20 / 52
第一章「最強ランカーのリアル彼氏はスパダリ覚醒する」高瀬怜司編
勝利後の要求は
しおりを挟む
怜司が仮面を外した瞬間、会場が静寂に包まれた。
聖騎士パラディンの白銀の鎧に映える、淡い茶髪と緑の瞳が露わになり、観客の息が止まる。
凍りつきは数秒で解けて、視聴者コメントが溢れ出した。
『誰だこのイケメン!?』
『速報!泰然のリアル彼氏!』
『ギルマスにこんな恋人が!?』
怜司は剣を収め、泰然に視線を向ける。
泰然が赤い目を見開き、何度も瞬きを繰り返している。
「怜司……お前……」
数万人の視線が集中する中、怜司は堂々と微笑みながら泰然を見つめた。
声が震え、頬が赤らむ泰然に一歩近づき、低く囁いた。
「言ったはずだ。迎えに来たって」
泰然が息を呑み、慌てて目を逸らした。
「ばか、デートのドタキャン続きで何やってるかと思えば……LOIかよ!」
声を荒げるが、泰然の口元が緩んでいる。怜司の目はその動揺を見逃さない。
(可愛いな。今すぐキスしたい)
視聴者たちは突然の展開に煮えたぎった。
『ギルマス照れてる!』
『えっ、泰然かわいい』
『リアル彼氏の眼差しやばい!』
泰然を見据え、迷いなく告げる。
「何度でも言う。君は僕のものだ。リアルでも、――ゲームでも」
「………………」
泰然は応えずに立ち上がり、大手ギルドのマスターらしい威厳を取り戻そうと腕を組んだ。
……が、どうにも収まりが悪そうで頭を掻いた。
「まあ、ランキング戦は終わりということで。解散!」
会場はブーイングの嵐だ。
『泰然、彼氏を紹介しろー!』
『こんなイケメンどこに隠してたの!?』
『ああああ……ほんとに彼氏いたんだ。ショック……』
「お前ら、騒ぎすぎだ! 試合は終わっただろ!」
観客や視聴者に叫ぶも、周りの騒ぎが収まる気配はない。
参ったな、と泰然が溜め息をついている。
黒と真紅の専用装備姿でいつも通りのカリスマなのは変わらなかったが、怜司が目の前に来ると凛とした赤い瞳が揺らいだ。
「皆に紹介してくれないのかい? この僕を」
「……ばか」
小さく罵倒されたが、首筋まで赤みを帯びさせていては説得力もない。
その耳元に怜司は囁いた。
「君の照れる顔、他の奴に見せないで」
「う、あ……っ」
無声音で息とともに囁かれて、泰然が跳ね上がった。
熱くなった顔を片手で隠すが、指の隙間から怜司をちらりと見つめてくる。
(ああ、可愛い。もっと恥ずかしがらせたい。誰もいない二人きりのところで)
普段は嫌われたくなくて隠しているドS心が疼いた。
二人のやり取りはまだ実況配信されている。
コメント欄は爆発していた。
『泰然のギャップ最高!』(投げ銭5000円)
『怜司の囁きで死にました!』(投げ銭15000円)
『怜司のスパダリに課金しかない!』(投げ銭50000円)
『新たな推しの登場……尊い……尊死ぬる……』
概ね反応は良好のようである。
「さあ。それじゃ、消してもらおうか」
「……え?」
怜司は泰然の顎を指先で掴み、顔を寄せる。
「君はゲームとリアルは違うって言い訳してたけど。僕以外の恋人なんて、どの世界においても不愉快極まりないよ」
「………………っ」
声を低めた怜司に、泰然が息を飲んでハッとした顔になった。
(何のためにここまで来たと思う? 絶対に恋人たちとの関係を解消させる!)
