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第十二話 麒麟の鈴
しおりを挟む天塚桃李
出立の儀式まであと3時間。
「ふ...っ、ん、んぅ」
畳の上に真っ白な肌襦袢をはだけさせ真っ白なレース仕立ての下着が曝け出されていた。
「まだヤるか?」
「イヤ、だれが白無垢なんか、着るか、んむ...ふぅ」
「強情だな。だが、お前がこれを着るというまで俺も譲る気はない。」
波打つ銀髪と吊り上がった銀の瞳の男が今、桃李の唇を責め立てている。
「なんで、男が...っ、んむ、白無垢着るんだよっ、!」
「意外とバカなのか。そんな事、お前が俺たちに嫁ぐ日だからに決まってるだろ。」
「イヤだっ、俺も袴で出...、るぅ、んんっ」
「あんまり駄々を言うならこの場で抱くぞ。」
「ひ...っ、」
義栄の堅い声がからかうような声が耳と背を駆け抜けた。
「俺の声で感じたのか?」
「うるっ、さい!」
「抱いて良いと言え。俺の声が気に入ったか?」
ーーー言えよ桃李
「ぁ、あ...やだぁ、耳舐めんな...っ、」
「俺たちは飢えてる。お前が居ないたった20年の間、お前の味を何度も思い出した。抜け駆けして摘みに来る程な。」
「変なとこさわんなっ、」
「お前は、俺たちの至宝だ。俺たちの血肉で心だ。仙桃で気は浄化されても、俺たちの血肉にはならず、俺たちの心は満たされない。」
「は、ぁ、ぁ♡」
義栄の逞しい腕が背後からするり、と回された。
肩と腰にしっかりと絡んだ腕は不意にぎゅっ、と絡みつく。
「義栄...、?」
それは抱擁だった。
捉えた腕の中に桃李が居ることを全身で確かめている。
二メートルはある義栄の長身に、決して身長が低い訳ではない桃李だが。その身は腕の中にすっぽりと収まってしまった。
ーーー俺が悪いみたいじゃねーか。
「白無垢は女が着るもんだろ。男の俺が着て似合う訳ねぇ。」
こんな風に愛おしげに腕に閉じ込められて。
言わない訳にはいかなくなった。
「じーちゃん達に無様な姿は見せたくないんだ。」
「その為のアイツだ。」
「え?」
「アイツに任せろよ。前だって完璧にお前を着飾ってたのはアイツだろ。男だ女だ細かい事は気にするだけ無駄だ。」
桃李はグリグリ身を捩り首を後ろに向けた。
少しだけ溶けた視線が義栄の銀の瞳と合わせる。
「友康には無理だ。アイツすげー不器用なんだぞ?」
そう、間違いない。
アイツはリボン結びだって怪しい。
"アイツの靴はいつも縦結びだからな。"
「なんだ知らないのか?
おい、麟!お前何故話していない?」
義栄は隣の部屋で待つ友康に声をかけた。
駄々を捏ねる俺を見かねて通り掛かりの義栄を捕まえたのはコイツだ。
と、いうか待て。
俺のあんな声やこんな声をコイツ隣の部屋で聞いてやがった、!?
