ゲームランカーのスパダリ彼氏

真義あさひ

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第一章「最強ランカーのリアル彼氏はスパダリ覚醒する」高瀬怜司編

立ち上がれ、反撃の狼煙!

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 ランキング戦の会場は、歓声と熱気で震えていた。

【ギルド地天泰がレイドボス攻略完了しました。チーム戦に優勝しました】

 システムアナウンスが流れるや、観客席から大歓声が上がり、ギルドメンバーは互いを抱き合って喜び合った。

「やったな! でも、これだけじゃまだ金が足りねえぞ!」

 ジェイクの叫びに怜司が頷く。

「そうだ、ここからだ! 個人戦で何としてでも賞金を獲得する!」



 ——個人戦がすぐに始まった。

 リンリン太郎――凛太は、持ち前の魔法火力とタンク偽装で奮戦したが、魔力切れタイミングで紙のような防御力が仇となり……強豪の攻撃に打ちのめされ予選落ちしてしまった。

「ごめん、お兄ちゃん、泰然さん……!」

 凛太の悔しそうな叫びが響く。
 次に立ったジェイクが豪快に笑った。

「安心しろ、リンリン太郎! オレ様が暴君バーサーカーの力を見せてやるぜ!」

 ジェイクはまさに暴君そのものだった。怒涛の攻撃力で敵を圧倒し、瞬く間に準々決勝まで進出した。

 だが——

「あらぁ、ジェイクくんはここまでよぅ」

 まさかのジェイクとデスメリーが再戦での対戦となったのだ。
 相性が最悪だった。物理攻撃特化の暴君バーサーカーのジェイクと、特殊なデバフ魔法特化の死者使いネクロマンサーのデスメリーは、可能なら避けたい組み合わせだった……

 妖しく笑うデスメリーが不気味な呪文を唱えると、ジェイクの身体が動きを止めた。

「な、何だこれ……動けねぇ!」

 ジェイクは猛烈な抵抗を見せるが、ネクロマンサーの呪術の前に為す術もなく倒れた。
 以前ギルドで不意打ちを喰らった時と同じ――即死魔法だった。

「ジェイク!」

 怜司が叫ぶ中、次の対戦カードが発表される。デスメリーの次の準決勝の対戦相手は――泰然だ!

「もしや、対戦の組み合わせが操作されてんのか?」
「あり得る! 見てよ、またデスメリーのやつ泰然さんにちょっかいかけてる!」



 凛太が指差した闘技場の中央で、デスメリーは泰然に甘く囁いた。

「泰然くん、ここでワタシに勝利を譲りなさい。そうしたら借金の半分を肩代わりしてあげるわぁ」

 泰然の心が揺れる。

(半分でも借金が減るなら……)

 その迷いが、一瞬の隙を生んだ。

「……わかった」

 泰然が小さく頷いた瞬間、デスメリーの手から黒い霧が広がり、泰然を包み込んだ。

「デスメリー、お前!?」

 泰然は次の瞬間、氷の柩に閉じ込められ、その場に凍結されてしまった。

「泰然!?」

 あまりの光景に、隣のリングで自分の準決勝を戦っていた怜司は、対戦相手を瞬殺して氷漬けの泰然に駆け寄った。

 氷の中の泰然は前に向けて必死に手を伸ばし、微かに顔を上げて目を瞑っている。
 氷の中に周囲の光が差し込んで、泰然自体が薄っすらと発光して見える。
 その様子は、まるで天に向けて祈りを捧げる殉教者のようで……