怜司はそのまま泰然の手を引き、本人のステータス画面を開かせた。
バディ契約欄の〝恋人リスト〟をタッチ、クリックして泰然のゲーム恋人の一覧を表示させる。
観客も視聴者たちも騒然としている。
だが怜司は構わず続けた。
「僕がLOIに来たんだから、もう君に他の恋人は要らないよね?」
「そ、それは」
泰然は怜司がLOIプレイヤーになって、ましてや自分にまで勝利したことを喜んでいる。それは間違いない。
だが、ゲーム内の恋人契約の解除には躊躇いを見せている。
「………………」
怜司は無言で恋人リストの〝削除〟ボタンを押そうとした。しかし泰然が思いのほか強い力でステータス画面から怜司の手を引き剥がした。
「待て、怜司。駄目だ!」
「……どうして?」
目を細めて恋人を見つめる。
泰然は顔を赤らめていたのが一転、今度は青ざめている。
だが、気を取り直して必死に説明してきた。
「ろ、LOIの恋人契約はバディ契約そのものだ。ステータスアップ補正が得られる。恋人一人につき最低でも5%アップ……解除したらステータスが大幅ダウンする。だから、駄目だ」
「ふうん。いち、に……ジェイク・マクナゲットやデスメリーを含めた13人もいるってことは、5%×12で60%アップか。なかなかだね」
「俺は地天泰のマスターとしてランクを落とすわけにはいかない。わかってくれ、怜司」
怜司は再び泰然の顎を持ち上げ、必死な泰然の赤い瞳を覗き込む。
おもむろにアイテムボックスを開いた。
取り出したのはLOI最上級ランク、伝説級の指輪だ。
「えっ、怜司、なに!?」
泰然の手を恭しく、だが強引に掴んで、黄金に輝く指輪を無理やり嵌めさせた。もちろん左の薬指――伴侶の証の指にだ。
「君に相応しい指輪だろう?」
観客の誰かが呟いた。
「お、おい、あれって極秘クエストでしか入手できない全ステータス100アップのレジェンダリー装備……!?」
泰然も指輪の正体に気づいたようで、目を瞬かせて左の薬指に嵌まった黄金の指輪を見つめている。
「ほら、恋人補正が無くてもステータスの大幅増強は可能だろ?」
「怜司、頼むから理解してくれ。ギルドマスターの責任があるんだ」
「それ、僕とどっちが大切?」
「怜司、落ち着け。話を」
「足りないかな? ならもう一つ」
(恋人としての君の弱さと、ゲームプレイヤーのカリスマの意地がある君。どっちも素敵だけど、……譲らないよ)
泰然の左の薬指に二個目の黄金の指輪を嵌めさせた。これで全ステータスは200アップ。
ゲーム内に数個しか存在を確認されてない高レアリティ装備に、さすがのカリスマ泰然も固まった。
いや、視聴者たちも固まっていた。
『いや待って。ほんと待って。あの指輪もう一つってレジェンダリー装備何個持ってるわけ!?』
『あ。オレわかった。こいつ、廃課金者だ。こんな短期間でレベリングしてランキング駆け上がってきたのは間違いない』
『あの指輪も排出率すげえ低いけど有料ガチャリストに一応入ってるしな』
『『『『『マジで!?』』』』』
これら視聴者たちのコメントは、もちろん怜司たちにも見えている。
泰然は恐ろしいものを見る目で、怜司を見上げてきた。
「怜司……課金でレベリングしてここまで来たのか?」
「そうだよ。君のためにね。まあ……他にもいろいろやったけど」
あえてPK戦法のことは言わなかった。LOIのルールに反しているわけでもなし。
視聴者が怜司の課金額に気づいて戦慄している。
『お、おい、いまシミュレーションしてみたけど、こいつが有名になりだしてまだ一ヶ月未満……一ヶ月前にゲーム始めたとして、レベル85にしてデスメリーに勝てるキャラ育成するのに必要な金って……』
『億超える、よな?』
『泰然のために億使えるってどんだけ!?』
『スパダリ彼氏の出現飯ウマです』(投げ銭9999円)
泰然はさすがに呆れた。
