61 / 78
第二章:大統領補佐官
大統領とブランデーサワー1
しおりを挟む
今日だけは、
なんとしても今日だけは18時までに上がる。
その為に皆の年末進行をかなり早くから掛けた。
準備も改革もかなりやった。
だから今年はもう仕事はしなくて良い!
結果、話題になる程やり過ぎたとしてもだ。
俺が補佐官になって、会議が増えた、仕事が増えた、それから。
廊下を走るヤツが増えたと聞くようになった。
最後のは、一瞬考えたよな。
廊下のど真ん中に黄色いビニールテープでも貼るか、って。
常々思ってたんだ。
真ん中を広がって歩く奴が邪魔で、何度イラっとした事か。
流石に補佐官になってからは、向こうが気付いて道を譲ってくれるようになった。
けど、それじゃ意味が無い。
「走るの禁止、と会議で申し付けては?」
「それがさ。どうも、下まで辿り着いてないみたいなんだよな。」
「何故、分かるんです?」
「この前の...」
一部、一定数居る会議に出るだけ、議事録を回すだけの奴が居る。
周知徹底をさせて欲しいんだが。
「あぁ、成程。それでわざわざあそこに寄ったんですね。」
「そう。あそこに来た子達はあの時間、あそこが封鎖されるって知らなかった。おかしいよなぁ。俺、5回も会議に挙げたんだけどな。」
最初の3回は会議終了前に、後の2回は会議始まって真っ先に言ったんだよ。
「掲示場所に貼ってみ、るのも無駄ですね。」
「そう。誰も見やしない。俺だってわざわざ見に行こうとは思わないよ。」
「それより、他の所は大丈夫そう?」
「この半年で、平均してトキ様が終わる1時間半後には大体、皆終わるという統計が出てますよ。」
「なんで俺基準なの?」
「貴方の仕切りで動いてるからですよ大統領補佐官殿。」
ニコッと笑うユディール君は俺に甘い。
俺の仕切り、というのも間違いじゃない。
これくらいの猶予があれば、ここまで終わるだろうという目測で指示を出してる。
確かに、俺の仕切りだけど。
「なんか悪い組織を牛耳ってるみたいだな。」
「ふっ、その時は優秀な秘書も連れて行って下さいね。」
「それは良い案だけど、お互い夫の居る身だろ?」
「そうでした。ふふっ、懐かしいですね。」
顔の綺麗なイケメンが笑うと、空気が浄化される気がする。
仕事中は敬語を維持してる癖に、退勤するとすぐタメ口になるんだよ。
俺知ってる。これ、ギャップ萌えって奴だ。
そして閃いた。
やっぱりヤろう。
今、ヤろう。
「よし、ちょっとごめん。あそこの部署に絵が上手い子居たよね。ちょっとこれ45分で描けるだけ描いてもらって。断っても良いよって言ってね。流石に急過ぎるから。」
「え、承知しました。」
「何か仕事してたら他に割り振って。デスク居ずらかったらここに呼んで良いからさ。命令。至急の。」
「あと15分でユディールはこっちを手配。出来そう?」
「勿論。」
ーーーーー
「あ、の、補佐官殿。何をなさっておいでなのですか。」
恐る恐ると言った感じで声を掛けてくれたのは、この前閉鎖区画を通りかかった子達だった。
新卒で今日までよく頑張ってる。偉いなぁ。まだスーツに着られてるのが初々しいなぁ。
「シール貼ってる。どう?可愛い?」
「可愛いです。」
「可愛いです、柄が違うのもありますね!」
「この矢印は何ですか?」
おや、なかなか目敏い。
「ちょっと向こうから歩いてみて。好きな様にね。」
フレッシュマンは素直に返事をして、廊下の端からこちらへ歩いて来る。
三人がそれぞれ、壁に貼った猫のシールを見ながら。
「良いね。」
側に戻るなりそう言われてポカンとする三人が可愛過ぎて、ついネタバラシをしてしまう。
ごめんね、上司の話に付き合わせちゃって。
「君は二人とは反対の壁を見てたね。」
「はいっ!」
