを探すんだ」
八十神が言うには、日本だとパワースポットは神社仏閣や文化史跡、それに山や古代遺跡に集中しているらしい。
そのやり方なら、みどり社長の仕事の邪魔にもならない。出張先で自由時間を見つけて、現地の探索をすればいいだけだ。
八十神から夢見の詳しい説明を聞いて、俺はようやく自分や、あの王様の実態を理解した。
夢見の術はとても燃費の悪い、けれど得るものの多い魔法らしい。
夢の世界を通じて、理論上どんな世界や過去、未来へも飛ぶことができる。
王様が行きたかったのは、勇者の救いに繋がる世界だ。
まったく無関係な世界だと取っ掛かりがなくて難しいらしい。幸い、この世界の御米田家はアケロニア王国から過去、転移して来た王族たちの子孫だ。
その縁を頼ってあの王様と八十神の本体は夢見を行なったと……
八十神から聞き出した話をノートにまとめながら、俺は疑問を訊いてみた。
「なあ、こっちの世界にいるまま夢見の術が使えるなら、過去に飛んでカズアキを助けられないか?」
しかし八十神は渋い顔になって首を振った。
「……難しいだろうな。夢見は最初の基点となる時点より〝過去〟に亡くなった人物は生き返れない」
「………………そうか」
夢見の基点はこの場合、どこになるんだろう。
異世界の未来で王様が行った時点か?
それとも、今俺のいるここになるのか?
「それに、もうカズアキ君は転生して異世界で勇者になっているからね」
「あ。そ、そうだった」
「そもそも、未練を残して死んだ人間は転生できないから、彼を救う必要はないってことでもある」
「………………」
未練。なかったんだな、カズアキ。
アケロニア王国で再会した十四歳のカズアキは、弟のことは気にしていたが、毒叔母や……父親のことはそんなに深く考えていなかったっけ。
俺は勇者のことは、意識不明のまま寝てるところしか見ていない。
でもカズアキの転生体なら、きっとカズアキと同じ呑気な食いしん坊なんだろうなとは。
夢見の術は、それから何度か練習してみたところ、再現の目処が立った。
カズアキが残したセイバーの中にみっちり詰まっていたアダマンタイト結晶のお陰で、わざわざパワースポット巡りを繰り返さなくても魔力源が確保できたからだ。
その時点で、八十神からスマホを渡された。
数年前のモデルだ。使い込まれて少し傷がある。
「ゲンキさんから預かっていた。君が異世界から戻ってくる直前、謎のメッセージが大量に送られてきてて」
「謎のメッセージ?」
スマホの電源を入れて驚いた。
『とつぜん、ゆうきさんが、きえて、しまいました』
『いえごと ゆうきさん、が、きえた』
こんなカタコトのメッセージが何十件と親父宛のLI◯Eに届いている。
「ユキりんだ……」
ど田舎村に残してきた俺のスマホから送ったんだ。
慌てて俺は、戻って来てから契約した新しいスマホから、異世界の自分のスマホ宛にメッセージを送った。
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