天空で織り成す恋の幻想曲 ～Blue Sky Fantasia～

第二章 アルテミス魔術学院

朝

朝、見慣れぬ天井が目に入ってきた。

『そうか。ここは天空界だったな』

昨日は、目まぐるしい一日だった。とりあえず、一度死んで生き返ったと錯覚した方が分かりやすいってほどに摩訶不思議アドベンチャーだった。

俺の場合、転生したのではなく転移したのだそうだ。秋葉原から天空都市アルテミスへと転移しただけ。そう、肉体はそのままで、同じ時間軸で、同じ地球上の違う地点にただ移動しただけ。そういうことらしい。

とはいえだ。地上と天空では、あまりに文化が違いすぎる。
まずもって、魔術を使えるって時点でファンタジーだ。

まぁ、説明を聞いても意味が分からなかった。状況を理解しようと試みたが、凡人の俺が理解できるほど簡単な話ではなかった。とりあえず、細胞懸濁液にジメチルスルホキシドやグリセリンなどの凍害保護剤を添加し、冷凍機中で凍結する方法でも何でも構わないので、一旦脳は凍結保存しておいた方が俺の身のためだと思った。天空都市だの、誓約《ゲッシュ》だの、魔術だの、突然専門用語をフル活用で初見の素人に説明しても理解できるわけがない。よくぞ、訳が分からないながらも現実を受け入れて一日を過ごしきったと思う。
まぁ、脳がパンクしてショートする前に現実を受け入れられたのも、その後の展開が影響した。いきなり物理的な、いや魔術的な意味で美少女と結ばれたのだ。その後も美少女が次から次へと現れて、俺の脳もここぞとばかりに活性化することになる。間違いなく人生最大のモテ期が到来している。

そんな、脳ミソ天国状態で目が覚めたわけだが、いきなりの大波乱が俺を襲う。

"フニャッ"

あぁこれは、例のヤツです。しかも、アレカさんのより大きいです。

いつの間にか隣で抱きついて寝ていたセレナ。明らかに故意だし、ちょっと反応に困る。

すると、気づいたらドスのきいた笑顔で仁王立ちのアレカが目の前に立っていた。

横っ腹を無言で蹴っ飛ばして行った。すげぇ痛いけど、ちょっと助かった。

"ぷしゅん"

蹴られた数分後には、アレカの元に転移していた。着替えの最中に出現してしまって、もう一発凄いのを食らう羽目になったことは言うまでもないだろう。