「それで視線と肩が、後ろを向いた。」
「はいっ!」
「そして君たち二人はこの壁の矢印通りにこっちを歩いて来た。」
「はい。」
「それは何故?」
「猫が、可愛かったからです。」
「矢印が有ったからです。」
「正解。」
三人が三人とも同じタイミングで首を傾げた。
可愛いな。新人。
「視線誘導だ。君たちはこの可愛い猫の上に描かれた矢印に釣られて、視線、そして身体を誘導された。俺たちは無意識に沢山の情報を拾って、処理してる。誰かの機嫌や、気温、周囲のちょっとした変化等だ。」
「これに一体、何の意味が有るんですか。」
「最近、廊下を走るひとが増えてるって聞いて。事故防止だよ。駄目ならもっと無骨な手を考えてるんだけど、これなら可愛いだろ?他に、質問がある人。」
「はいっ!」
「何かなフレッシュマン。」
「失礼ながら、効果は一時的の様に思われますが如何でしょうかっ。」
尤もな意見だ。
それを言える所が凄いぞ。元気だな。良いなー。
「なにをやっても万人にウケる策は無いが、手始めにデータを取る。この猫シールで改善が見えればそれを踏まえて廊下は走らない様にと、周知させるネタになる。それでも改善しなければ、あるいは一時的だった場合にはそれを理由に再度周知、更に別の策を試す予定だけど。どうかな、答えになってる?」
「なって、ますっ。」
手伝います、と三人組がワンフロア左右の壁に猫を貼る手伝いをしてくれた。
お陰で30分で終わった。
「仕事は終わり?もう帰る?」
「はいっ!」
「ご飯食べてく?」
「い、良いんですか!?」
「他に予定が無ければ食べて欲しいな。シール貼りの手伝いとお手本になってくれたお礼。」
「やった!補佐官殿のご飯、食べてみたかったんです!」
「い、いつも上役の方が沢山居て、とてもじゃないけど俺達が行ける雰囲気じゃなくて。」
「ありがとうございますっ!」
なんとしても今日だけは18時までに上がる。
その為に皆の年末進行をかなり早くから掛けた。
準備も改革もかなりやった。
だから今年はもう仕事はしなくて良い!
結果、話題になる程やり過ぎたとしてもだ。
俺が補佐官になって、会議が増えた、仕事が増えた、それから。
廊下を走るヤツが増えたと聞くようになった。
最後のは、一瞬考えたよな。
廊下のど真ん中に黄色いビニールテープでも貼るか、って。
常々思ってたんだ。
真ん中を広がって歩く奴が邪魔で、何度イラっとした事か。
流石に補佐官になってからは、向こうが気付いて道を譲ってくれるようになった。
けど、それじゃ意味が無い。
「走るの禁止、と会議で申し付けては?」
「それがさ。どうも、下まで辿り着いてないみたいなんだよな。」
「何故、分かるんです?」
「この前の...」
一部、一定数居る会議に出るだけ、議事録を回すだけの奴が居る。
周知徹底をさせて欲しいんだが。
「あぁ、成程。それでわざわざあそこに寄ったんですね。」
「そう。あそこに来た子達はあの時間、あそこが封鎖されるって知らなかった。おかしいよなぁ。俺、5回も会議に挙げたんだけどな。」
最初の3回は会議終了前に、後の2回は会議始まって真っ先に言ったんだよ。
「掲示場所に貼ってみ、るのも無駄ですね。」
「そう。誰も見やしない。俺だってわざわざ見に行こうとは思わないよ。」
「それより、他の所は大丈夫そう?」
「この半年で、平均してトキ様が終わる1時間半後には大体、皆終わるという統計が出てますよ。」
「なんで俺基準なの?」
「貴方の仕切りで動いてるからですよ大統領補佐官殿。」
ニコッと笑うユディール君は俺に甘い。
俺の仕切り、というのも間違いじゃない。
これくらいの猶予があれば、ここまで終わるだろうという目測で指示を出してる。
確かに、俺の仕切りだけど。
「なんか悪い組織を牛耳ってるみたいだな。」
「ふっ、その時は優秀な秘書も連れて行って下さいね。」
「それは良い案だけど、お互い夫の居る身だろ?」
「そうでした。ふふっ、懐かしいですね。」
顔の綺麗なイケメンが笑うと、空気が浄化される気がする。
仕事中は敬語を維持してる癖に、退勤するとすぐタメ口になるんだよ。
俺知ってる。これ、ギャップ萌えって奴だ。
そして閃いた。
やっぱりヤろう。
今、ヤろう。
「よし、ちょっとごめん。あそこの部署に絵が上手い子居たよね。ちょっとこれ45分で描けるだけ描いてもらって。断っても良いよって言ってね。流石に急過ぎるから。」
「え、承知しました。」
「何か仕事してたら他に割り振って。デスク居ずらかったらここに呼んで良いからさ。命令。至急の。」
「あと15分でユディールはこっちを手配。出来そう?」
「勿論。」
ーーーーー
「あ、の、補佐官殿。何をなさっておいでなのですか。」
恐る恐ると言った感じで声を掛けてくれたのは、この前閉鎖区画を通りかかった子達だった。
新卒で今日までよく頑張ってる。偉いなぁ。まだスーツに着られてるのが初々しいなぁ。
「シール貼ってる。どう?可愛い?」
「可愛いです。」
「可愛いです、柄が違うのもありますね!」
「この矢印は何ですか?」
おや、なかなか目敏い。
「ちょっと向こうから歩いてみて。好きな様にね。」
フレッシュマンは素直に返事をして、廊下の端からこちらへ歩いて来る。
三人がそれぞれ、壁に貼った猫のシールを見ながら。
「良いね。」
側に戻るなりそう言われてポカンとする三人が可愛過ぎて、ついネタバラシをしてしまう。
ごめんね、上司の話に付き合わせちゃって。
「君は二人とは反対の壁を見てたね。」
「はいっ!」
「それで視線と肩が、後ろを向いた。」
「はいっ!」
「そして君たち二人はこの壁の矢印通りにこっちを歩いて来た。」
「はい。」
「それは何故?」
「猫が、可愛かったからです。」
「矢印が有ったからです。」
「正解。」
三人が三人とも同じタイミングで首を傾げた。
可愛いな。新人。
「視線誘導だ。君たちはこの可愛い猫の上に描かれた矢印に釣られて、視線、そして身体を誘導された。俺たちは無意識に沢山の情報を拾って、処理してる。誰かの機嫌や、気温、周囲のちょっとした変化等だ。」
「これに一体、何の意味が有るんですか。」
「最近、廊下を走るひとが増えてるって聞いて。事故防止だよ。駄目ならもっと無骨な手を考えてるんだけど、これなら可愛いだろ?他に、質問がある人。」
「はいっ!」
「何かなフレッシュマン。」
「失礼ながら、効果は一時的の様に思われますが如何でしょうかっ。」
尤もな意見だ。
それを言える所が凄いぞ。元気だな。良いなー。
「なにをやっても万人にウケる策は無いが、手始めにデータを取る。この猫シールで改善が見えればそれを踏まえて廊下は走らない様にと、周知させるネタになる。それでも改善しなければ、あるいは一時的だった場合にはそれを理由に再度周知、更に別の策を試す予定だけど。どうかな、答えになってる?」
「なって、ますっ。」
手伝います、と三人組がワンフロア左右の壁に猫を貼る手伝いをしてくれた。
お陰で30分で終わった。
「仕事は終わり?もう帰る?」
「はいっ!」
「ご飯食べてく?」
「い、良いんですか!?」
「他に予定が無ければ食べて欲しいな。シール貼りの手伝いとお手本になってくれたお礼。」
「やった!補佐官殿のご飯、食べてみたかったんです!」
「い、いつも上役の方が沢山居て、とてもじゃないけど俺達が行ける雰囲気じゃなくて。」
「ありがとうございますっ!」
22
あなたにおすすめの小説
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる