勇者かける

青空びすた

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×白魔道士

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 視界に入るのは住み慣れた我が家ではなく、遠く離れた村の宿の天井。白魔道士を名乗る私が解呪もできないなんて役立たずにも程がある。

 私がこの呪いを孕んだのは5日前のこと。
 きっかけはよくある話だ。この地の神として祀られていた存在が墜ちた。それを封じる際に呪いを撒き散らした。ブラストや仲間に向かったそれを私はどうにか掻き集めて自らの体内に取り込んだのだ。
 そして今もそれは、私の腹の中を我が物顔で暴れている。

 仲間たちは今頃どうしているだろうか。

 血を吐きながら思いを馳せる。この行動に後悔などない。何度同じ場面が来ても、私はきっと彼らを助けるだろう。ただ、惜しむらくは彼らと共に行けなくなることだろうか。
 昨日仲間に告げたのは、解呪には1年以上かかるだろうことと、ここでお別れだということ。王都まで送ろうと言葉をかけてくれた彼らはなんと善良なのか。それでも私は、彼らを待つ者がいるとわかったような顔で諭し見送った。

 本当は一緒に行きたかった。死ぬまで隣を歩きたかった。

 それが勇者と称されるブラストの重荷になることは重々承知していて、最後まで言葉はヘドロのように胸にこびりついた。醜く笑った私のことを彼はどう思っただろう。
 再会を約束して、彼らは旅立った。私はただ待つことを良しとせず、王都に戻る決心をした。
 ごぽり、また血を吐く。血の中に浄化した呪いを混ぜて、少しずつ体外に押し出すのだ。赤や青といった結晶はまるで宝石にも見える。

 少し眠ろう。体力を回復して、明日は乗合馬車に乗せてもらおう。王都にある自分の家なら何も気にせず解呪だけに専念できる。
 目を閉じて、暗い、暗い闇に身を投げた。

「カーム」
 優しい声がする。この声を私は知っている。
「カーム、起きて」
 髪をすかれながら心地よい声に導かれる。薄っすらと瞼を持ち上げれば思ったとおり、ブラストがそこにいた。
「ぶらすと」
「喋らなくてもいい。頑張ったね」
「なんで」
「お水飲む? はい」
 差し出された水差しを口に含む。こちらを伺いながらゆっくりと傾けられ、促されるままにそれを嚥下した。支えられて体を起こし、寝具に腰掛ける。
「なんで、ここに」
「馬鹿だなぁ。カームを一人にするわけないだろ」
「ばかはそっちだ、ばか。みんなが、勇者を、ブラストを待ってる」
「うーん、それは否定しない。でも俺は、大事な人を見捨てて行くようなことはしないよ」
「それでも、これくらい、私一人でなんとかできる」
 白魔道士の端くれとして。そんなプライドが私を動かす。やっぱり彼の言うとおり馬鹿なのかもしれない。
「それでも側にいさせてよ」
「……勝手にしろ」
「ふふ、ありがとう」
 ブラストは目を細めて微笑む。こんなぼろぼろな姿、見られたくなかったはずなのに何故だか心地良い。


 ブラストと王都に戻ってしばらくしてから、仲間たちが神の呪いを解く方法を見つけて来てくれた。当初の予想を大幅に短くして、私は約3ヶ月で自由の身となった。

「弱ってるカームって新鮮で可愛かった。また看病させてね」
「ばーか」
 正直彼に見られていない部分はないけれど、それでも照れた顔を見られたくなくて、その胸に顔を埋めるのだ。

 死ぬほど望んだ彼の隣を私はまた歩いている。
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