【完結】【R18】池に落ちたら、大統領補佐官に就任しました。

mimimi456/都古

文字の大きさ
46 / 78
第一章:キハラ トキアキ

第七話_前篇

しおりを挟む
勿論、意思のすり合わせは出来ていた。
熱が出て眠りこけても、毎晩様子を見に来てくれたエルに言ったんだ。


「俺は、ちゃんとここでやって行くよ。」

だって、俺はあんたの為に此処に来たんだから。
俺はあんたの片割れだから、大統領の片割れとかびっくり過ぎて怖いけど。俺に帰る手段はないから安心して良い。あんたを置いて行ったりはしない。

そう言ったんだ。

「ありがとう、トキ。」

エルだって了承した。
この通り、小難しい書類も何とか読める様になったし、大統領の秘書室で働けるまでになった。

俺のロードマップは順調だ。

ただ、ひとつを除けば。

一応、俺たちは番という風になっているらしい。
勿論、結婚も出来る。しかも妊娠出来る。

男の俺でも、だ。

そこで一つの問題が生じた。

そう。俺は男に抱かれた事が無い。
というか、女の子の方が良くないか。
柔らかくて、良い匂いがして、小さくて可愛いだろ?

俺なんか、ゴツくは無いけど柔くも無いし可愛くもないし。
良い匂いかどうかは知らんが毎日、シャワーは浴びてる。

「番は良いよ、トキ君。」

秘書仲間のユディール君は言う。
彼は人間だが、この国に住む人間だ。

神話を子供の時から聞いて、自分にも鳥がやって来る日を心待ちにしていたそうだ。

代わりにやってきたのは、猫の亜人だった。
しかも御遣いの鳥を連れて。
成程。迎えに来られた側だった訳だ。

それでポンとお嫁に行ったユディール君は、相手が男でも女でも関係ないでしょ、と言う。

「この国で、人と獣が愛し合うのに必要なのは、それが自分の‘‘右腕’‘か’‘左腕’‘かだけだよ。」

神話で孤独な獣で人型を持った神様は、
自分の腕を裂いてその血と魂を二つに分けた。

右腕を裂いて人間を、左腕を裂いて獣を。

元々一つの血と肉を割くのはどれだけ痛かっただろう。それでも孤独という永遠の前には、何れ出逢うという可能性はとても眩しい希望に見えたのだろう。

だから、この国で獣人や亜人は自分の大切な人間を敬意を込めてこう言う。

ーーー私の’‘右腕’‘と。

だが。
俺はまだきちんと言ってもらっていない。
一度だけ、ユディール君と遊んでいたのを咎められて。
その時に聞いたくらいだ。

それでも、俺はまだ満足出来ずにいる。
俺に、‘’右腕‘’だと言わせる何かが足りないのか。

ーーー誰か、教えて欲しい。

そんな俺の心中を察したのは、やはりユディール君だった。

「これ、あげるよトキ君。」

「ん?何これ?」

「マ・タ・タ・ビ」

「はああ!?」


そうか。ユディール君の旦那さん、猫だったな。
俺は見た事ないけど警察官らしい。
多分。パトロールに余念が無いのだろうか。

「それ、すっごい効くんだから。」

「何に効くんだよっ、!」

「決まってるじゃん。夜にだよ。」

掌ほどの大きさの茶色い瓶に、またたびの枝が3本入っていた。

「これの蓋を開けて、ベットボードとかに置いておくと良いよ。」

物凄く良い笑顔で言い放ったユディール。
お前これを大統領に盛れってか。

「違うよトキ君。トキ君は‘’旦那さん‘’に元気になって欲しいだけだよ?」

「いやいや、その相手が大統領だって言ってるの!?」

「じゃあ、秘書の旦那だったら使う?」


俺は無言を貫いた。
けど、ちょっとだけ。
ほんのちょっとだけ、騙される事にした。

確かに。俺は、肩書きに拘り過ぎていたのかも知れない。もし、相手が同期だったなら。普通のサラリーマンだったら、もっと。

踏み込めるのかも、知れない。

いや、そうか?

いいや、そうだ。

じゃなけりゃ俺に魅力が無いんだ。
それは申し訳ないけど、俺にはどうしようもない。

でも。未だに清い付き合いを行なっている。
あまり大きな声で言えたことではないが、所謂、本番行為の様なものがまだだ。

「本番、本番... 」

俺が思考のループを止められない間。
ユディールはこっそり俺の鞄にマタタビを滑り込ませていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...