64 / 66
「乙女☆プリズム夢の王国」特典ストーリーの世界
ようやく父が話してくれたこと
しおりを挟む
それから、エスティアはサロンに移動して父テレンスと話をした。
セドリックと楽しむはずだったアフタヌーンティーは残念ながら父とになった。
「………………」
「………………」
濃いミルクティ色の髪と緑の目。
色だけは同じだが、エスティアは母譲りの少し冷たい容貌。父テレンスは文句なしの西洋画系の美男子だ。
互いにお茶を一杯と、スタンド下部のサンドイッチを食べ終わり、エスティアが中段のスコーンに手を伸ばしたところで父テレンスがおもむろに話し始めた。
それは、これまでエスティアが友人のサンドローザ王女や、伯爵家に帰ってきてから幼馴染みのカーティスやセドリックが言葉を選びながら伝えてくれていたことを裏付けるものだった。
親世代の頃に勃発した黒ドラゴンや瘴気被害の真実。
この国は国のトップの心が乱れたときに瘴気が発生して、その瘴気が魔物を呼び寄せて国内を汚染する。
王族や貴族たちは魔物討伐が可能な高い魔力をどの家も代々伝えてきている。
先代国王のときは、王家の正統問題が炎上して当時の国王に深い心痛を与えていた。
「王女殿下が仰ってました。お父様のご実家のモリスン子爵家が本当は王家の正統なのだと」
「そうだ。おまえの祖父で、私の父マーリンから数えて五代前の当主が当時、王族の中で最も魔力の高い人物だった」
なぜ魔力優先かといえば、先日アヴァロン山脈の山頂で対峙した黒い羽竜のような、瘴気を放つ魔物たちを抑えられる強さが条件のためだ。
「本来、プリズム王家は長子相続でもなければ嫡子相続でもない。次世代の血族の中から最も魔力の高い者を王太子に選定する。ところが……」
「王家の決まりが守られず、本来正統な後継者だった者が王家を出奔して臣下に下り、ご先祖様になったのですよね」
「ああ。しかもわざわざ、高位貴族ではない下位貴族の子爵位を賜って権力から遠いところに逃げた。だがそれでも王位継承権争いから逃げられなかった」
王家は正統の血を王家に戻したかったようだが、ここ何代も王家もモリスン子爵家も男子ばかりで政略結婚ができなかった。
「それでも近縁遠縁に関わらず王家の一族はそれなりに友好関係を保っていた。だが、私たち親世代が子供の頃に、ある事実が発覚した。……当時、王家に唯一の王子で王太子だったアーサー様が、王妃様の不義の子だと」
ぴた、とエスティアはスコーンを割ってクロテッドクリームを塗ろうとした手を止めた。
(サンドローザ! これ、あなたが平民の母親を持ってるとかより、もっと重大な話じゃない!?)
