勇者かける

青空びすた

文字の大きさ
5 / 39

×第三王子

しおりを挟む
 謁見の間、その最奥から王は凱旋した勇者パーティに声をかけた。
「面をあげよ」
 促され顔を上げる仲間たち。自分は王族ということもあり彼らとは別に、父である王の後ろに控えている。

 私が彼らと共にこの国に戻ったのは昨日の昼だった。世界に平和を取り戻し、大陸で一番大きい我が国に報告のためと戻ってきたのだ。彼らはこのあと別大陸にも魔王討伐の報告に向かう。私は、きっと彼らとは共に行けない。

「大義であった。我が国からも貴殿らに褒美を与えたい。何か望むものはあるだろうか」
「望み、ですか?」
 王の言葉に勇者になった彼、カイトは考える様子を見せる。その姿を見るのも最後になるかもしれないと、できるだけ彼に目を向ける。
「あぁ。できる限りのものは用意しよう。我が子たちの伴侶にと、望むのならそれも吝かではない」
 その言葉に隣に立つ姉たちが浮足立つのがわかった。カイトは正に美丈夫と評される容姿をしている。自分が選ばれたら、なんて空想はさぞ楽しいだろう。私にはそんな空想すら難しい。
 その変わりではないけれど、あの旅の日々を思い出す。長く困難な旅ではあった。けれど、辛いだけではけしてなかった。

「恐れながら」
 カイトが口を開く。謁見の間にいる全員が彼に意識を向けた。
「第三王子、スターリング様を望みます」
 一瞬耳を疑った。カイトの目はこちらを向いている。私も、目を反らせなかった。
「スターリングを? それは、旅の仲間だからな。積もる話もあるだろう。では今夜はスターリングと共に過ごすと良い」
「いいえ。陛下は先程、あなたの子どもを伴侶にと仰られました。ならば、彼を伴侶に迎えたく存じます」
「あぁ、それは、うむ。確かにそう言ったな。しかし勇者カイトよ。スターリングは息子である。子も望めぬし、どうだ、第一王女カナリアならば貴殿も気にいるのではないだろうか」
 私の隣で姉が綺麗にカーテシーをした。 
「陛下。分不相応なのは心得ております。それでも俺は、スターリングに側に居てほしい」
 王に向けたようで、本当は私に向けられた言葉。カイトの後ろにいるパーティメンバーも呆れたように笑っている。諦めていたのは、どうやら私だけだったらしい。王は父親の目をしながら私を見た。
「スターリングはどうしたい? 申してみよ」
 発言を許可され深く息を吸う。こんな場所で自分の意見を求められることなど無いに等しいので、緊張で喉が渇く。見苦しくない程度に胸に手を当て息を吸った。
「陛下、私は、その申し出を喜んで受けたく存じます」
「そうか」
 王は鷹揚に頷いてカイトに目を向ける。
 カイトは、泣いている。
 ぽかんと、口が開いてしまった。目撃した妹にくすくすと笑われ、恥ずかしくなって口元を右手で隠す。
「貴殿の褒美にはスターリングを贈呈しよう。これは、王ではなく父としての言葉だが、幸せにしてやってくれ。泣くようなことがあれば連れ戻させてもらう」
「……っ、ありがたき幸せ」
 他のメンバーも相好を崩してカイトの頭を撫でた。そのまま一礼して退室する彼らを見送る。仲間たちの褒美はこのあと別で話をするのだろう。

「スターリング」
 王に呼ばれて近づけば、何年も見ていなかった笑顔で私を見ていた。
「どうか、幸せにな」
「ありがとうございます、父上」
 父は頷いて私の頭を一撫ですると王族用の出入り口から退室していった。母に抱きしめられ、姉妹に揉みくちゃにされ、兄たちと握手を交わす。彼らを見送ってから、私ははしたなくも仲間たちの出ていった扉へ走っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【8話完結】帰ってきた勇者様が褒美に私を所望している件について。

キノア9g
BL
異世界召喚されたのは、 ブラック企業で心身ボロボロになった陰キャ勇者。 国王が用意した褒美は、金、地位、そして姫との結婚―― だが、彼が望んだのは「何の能力もない第三王子」だった。 顔だけ王子と蔑まれ、周囲から期待されなかったリュシアン。 過労で倒れた勇者に、ただ優しく手を伸ばしただけの彼は、 気づかぬうちに勇者の心を奪っていた。 「それでも俺は、あなたがいいんです」 だけど――勇者は彼を「姫」だと誤解していた。 切なさとすれ違い、 それでも惹かれ合う二人の、 優しくて不器用な恋の物語。 全8話。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

処理中です...