「有料ガチャ、どんだけ回しまくったんだよ」
「学生時代の、アプリ開発で稼いだ財産をごっそり突っ込んだ」
「アホだろ」
「金なんてまた稼げばいい」
視聴者たちが叫ぶ。
『すげえ執着系彼氏のご登場だな……』
『泰然のために億超え廃課金……やだ……すごい……財力……です』(投げ銭2525円)
『強引、財力、イケメン、スパダリ彼氏に理性吹っ飛びました!推します!!!』(投げ銭100000円)
コメントの中には怜司への直接的な質問もあった。
『怜司さん。廃課金でプレイヤー強化したのはわかるのですが、お仕事はどうされたのですか?』(投げ銭10000円)
『そだね。プレイ時間はどうやって捻出したの? 泰然みたいなプロゲーマーじゃないよね?』
『それオレも気になった。LOIは仕様的に課金だけじゃレベリングできないから。ちゃんとゲームもプレイしないと』
冷静な突っ込みに、怜司はなんとも言えない表情になって告白した。
「レベリングのために有給を使い果たしました……いやあ、ははは……」
苦笑いする怜司に会場からも笑い声が起こる。視聴者たちも爆笑しているようだ。
『なんだ社畜か』
『ナカーマw』
『泰然のために有給を使い果たすスパダリ。……新しいタイプだな』
泰然も思わず吹き出している。
「そこまでするか。怜司」
「当然さ」
いつもの涼しい顔をしているが、背景には壮絶な社畜の努力があった。
何せ、銀行にプログラマーとして就職してまだ社会人一年目だ。契約上取れるギリギリまで攻めて、まとめた有給プラスαをもぎ取っている。
散々上司に嫌味を言われたが、退かない怜司に最後は向こうが諦めてくれた。
(大変だった。でも泰然のためだから)
ともあれ、どうやらこの場では埒があかなさそうだ。
怜司は泰然の手をそっと押し退けて、ステータス画面を閉じさせた。
「まだ決断できない? なら今夜、話そう。二人きりで、じっくりと……ね」
「怜司……」
カリスマの矜持を保ちながらも、泰然は不安そうに怜司を見上げてくる。
「はっきり言っておくよ。君の恋人に僕以外がいるなんて、……不愉快だ」
低く声を潜めた囁きに、泰然が息を飲む。
「君が恋人たちを消さない限り、許さないからね。絶対に消させるよ」
「だ、だから! 勝手に決めるなって! ゲームの中だけのことだって言ってるだろう!?」
言い募る泰然に、怜司は取り合わなかった。
「嫌だよ。僕だけが君の恋人だ。リアルでもゲームでも、独占する権利は僕だけのもの」
言って、怜司はチュッと音を立てて泰然の頬にキスをした。
とそのとき、システムアナウンスが実に空気を読んだタイミングで流れた。
【個人ランキング戦、1位はプレイヤー名〝クールガイ〟で決定しました。トップランカーのあなたには賞金と賞品、次のランキング戦まで〝トップランカー〟バッジの使用が許可されます】
【トップランカーバッジの保有時は、すべてのステータスが常時10%アップ、ショップでの購入金額が8%オフになり……】
大きな歓声が闘技場を包む。怜司は観客たちと――泰然に向けて声を朗々と張り上げた。
「偉大なる大君主、泰然よ! 最愛のあなたにこの勝利と富を捧げよう!」
言うだけ言って、その場で賞金を泰然の資産アカウントに全額送金した。
――泰然の資産凍結はその場で解除される。
【ギルド地天泰の借金完済を確認しました。プレイヤー〝二条泰然〟の資産凍結が解除されます】
「よし。これでもう問題はないね?」
「あっ。怜司!」
満足げに頷き、最後にハグをしてログアウトしていった。
残された泰然はもうどうしたらいいかわからない。
視聴者たちは好き勝手にコメントし合っている。
『泰然のリアル彼氏がヤベエやつだったでござる』
『あんな重い彼氏いるのにゲーム恋人13人……そりゃ彼氏も怒るわ』
『泰然もう逃げられないと思う』
『今後はカップルで推しますね』
『尊すぎて語彙力失った……』
『デスメリーこれ完全にフラれたよね。かわいそう(ぴえん)』
「……今度こそ解散!」
収拾がつかない。もう諦めてヤケクソで叫び、泰然もまたログアウトしたのだった。
☆ ☆ ☆
主役たちが退場した後も、視聴者たちは残っていた。
ランキング戦の振り返りをしながら駄弁っているともいう。
『この後、二人で話し合いだって』
『話し合い(身体で)』
『泰然、明日ログインしてくるかなあ?』
『お、ギルマスが自分のチャンネルで配信始めたぞー』
『そっち移動しよー』
『よし、かいさーん!』
→泰然編へ続く
※で、怜司がいよいよ本性を現す……というかスパダリ本領発揮する泰然編へ続く
聖騎士パラディンの白銀の鎧に映える、淡い茶髪と緑の瞳が露わになり、観客の息が止まる。
凍りつきは数秒で解けて、視聴者コメントが溢れ出した。
『誰だこのイケメン!?』
『速報!泰然のリアル彼氏!』
『ギルマスにこんな恋人が!?』
怜司は剣を収め、泰然に視線を向ける。
泰然が赤い目を見開き、何度も瞬きを繰り返している。
「怜司……お前……」
数万人の視線が集中する中、怜司は堂々と微笑みながら泰然を見つめた。
声が震え、頬が赤らむ泰然に一歩近づき、低く囁いた。
「言ったはずだ。迎えに来たって」
泰然が息を呑み、慌てて目を逸らした。
「ばか、デートのドタキャン続きで何やってるかと思えば……LOIかよ!」
声を荒げるが、泰然の口元が緩んでいる。怜司の目はその動揺を見逃さない。
(可愛いな。今すぐキスしたい)
視聴者たちは突然の展開に煮えたぎった。
『ギルマス照れてる!』
『えっ、泰然かわいい』
『リアル彼氏の眼差しやばい!』
泰然を見据え、迷いなく告げる。
「何度でも言う。君は僕のものだ。リアルでも、――ゲームでも」
「………………」
泰然は応えずに立ち上がり、大手ギルドのマスターらしい威厳を取り戻そうと腕を組んだ。
……が、どうにも収まりが悪そうで頭を掻いた。
「まあ、ランキング戦は終わりということで。解散!」
会場はブーイングの嵐だ。
『泰然、彼氏を紹介しろー!』
『こんなイケメンどこに隠してたの!?』
『ああああ……ほんとに彼氏いたんだ。ショック……』
「お前ら、騒ぎすぎだ! 試合は終わっただろ!」
観客や視聴者に叫ぶも、周りの騒ぎが収まる気配はない。
参ったな、と泰然が溜め息をついている。
黒と真紅の専用装備姿でいつも通りのカリスマなのは変わらなかったが、怜司が目の前に来ると凛とした赤い瞳が揺らいだ。
「皆に紹介してくれないのかい? この僕を」
「……ばか」
小さく罵倒されたが、首筋まで赤みを帯びさせていては説得力もない。
その耳元に怜司は囁いた。
「君の照れる顔、他の奴に見せないで」
「う、あ……っ」
無声音で息とともに囁かれて、泰然が跳ね上がった。
熱くなった顔を片手で隠すが、指の隙間から怜司をちらりと見つめてくる。
(ああ、可愛い。もっと恥ずかしがらせたい。誰もいない二人きりのところで)
普段は嫌われたくなくて隠しているドS心が疼いた。
二人のやり取りはまだ実況配信されている。
コメント欄は爆発していた。
『泰然のギャップ最高!』(投げ銭5000円)
『怜司の囁きで死にました!』(投げ銭15000円)
『怜司のスパダリに課金しかない!』(投げ銭50000円)
『新たな推しの登場……尊い……尊死ぬる……』
概ね反応は良好のようである。
「さあ。それじゃ、消してもらおうか」
「……え?」
怜司は泰然の顎を指先で掴み、顔を寄せる。
「君はゲームとリアルは違うって言い訳してたけど。僕以外の恋人なんて、どの世界においても不愉快極まりないよ」
「………………っ」
声を低めた怜司に、泰然が息を飲んでハッとした顔になった。
(何のためにここまで来たと思う? 絶対に恋人たちとの関係を解消させる!)