前国王の血を引いていない不義の子だった現国王と、平民を母に持つその娘サンドローザ。
ならばどちらにしろ、今のサンドローザ王女に王家の血は流れていないということだ。
彼女は何があっても絶対に、自分を守るためには王族の親戚のノア公爵令息ヒューレットと結婚しなければならない。
そして彼女を失脚させたくなければヒューレットは相手の不貞を飲み込まねばならなかった。
(彼はそういう不快感を表に出す人じゃないから、本心はわからないけど。)
「単純に血の濃さだけなら、王家に最も近い一族のノア公爵家から次期国王を出せばいい。 だが、本来の王家の正統は我が実家モリスン子爵家にある。当主マーリンはどうしたと思う?」
「別に王位に野心などは持たなかった……のですよね?」
「ああ。父マーリン本人は魔法騎士団の団長で満足していた。生まれた長男も次男も三男も魔力はあったが突出するほどじゃなかった。だけどそこで打ち止めにしておけばいいのに父は更に子供を作った。それが」
会ったことはないが伯父は三人と聞いていた。
「お父様、確か四男でしたね。王女殿下からお聞きしました。今、王族の血筋の中で一番魔力が高いのはお父様なのだと」
「そうだ。だが、格別強い魔力を持って生まれた私を、父はあえて、ほとんど放置していた。王都学園にだけは進学させて、……学園で私はアーサー様に出会った。そこで初めて王家のことやアーサー様が国王の実子でないことを教えられて」
それでも自分の運命に折れず、ひたむきに立ち向かおうとする当時のアーサー王太子に惹かれて、学生時代の〝テレンス君〟は王太子の世話役となった。
「そうしたら私とアーサー様が恋愛関係などと変な噂が流れたりしてな。私は魔力はあっても実家では怠けて勉強してなかったから、ずっと宿題や試験の面倒を見てもらってた。それが誤解を生んだらしい」
恥ずかしそうに告白する父が言うには、当時はアーサー王太子の寮の部屋に入り浸りで、二人きりになることもしょっちゅうだったそうだ。
(ああああ。乙プリのライトなBLモードにありましたね、そういう感じのシーンたくさん!)
新規スチルで、必死に宿題に取り掛かるテレンス君を見て『可愛いやつだ』と述懐するシーンがあった。
しかも背景には乙女ゲーム的演出で花が咲いていた。美形と美少年の取り合わせに、テレンス君最推しの前世のミナコは、BLが苦手なのに開発会社に全力で感謝を捧げたものだった。
セドリックと楽しむはずだったアフタヌーンティーは残念ながら父とになった。
「………………」
「………………」
濃いミルクティ色の髪と緑の目。
色だけは同じだが、エスティアは母譲りの少し冷たい容貌。父テレンスは文句なしの西洋画系の美男子だ。
互いにお茶を一杯と、スタンド下部のサンドイッチを食べ終わり、エスティアが中段のスコーンに手を伸ばしたところで父テレンスがおもむろに話し始めた。
それは、これまでエスティアが友人のサンドローザ王女や、伯爵家に帰ってきてから幼馴染みのカーティスやセドリックが言葉を選びながら伝えてくれていたことを裏付けるものだった。
親世代の頃に勃発した黒ドラゴンや瘴気被害の真実。
この国は国のトップの心が乱れたときに瘴気が発生して、その瘴気が魔物を呼び寄せて国内を汚染する。
王族や貴族たちは魔物討伐が可能な高い魔力をどの家も代々伝えてきている。
先代国王のときは、王家の正統問題が炎上して当時の国王に深い心痛を与えていた。
「王女殿下が仰ってました。お父様のご実家のモリスン子爵家が本当は王家の正統なのだと」
「そうだ。おまえの祖父で、私の父マーリンから数えて五代前の当主が当時、王族の中で最も魔力の高い人物だった」
なぜ魔力優先かといえば、先日アヴァロン山脈の山頂で対峙した黒い羽竜のような、瘴気を放つ魔物たちを抑えられる強さが条件のためだ。
「本来、プリズム王家は長子相続でもなければ嫡子相続でもない。次世代の血族の中から最も魔力の高い者を王太子に選定する。ところが……」
「王家の決まりが守られず、本来正統な後継者だった者が王家を出奔して臣下に下り、ご先祖様になったのですよね」
「ああ。しかもわざわざ、高位貴族ではない下位貴族の子爵位を賜って権力から遠いところに逃げた。だがそれでも王位継承権争いから逃げられなかった」
王家は正統の血を王家に戻したかったようだが、ここ何代も王家もモリスン子爵家も男子ばかりで政略結婚ができなかった。
「それでも近縁遠縁に関わらず王家の一族はそれなりに友好関係を保っていた。だが、私たち親世代が子供の頃に、ある事実が発覚した。……当時、王家に唯一の王子で王太子だったアーサー様が、王妃様の不義の子だと」
ぴた、とエスティアはスコーンを割ってクロテッドクリームを塗ろうとした手を止めた。
(サンドローザ! これ、あなたが平民の母親を持ってるとかより、もっと重大な話じゃない!?)