「言うタイミングが無くてね。」
眉を下げて言われても誤魔化されないぞ。
「お前、趣味悪過ぎんだろ」
「しょうがないだろ、お前がグチグチ言って駄々をこねるからこうして、摘み食いワンチャンの旦那さんに来てもらったんじゃないか。」
「クソヤロウだなお前。」
「ワガママだねお姫様。」
ああ言えばこう言う。流石悪友。
桃李の祖父母を除けば、コイツが一番付き合いが長いのだが、最近のコイツには驚かされてばかりだ。
何せ隠し事ばかりだ。
自分の名前のビールが好きな本物の麒麟の秘密とは何なのか。
それはさっき義栄が友康の事を"りん"と呼んだ事と関係してるのか。
「お前、まだ何か隠してんのか。」
「それは今から説明する。どうせ、白無垢を着せるときに話すつもりだったんだよ。不器用な僕では着せられないからね。」
「ほらな!聞いたかよ義栄、こいつスゲー不器用なんだよ。」
「お前こそ説明を聞いといた方が良いぞ。」
得意げな表情で桃李が、またもや首を捩り背中の義栄を見上げる。
その仕草が義栄に我慢を強いられている事を桃李は知らない。
「麒麟の、麒はオスの麒麟。麟は、メスの麒麟の事を言うんだ。」
「へぇ。」
「でも、世界に存在する麒麟は僕ひとりしか居ない。では一体何故、僕を"麒麟"と言う?」
「なぞなぞか?」
それぞれの種のオスとメスの総称で、ヒトやイヌ、ネコの様にキリン、と言うものがあってもおかしくはない。
それなのに、麒麟にはオスとメスの区別はあるが。
コイツしか存在しないことになっている。
そして、その名前にはオスとメスが入っている。
「雌雄同体、ってやつか?」
それは1つの身体にオスとメスどちらともの生殖器をもっている動物を表す言葉だった。
「流石。頭いいねぇ桃李。天才だよ。」
「バカにしてんのか?」
「いいや?ただ、お前の賢さには一目置いてるんだよ。でも、残念だけどその答えではサンカクだね。何故なら、僕らは、雌雄異体でありながら、雌雄同体の生き物であるのだから。」
「は?」
「種明かしなら、さっさとやれ。」
焦らしに焦らした挙句、謎の日本語まで言い放った友康に桃李は最早付いていけない。
だが、痺れを切らしたのは義栄も同じらしく、二人の圧に
友康は参った、と肩をすくめた。
「よく見てて、桃李。」
「あぁ。」
「せーーーの、!」
ポンっ。
まるでワインのコルクが抜ける様な
軽やかな、間抜けな音が鳴った。
同時に、ピンクの煙幕が立ち上がり視界が奪われた。
もくもくと漂う煙はやがて晴れた瞬間、目を疑った。
「増えて、る!」
しかも、美女!女の子!
「よく見てみろ、桃李。」
「え?」
友康の隣の美女は、ふふふと桃李に優しく微笑んでいる。
だが、義栄が言うので彼女をしっかりと観察させてもらうと、その目元が友康によく似ていることに気付いた。
「紹介しよう、親友よ。この美しい少女は僕の妹で、僕の最愛の妻。麒麟の麟で、名前は鈴だ。」
麒麟の麟で名前が鈴。きりんりん さん。
"樹木希林かよ。あの人好きなんだよな。胸が熱くなる。"
「あの、宜しくお願しますね桃李さん。」
その名の如く正しく彼女は、鈴の音の様に澄み切った凛とする綺麗な声で思わず聴き惚れてしまったのだが、ひとつヤバい事に気付いた。
警察呼んだ方が良いかも知れん。
「友康、お前妹と結婚したのか。犯罪だぞ。」
「言うと思ったよ。正確には、麒麟として先に僕が創られ、次が彼女だった。天帝は僕らを全ての子供の命の象徴として、1つの体を共有する夫婦を創ったのさ。」
「麒麟は子宝の神様って事か。何でも有りだな天帝様。」
「お前だってそうじゃないか。龍の至宝で桃のお姫様。」
「悪いかよ。」
クスクスと、凛が笑った声がした。
「私の事は麒麟でも、麟でも鈴でも構いません。好きな様に呼んでください。」
「俺は桃李でいいよ。でも、なんで響は同じくせに鈴でりんなんて名前にしたんだ?普通にすず、で良いんじゃねーの?」
「ダメだ、せっかくなんだから樹木希林みたいな 名前がいいと思って僕が付けたんだからな。」
ーーー類は友を呼んだらしい。
「つーか、なんでお前は友康なんて名前なんだ。」
「お前のおじーさんが付けてくれたんだ。友を思い健やかに育ちます様にってな。良いだろう。」
「その割にはよく殴り合いしたよな?」
「因みにコイツは俺たち四龍とほぼ同格だ。昔は五龍と呼ばれた事もあったが、こいつはその中でも別種だ。」
「あの、そろそろ支度した方が良いのでは?」
この数分で1番賢明な判断だ。
「鈴に任せて、白無垢を着るんだよ桃李。
心配する事はないさ、とびっきりの美人に仕上げてくれる。晴れの姿を見せてやらなきゃ。 」
「分かった、やるよ。鈴、渋々でごめんけど煮るなり焼くなり好きにやってくれ。」
ふふ、っと微笑んで鈴が言う。
「煮たり焼いたりしませんけれど、絶世の美女にしてみせます。」
「義栄は出て行けよ。」
「味見美味かったぞ。」
「バカっ、!」
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