怜司はそのまま泰然の手を引き、本人のステータス画面を開かせた。
バディ契約欄の〝恋人リスト〟をタッチ、クリックして泰然のゲーム恋人の一覧を表示させる。
観客も視聴者たちも騒然としている。
だが怜司は構わず続けた。
「僕がLOIに来たんだから、もう君に他の恋人は要らないよね?」
「そ、それは」
泰然は怜司がLOIプレイヤーになって、ましてや自分にまで勝利したことを喜んでいる。それは間違いない。
だが、ゲーム内の恋人契約の解除には躊躇いを見せている。
「………………」
怜司は無言で恋人リストの〝削除〟ボタンを押そうとした。しかし泰然が思いのほか強い力でステータス画面から怜司の手を引き剥がした。
「待て、怜司。駄目だ!」
「……どうして?」
目を細めて恋人を見つめる。
泰然は顔を赤らめていたのが一転、今度は青ざめている。
だが、気を取り直して必死に説明してきた。
「ろ、LOIの恋人契約はバディ契約そのものだ。ステータスアップ補正が得られる。恋人一人につき最低でも5%アップ……解除したらステータスが大幅ダウンする。だから、駄目だ」
「ふうん。いち、に……ジェイク・マクナゲットやデスメリーを含めた13人もいるってことは、5%×12で60%アップか。なかなかだね」
「俺は地天泰のマスターとしてランクを落とすわけにはいかない。わかってくれ、怜司」
怜司は再び泰然の顎を持ち上げ、必死な泰然の赤い瞳を覗き込む。
おもむろにアイテムボックスを開いた。
取り出したのはLOI最上級ランク、伝説級の指輪だ。
「えっ、怜司、なに!?」
泰然の手を恭しく、だが強引に掴んで、黄金に輝く指輪を無理やり嵌めさせた。もちろん左の薬指――伴侶の証の指にだ。
「君に相応しい指輪だろう?」
観客の誰かが呟いた。
「お、おい、あれって極秘クエストでしか入手できない全ステータス100アップのレジェンダリー装備……!?」
泰然も指輪の正体に気づいたようで、目を瞬かせて左の薬指に嵌まった黄金の指輪を見つめている。
「ほら、恋人補正が無くてもステータスの大幅増強は可能だろ?」
「怜司、頼むから理解してくれ。ギルドマスターの責任があるんだ」
「それ、僕とどっちが大切?」
「怜司、落ち着け。話を」
「足りないかな? ならもう一つ」
(恋人としての君の弱さと、ゲームプレイヤーのカリスマの意地がある君。どっちも素敵だけど、……譲らないよ)
泰然の左の薬指に二個目の黄金の指輪を嵌めさせた。これで全ステータスは200アップ。
ゲーム内に数個しか存在を確認されてない高レアリティ装備に、さすがのカリスマ泰然も固まった。
いや、視聴者たちも固まっていた。
『いや待って。ほんと待って。あの指輪もう一つってレジェンダリー装備何個持ってるわけ!?』
『あ。オレわかった。こいつ、廃課金者だ。こんな短期間でレベリングしてランキング駆け上がってきたのは間違いない』
『あの指輪も排出率すげえ低いけど有料ガチャリストに一応入ってるしな』
『『『『『マジで!?』』』』』
これら視聴者たちのコメントは、もちろん怜司たちにも見えている。
泰然は恐ろしいものを見る目で、怜司を見上げてきた。
「怜司……課金でレベリングしてここまで来たのか?」
「そうだよ。君のためにね。まあ……他にもいろいろやったけど」
あえてPK戦法のことは言わなかった。LOIのルールに反しているわけでもなし。
視聴者が怜司の課金額に気づいて戦慄している。
『お、おい、いまシミュレーションしてみたけど、こいつが有名になりだしてまだ一ヶ月未満……一ヶ月前にゲーム始めたとして、レベル85にしてデスメリーに勝てるキャラ育成するのに必要な金って……』
『億超える、よな?』
『泰然のために億使えるってどんだけ!?』
『スパダリ彼氏の出現飯ウマです』(投げ銭9999円)
泰然はさすがに呆れた。
「有料ガチャ、どんだけ回しまくったんだよ」
「学生時代の、アプリ開発で稼いだ財産をごっそり突っ込んだ」
「アホだろ」
「金なんてまた稼げばいい」
視聴者たちが叫ぶ。
『すげえ執着系彼氏のご登場だな……』
『泰然のために億超え廃課金……やだ……すごい……財力……です』(投げ銭2525円)
『強引、財力、イケメン、スパダリ彼氏に理性吹っ飛びました!推します!!!』(投げ銭100000円)
コメントの中には怜司への直接的な質問もあった。
『怜司さん。廃課金でプレイヤー強化したのはわかるのですが、お仕事はどうされたのですか?』(投げ銭10000円)
『そだね。プレイ時間はどうやって捻出したの? 泰然みたいなプロゲーマーじゃないよね?』
『それオレも気になった。LOIは仕様的に課金だけじゃレベリングできないから。ちゃんとゲームもプレイしないと』
