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第四話
しおりを挟む「条件?そうだなぁ、難しくないと良いんだけなぁ、教えてくれるかい?」
マリーは頷いて次の条件を提示した。
1・サミュエル・ヴィーチェは人間に危害を加えてはならない。また、危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
2・私にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、1に反する場合は、この限りでない。
3・サミュエル・ヴィーチェは1と2に反するおそれのないかぎり、私と自分を守らなくてはならない。
「どう?」
条件を提示したマリーはおずおずとにサミュエルの表情を伺ってみる。これは本で読んだロボット三原則とか言うものの真似だが、マリーはこれを使えると閃いた。
サミュエルは少し難しい顔をしたかと思うと、ひとつ頷いた。
「マリーは頭が良いね。これはよく考えられている。でもぉ、少し欲張りじゃないかなぁ?」
「欲張りじゃないわ。だって“私は外へは行きたく無い”んだもの。この村の外は危険でいっぱいなのよ。それなのに私を旅へ連れていきたいのなら、それ位してくれないと…私、あなたとは行かないわ。」
「そうだねぇ。俺は此処を出てマリーと旅がしたい。マリーは面白い子だし俺の命の恩人だし。頭も良い。そうだねニンゲンは弱い生き物だから。これくらいは必要かな?お礼はケチケチしたらイケナイよねぇ。」
うんうん、とマリーも頭を振って見せる。
「よし、決めたぁ!マリー、俺と一緒に国中を旅しよう!ちゃんと条件は全て飲むよ。これは俺を助けてくれたお礼だからねぇ。どうかなぁ、マリー?」
「良いわ!その話乗った!」
「じゃあ、早速行こうか。」
「あ、待ってサミュエル。お母さんにお別れを言わなくちゃ。」
「あぁ、そうだね。俺はこの神父サマの家で待っていようかなぁ。」
「うん!あ、サミュエル!」
「なんだいマリー?」
「神父様を傷つけちゃダメだからね!」
「くっ、ふふ、心配性だねマリー。分かってるよ。僕は紳士なんだ。ちゃんと条件は守るよ。」
「なら良いの!行って来るね。」
ととと、と駆けていくマリーをサミュエルは手を振ってにこやかに見届けた。
神父は未だ青い顔でその場に突っ立っている。
今度は神父と二人きりの空間でサミュエルは、静かに可笑しそうに口を開いた。
「ニンゲンとはつくづくバカだねぇ。そう思わないかぁ、神父サマ?」
カツカツ、とサミュエルの革靴の音が響く。
サミュエルは抑えていた筈の禍々しい気配を今度は惜しげ無く放出させた。
「そうだぁ、君はさっき何故呪文が効かなかったか分かるか?」
神父は小さく震えながら、首を横に振る。
「そうだろうなぁ。そうだろうとも。お前ら偽善者に俺たちの“愛”が分かる筈がないものなぁ。その悪魔祓いの呪文は、完全な愛の前では、可哀想に糞の役にも立たないんだよ。」
はぁあ、とサミュエルが熱い堪えきれない程のため息をついた。
「これは、愛だよ神父サマ!俺は生きてこの方あんなに魂の美しい少女を見たことがない。あぁ、ぁぁああ、早く、早くあの魂が欲しいなぁ。」
サミュエルはくるん、と踵でその場を回る。
「早く大きくならないかなぁ。彼女はきっと美人になるよぉ。この国は18で成人だろう?そしたら俺はマリーと結婚して、毎晩愛し合って、子供をたぁくさん作って大きくなるまで育てるんだ。彼女との日々はきっと素晴らしいに違いないよねぇ。それから、彼女が死の床に着いたその時に。
俺はその魂を、少しも残さず食らい尽くしたいのさぁ。」
ニィ、とサミュエルは大仰に笑った。
「これ以上、俺の邪魔をしないように。お前とはここでお別れだよ神父サマ。」
「な、ぜ…さっきマリーと約束して、」
「あぁ!まさか!分からないのか?バカめ!」
腰を抜かした神父にサミュエルは、小声でそうっと優しく教えてあげる事にした。
これが今生最期の会話になるのだ。
ーーー最期くらい優しくしてあげるのが、紳士だろう?
「あれは、この村を出てからの約束だぁ。此処で今、お前が死んでも俺は条件を破ったことにはならないのさぁ。だからやっぱり。お前とは此処でお別れだよ神父サマぁ。」
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