『なんかすげぇ芸術が生まれてしまったな……』
『とりあえずスクショ』
『このオブジェおいくらですか!?』

 視聴者たちも陶然としたコメントを投下している。

「泰然! ……泰然っ!」

 泰然に向けて叫ぶ怜司に、デスメリーが残酷に笑う。

「泰然くんを助けたかったら、ワタシを倒すことね! オーホホホホホ!」

 奇しくも準決勝を勝ち上がった者同士の対決となった。

「貴様。よくも泰然を!」

 怜司の胸に激しい怒りが込み上げた。デスメリーを鋭く睨みつける。

 この瞬間、今まで不安定に揺れていた怜司の覚悟が固まった。



 闘技場には重苦しい空気が張り詰めていた。

 盛大に啖呵を切った怜司だったが、騎士ナイトの怜司と死者使いネクロマンサーのデスメリーの相性もまた悪かった。

 デスメリーの禍々しいネクロマンサーの魔法が渦巻き、怜司は防戦を一方的に強いられ続けた。

 デスメリーのデバフや呪術的魔法を受けるたび、ダメージが蓄積し、装備の耐久度が低下していく。
 しかも攻撃は搦め手が多く執拗だ。怜司に回復やデバフ解除ポーションを使う暇を与えない。

「ハハハ! ワタシに逆らうなんて、身の程知らずねえ!」

 デスメリーは妖しく笑い、周囲には不気味な死体が浮かび上がる。本格的に決着をつける気のようだ。

 怜司は苦々しく唇を噛みしめた。

(強すぎる……このままじゃ勝てない……!)



 そのときだった。

 怜司の視界に、プレイヤーたちのチャットが激しく動き始めるのが見えた。

『あーあーテステス。我ら解析班。推しの泰然きゅんが早々に敗退した憤りをどこにぶつければ良いのやら』
『仕方ないから期待のルーキー氏に協力してやるのですぞ!』

 チャットに音声で割り込んできた声を聞いて、凛太はハッとした。

 怜司の耳元でインカムが鳴った。弟の凛太だった。

「お兄ちゃん、解析班が降臨したよ! チャットにチャンネル合わせて!」

 怜司は驚きつつも凛太の指示通り操作した。すると陽気な男複数の声が聞こえてくる。

『解析班リーダーよりクールガイ氏へ。泰然氏と地天泰ギルドの異常、我々も以前から疑問を抱いておりました』
『何者かの不正ハッキングによる資金流出と判明。弱点も特定完了しました!』

 解析班を名乗るだけある。見事な解析だった。

「ありがとう!すぐに教えてくれ!」

『ネクロマンサーの弱点は【聖属性】です!』
『騎士ナイトのクールガイ氏がクラスを【聖騎士パラディン】に進化させる方法も特定済み!』

「分かった、どうすればいい?」

『クールガイ氏の泰然氏への強い感情をシステムが認めれば進化します! 今こそ叫べ!』

(強い感情)

 怜司は一瞬だけ戸惑ったが、すぐに理解して強く目を閉じた。

 泰然に向けて抱く怜司の想いは、元々とてもシンプルだ。
 今の怜司の激情を表すとすれば、これしかない。

「泰然! 君への愛が僕の力だ! 君を傷つけるものすべてをこの手で滅ぼしてやる!」

 次の瞬間、怜司の全身が眩しい光に包まれた。
 白い騎士服は聖銀ミスリルの白銀に輝く鎧へと変わる。片手剣は刀身がまばゆく輝いた。――聖なる力のエフェクトだ。

【プレイヤー〝クールガイ〟が騎士ナイトから聖騎士パラディンにクラス進化しました】

「お兄ちゃんのクラスが変わった……!?」

 凛太が息を呑み、ジェイクが大笑いした。

「ハッ! オレ様もまだ見たことないぜ、こんな劇的な進化は!」

 怜司は眩い光の中で剣を掲げ、デスメリーを真正面から睨みつけた。

「デスメリー、これ以上お前の好きにはさせない!」

 クラス進化した怜司にデスメリーの笑みが凍りついている。

「馬鹿な……そんなクラス変更、ワタシのデータにはないわよ……!?」

 怜司は一気に距離を詰め、聖なる剣を振り下ろした。

「泰然はお前なんかの奸計で折れる男じゃない! 彼の輝きを曇らせることは許さない!」

 デスメリーの黒い魔法と怜司の白い光が激突し、激しい衝撃波が闘技場を揺らした。

 観客たちから大歓声が起こった。

「聖騎士パラディンだと!? 初めて見るぞ、こんな進化!」
「至高の信仰対象を持つ者だけがなれる境地だ! まさか本当に存在したとは……!」

『まあ通常は教会や神殿所属でなければ、聖騎士覚醒しませんからなあ~』
『クールガイ氏、地天泰加入から観察しておりましたが、泰然きゅんを神の如く崇めてるご様子。ダメ元で試させたら行けてしまったのですぞw』

 解析班が呑気に解説している。他のプレイヤーや視聴者たちからあれこれ突っ込まれているが、怜司には感謝しかなかった。

(僕の想いが信仰に匹敵するか。よい見立てだ、解析班たちよ!)

 この光景には凛太も呆然としていた。

「お兄ちゃんの愛が、システムに認められたんだ……」
「本人に聖なる要素これっぽっちもなさそうなのにな! 愛の力って怖えな!」

 ジェイクが腹を抱えて笑う。
 その言葉に怜司は苦笑しながらも、再び剣を構え直した。

「さあ、デスメリー。泰然を返してもらおう!」



 デスメリーは怒りに顔を歪ませ、強烈な呪文を次々と放つ。

「調子に乗るな! お前如きがワタシに勝てるわけがない!」

 しかし、ネクロマンサーに対する聖騎士パラディンの相性の良さは圧倒的だった。
 徐々にデスメリーが追い詰められていく。
 今のこの状況でデスメリーがハッキングで強化したステータスを使えば、観客や運営に不正が露呈してしまう。

「くそっ! こんなはずでは……!」

 怜司はその隙を逃さず、猛攻を仕掛ける。

「これが僕の……泰然への愛の力だ!」

 聖剣の聖なる光が闇を切り裂き、ついに最後の一撃がデスメリーを吹き飛ばした。

「そんな……ワタシが敗れるなんて……!」

 デスメリーは顔から闘技場の床に倒れ込んだ。
 あれだけ凶悪な強さを見せたわりに、大変雑魚っぽいやられ方だった……

 その瞬間、泰然を包んでいた氷の柩が砕け散った。

「泰然!」

 怜司は泰然のもとへ駆け寄り、彼を抱き起こした。
 ゆっくりと泰然が目を開ける。自分を抱く男を見て、赤い目を瞬かせている。

「……え、クールガイ?」

 何でこいつが? と疑問符だらけの顔だ。

 怜司は微笑んで仮面を外し、自分の素顔をさらした。

「遅くなってごめん。迎えに来たよ。泰然」

 現れた男の顔を見て、泰然の赤い瞳から一粒の涙が零れ落ちる。

「怜司……最初からクールガイはお前だったのか……?」

 怜司は頷いた。そして泰然を抱いたまま観客に向けて貴族的なボウ・アンド・スクレープで礼を取った。

「泰然唯一の恋人、高瀬怜司と申します。リアルでもゲームでも、泰然の恋人は僕だけですよ?」

 観客席から大歓声が上がった。

「リアル彼氏キター!」
「最高だぜ怜司! 俺たちの泰然を頼む!」

「クソッ! 覚えてなさいよ!」

 デスメリーは悔しさに拳を叩きつけながら、捨て台詞を吐いて盛り上がる闘技場を後にした。

 泰然は怜司を見つめ、涙を浮かべて微笑んだ。

「ありがとう、怜司……」

 怜司は泰然の手を握りしめ、静かに誓った。

「君のためなら、僕は何だってできる。君こそが、……僕の生きる力だから」

 歓声が響き渡る中、二人は強く抱き合い、互いの絆を確かめ合ったのだった。


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