冷静な突っ込みに、怜司はなんとも言えない表情になって告白した。
「レベリングのために有給を使い果たしました……いやあ、ははは……」
苦笑いする怜司に会場からも笑い声が起こる。視聴者たちも爆笑しているようだ。
『なんだ社畜か』
『ナカーマw』
『泰然のために有給を使い果たすスパダリ。……新しいタイプだな』
泰然も思わず吹き出している。
「そこまでするか。怜司」
「当然さ」
いつもの涼しい顔をしているが、背景には壮絶な社畜の努力があった。
何せ、銀行にプログラマーとして就職してまだ社会人一年目だ。契約上取れるギリギリまで攻めて、まとめた有給プラスαをもぎ取っている。
散々上司に嫌味を言われたが、退かない怜司に最後は向こうが諦めてくれた。
(大変だった。でも泰然のためだから)
ともあれ、どうやらこの場では埒があかなさそうだ。
怜司は泰然の手をそっと押し退けて、ステータス画面を閉じさせた。
「まだ決断できない? なら今夜、話そう。二人きりで、じっくりと……ね」
「怜司……」
カリスマの矜持を保ちながらも、泰然は不安そうに怜司を見上げてくる。
「はっきり言っておくよ。君の恋人に僕以外がいるなんて、……不愉快だ」
低く声を潜めた囁きに、泰然が息を飲む。
「君が恋人たちを消さない限り、許さないからね。絶対に消させるよ」
「だ、だから! 勝手に決めるなって! ゲームの中だけのことだって言ってるだろう!?」
言い募る泰然に、怜司は取り合わなかった。
「嫌だよ。僕だけが君の恋人だ。リアルでもゲームでも、独占する権利は僕だけのもの」
言って、怜司はチュッと音を立てて泰然の頬にキスをした。
とそのとき、システムアナウンスが実に空気を読んだタイミングで流れた。
【個人ランキング戦、1位はプレイヤー名〝クールガイ〟で決定しました。トップランカーのあなたには賞金と賞品、次のランキング戦まで〝トップランカー〟バッジの使用が許可されます】
【トップランカーバッジの保有時は、すべてのステータスが常時10%アップ、ショップでの購入金額が8%オフになり……】
大きな歓声が闘技場を包む。怜司は観客たちと――泰然に向けて声を朗々と張り上げた。
「偉大なる大君主、泰然よ! 最愛のあなたにこの勝利と富を捧げよう!」
言うだけ言って、その場で賞金を泰然の資産アカウントに全額送金した。
――泰然の資産凍結はその場で解除される。
【ギルド地天泰の借金完済を確認しました。プレイヤー〝二条泰然〟の資産凍結が解除されます】
「よし。これでもう問題はないね?」
「あっ。怜司!」
満足げに頷き、最後にハグをしてログアウトしていった。
残された泰然はもうどうしたらいいかわからない。
視聴者たちは好き勝手にコメントし合っている。
『泰然のリアル彼氏がヤベエやつだったでござる』
『あんな重い彼氏いるのにゲーム恋人13人……そりゃ彼氏も怒るわ』
『泰然もう逃げられないと思う』
『今後はカップルで推しますね』
『尊すぎて語彙力失った……』
『デスメリーこれ完全にフラれたよね。かわいそう(ぴえん)』
「……今度こそ解散!」
収拾がつかない。もう諦めてヤケクソで叫び、泰然もまたログアウトしたのだった。
☆ ☆ ☆
主役たちが退場した後も、視聴者たちは残っていた。
ランキング戦の振り返りをしながら駄弁っているともいう。
『この後、二人で話し合いだって』
『話し合い(身体で)』
『泰然、明日ログインしてくるかなあ?』
『お、ギルマスが自分のチャンネルで配信始めたぞー』
『そっち移動しよー』
『よし、かいさーん!』
→泰然編へ続く
※で、怜司がいよいよ本性を現す……というかスパダリ本領発揮する泰然編へ続く
44
あなたにおすすめの小説
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【完結】下級悪魔は魔王様の役に立ちたかった
ゆう
BL
俺ウェスは幼少期に魔王様に拾われた下級悪魔だ。
生まれてすぐ人との戦いに巻き込まれ、死を待つばかりだった自分を魔王様ーーディニス様が助けてくれた。
本当なら魔王様と話すことも叶わなかった卑しい俺を、ディニス様はとても可愛がってくれた。
だがそんなディニス様も俺が成長するにつれて距離を取り冷たくなっていく。自分の醜悪な見た目が原因か、あるいは知能の低さゆえか…
どうにかしてディニス様の愛情を取り戻そうとするが上手くいかず、周りの魔族たちからも蔑まれる日々。
大好きなディニス様に冷たくされることが耐えきれず、せめて最後にもう一度微笑みかけてほしい…そう思った俺は彼のために勇者一行に挑むが…
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる