勇者かける

青空びすた

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×孤児

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 寝るのが怖い。そう言って泣くキミのふにふにほっぺにキスをした。キミは大きな目をぱちぱちしてふにゃんと笑った。オレはそれが嬉しくて、キミの顔中にちゅっちゅとキスをする。キミはくすくすと笑って、お返しにオレのおでこにキスをくれた。怖いものなんて何もない。眠くなるまで手をつないで、同じ毛布で二人で眠る。

 二人きりの狭い世界、彼処には何でもあって、でも空想には限界があった。いつしかオレは広い世界に憧れた。
 英雄の凱旋パレードの広告チラシが、オレたちの住む貧民街にもばら撒かれたのは何日か前のこと。ずっと前に立ち寄った旅人が気まぐれに教えてくれた文字だけで読めたそれを、オレはぎゅっと握りしめる。ネクタリンは心配そうにオレに声をかけた。
「ねぇ、スグリ。本当に行くの?」
「行くよ」
「……ボクはどうしたらいいの?」
「連れて行くよ?」
「え?」
「当たり前だろ。一緒に行こうぜ」
 左手にチラシを、右手にネクタリンの手をしっかり握る。気まぐれな旅人は言っていた。
『右手の方が強いから、大切なものは右手で握れ』
 それを聞いてからオレはネクタリンと手をつなぐのは絶対に右手だ。
 二人で大通りまで走る。途中で何回か誰かの足を踏んづけたり、寝てるネズミを蹴飛ばしたけど、ちゃんと謝ったし、今日だけは関係ない。
 大人の間をくぐり抜けて、目にしたのは盛大なパレード。キラキラしててとても綺麗だった。
「きれいだね」
「そうだな」
「すごいね」
「おう」
「きれいだなぁ……」
 ネクタリンの横顔を見れば、どこかうっとりとした表情で騎士たちを見ている。なんだか面白くなくて、つないだ右手をぎゅっとする。ネクタリンはこてんと首を横にしたけど、ちょっと満足。
 そんなオレに不思議そうな顔をした後、ネクタリンはまたパレードに目を向けた。なんだか、悲しそうな、寂しそうな、そんな目だった。
 今度はちょっと腹が立って、ネクタリンを近くの路地まで引っ張っていく。物陰まで連れて行って、ネクタリンのほっぺを両手で包む。オレしか見えてない。それが嬉しい。もちもちのほっぺを撫でる。
「いつか、大人になったら」
「うん」
「もっとキレイなもの見せてやるから」
「ほんと?」
「ホントだよ」
「へへ、スグリ大好き」
「オレも、ネクタリンのこと大好き」
 それはきっと遠くない未来。一瞬、大草原の中で大剣を背負って青空を見上げる剣士と、右側に立って笑う魔法使いの姿が見えた。
 想像だけでなんて終わらせない。オレはふにゃんと笑うネクタリンの唇に、誓いのキスをした。
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