前国王の血を引いていない不義の子だった現国王と、平民を母に持つその娘サンドローザ。
ならばどちらにしろ、今のサンドローザ王女に王家の血は流れていないということだ。
彼女は何があっても絶対に、自分を守るためには王族の親戚のノア公爵令息ヒューレットと結婚しなければならない。
そして彼女を失脚させたくなければヒューレットは相手の不貞を飲み込まねばならなかった。
(彼はそういう不快感を表に出す人じゃないから、本心はわからないけど。)
「単純に血の濃さだけなら、王家に最も近い一族のノア公爵家から次期国王を出せばいい。 だが、本来の王家の正統は我が実家モリスン子爵家にある。当主マーリンはどうしたと思う?」
「別に王位に野心などは持たなかった……のですよね?」
「ああ。父マーリン本人は魔法騎士団の団長で満足していた。生まれた長男も次男も三男も魔力はあったが突出するほどじゃなかった。だけどそこで打ち止めにしておけばいいのに父は更に子供を作った。それが」
会ったことはないが伯父は三人と聞いていた。
「お父様、確か四男でしたね。王女殿下からお聞きしました。今、王族の血筋の中で一番魔力が高いのはお父様なのだと」
「そうだ。だが、格別強い魔力を持って生まれた私を、父はあえて、ほとんど放置していた。王都学園にだけは進学させて、……学園で私はアーサー様に出会った。そこで初めて王家のことやアーサー様が国王の実子でないことを教えられて」
それでも自分の運命に折れず、ひたむきに立ち向かおうとする当時のアーサー王太子に惹かれて、学生時代の〝テレンス君〟は王太子の世話役となった。
「そうしたら私とアーサー様が恋愛関係などと変な噂が流れたりしてな。私は魔力はあっても実家では怠けて勉強してなかったから、ずっと宿題や試験の面倒を見てもらってた。それが誤解を生んだらしい」
恥ずかしそうに告白する父が言うには、当時はアーサー王太子の寮の部屋に入り浸りで、二人きりになることもしょっちゅうだったそうだ。
(ああああ。乙プリのライトなBLモードにありましたね、そういう感じのシーンたくさん!)
新規スチルで、必死に宿題に取り掛かるテレンス君を見て『可愛いやつだ』と述懐するシーンがあった。
しかも背景には乙女ゲーム的演出で花が咲いていた。美形と美少年の取り合わせに、テレンス君最推しの前世のミナコは、BLが苦手なのに開発会社に全力で感謝を捧げたものだった。
10
あなたにおすすめの小説
国一番の美少女だけど、婚約者は“嫌われ者のブサイク王子”でした
玖坂
ファンタジー
気がつけば、乙女ゲームの“悪役令嬢”ポジションに転生してました。
しかも婚約者は、誰もがドン引きする“ブサイクで嫌われ者の王子様”
だけど――あれ?
この王子、見た目はともかく中身は、想像以上に優しすぎる……!?
国一番の美少女に転生した令嬢と、誰にも愛されなかった王子が、少しずつ成長していく物語。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
攻略なんてしませんから!
梛桜
恋愛
乙女ゲームの二人のヒロインのうちの一人として異世界の侯爵令嬢として転生したけれど、攻略難度設定が難しい方のヒロインだった!しかも、攻略相手には特に興味もない主人公。目的はゲームの中でのモフモフです!
【閑話】は此方→http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/808099598/
閑話は最初本編の一番下に置き、その後閑話集へと移動しますので、ご注意ください。
此方はベリーズカフェ様でも掲載しております。
*攻略なんてしませんから!別ルート始めました。
【別ルート】は『攻略より楽しみたい!』の題名に変更いたしました
悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる