【完結】【R18】沼に落ちたら恋人が出来ました。

mimimi456/都古

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第十七話

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「ハーーッ!?」

此処は何処だ。
何が、どうなった。
ぜぇっ、と息を吐いて閉じていた瞼を開く。


「えぇやばあ。ここおみくじあるよ!」

「まぁじかよ、こんなボロ神社に来るやつ居るんだなっ」



ウソ だ ろ


この会話、俺、覚えてる。
さすがに神社にボロは失礼だろと思ったんだ。確か。それで。

「引こうよぉ、おみくじ!」

「ったく、いくら出すンだよ。ちゃんと俺の分も引けよ。」


首がギギギ、と軋む音がした。
俺はぎこちない動きで、声のする方を見た。

「やったー!大吉だって!」

その女はイケイケギャルな姉ちゃんで、その隣の兄ちゃんはほら、来た。

「てめぇ、何見てンだよ」

「あ、いや、すみませんっ、」

「ヘコヘコ鬱陶しいツラぁ見せてンじゃねぇ。」

肩を怒らせて、大股で歩いてくるヤンキー。
やっぱりそうだ。
俺をボコって沼に落とした奴だ。

どうする、
どうする俺っ、!?

でも。

なぁ... ... 待てよ俺。

アイツもしかして青海より細くないか。
しかも青海より全然筋肉が無い。

何より一眼見て分かった。
アイツ、絶対青海より弱い。


「なンだ逃げねぇのかよ?上等じゃねぇか、避けれるもンなら避けてみろよヒョロガキぃ、!」

喧しい声で大きく振り被った男のガラ空きの右サイド。
そこにダッシュして入り込み、背中を引っ掴んで足を払った。

呆気ない程容易くドサッと男は倒れた。
当然だ。
バランスを崩した所に肩を押し付けて地面に落としたんだから。
さっと立ち上がった俺に男が足を開いて転がったまま叫ぶ。

「コノヤロオッ、」

「一々絡むなよ。それともまだやるのか。」

「なンだと、」

派手に転んだ男は、大層な尻もちをついても女の手前、と。
ヒョロっちい俺に足を払われたくらいじゃ、逃げられないらしい。

ご立派な見栄だな。糞食らえ。

さてどうしようか。
俺が習ったのは徹底的に避ける動きだけ。
けど、青海ならきっとやり返せと言う筈だ。

なぁ。やっぱり、青海居たよな。
俺の勘違いなんかじゃないよな。夢、オチなんてそんな馬鹿な話があるかよ。
俺は妄想の人間のお陰で、コイツに一発噛ませたって言うのか。


もう一度、構えた。
男を見て、どう躱そうかと思ったその時。

砂利を踏む音がした。

「これは何事でしょうか。」

「なンだよオッサン、!誰だテメェ」

「私はこの稲置神社の神主をしております。」

「ァア?」

「この神社で喧嘩はお辞め頂きたい。そちらの方も連れてお引き取りください。」

男は女の手を乱暴に引いて、お前のせいだぞと文句を言いながら去って行った。
俺は、俯いたまま顔を上げられずに居た。

だって。
同じ声だ。
同じ匂いがするし、俺はこれが青海じゃなかったら耐えられない。

だって、俺はアイツの

「私を覚えていらっしゃいますか、マツリ様。」

「お、ぼえてる、」

「私の名が分かりますか。」

「青海っ、」

「あなたは、榊 鱗太郎。」

それでも尚、地面を見詰める俺は意気地なしだ。
だって本当に青海なら、その話し方はなんだよ。

「俺が知ってるあんたは、そんな喋り方はしないんだよ。」

だからもし、何か、俺が知ってる青海じゃないのなら。
俺は早く此処から立ち去ってしまいたい。
だって、こんなの酷いだろ。稲置さま。

「顔が、見たい。鱗太郎。」

ボロッと、涙が出た。
ボロボロ落ちて、砂利の色を変える。

「ひ、っう、」

鼻水もヤバい。

「鱗太郎。」

砂利の音が3回響いて、見えた草履で距離が分かる。
いっそ顔を上げてしまおうか、そう思ったら。
ひょい、と影が座り込んだ。

「思ったより、若く見えると思う。こっちの生活に合わせて身なりに気を付けているし、言葉遣いも覚えたが。あまり性に合わん。」

「ぷっ、」

「だが、お前が俺をオッサン呼ばわりする訳が分かった。」

さらり、と腕が伸びてきて。
目の前の男はしゃがみ込んだまま俺の左手を握った。

「お前に釣り合う様にした、つもりだ。気に食わんなら好きに着せ替えれば良い。だから、もう一度顔を見せてくれないか。」

左手の人差し指中指と薬指のみが握られて。
それだけでも、目の前の男がかなり緊張しているのが分かる。
俺も、涙と鼻水がやばい。

「良いよ。その前にハンカチ持ってない?」

そっと視界の端から差し出されたチェック柄の黒のハンカチ。
そっか。
今の青海にはハンカチって通じるんだな。
前は、布とか手拭いだったのにな。

目を拭いて、鼻も拭いて遠慮なく汚したハンカチを握って、ほんの少しだった。
少し顔を上げるだけで、俺の恋人は目の前にしゃがみ込んだその人だった。


「どうだ。妙か?」

「妙、ていうか、若い、なっ」

ダメだ、やっぱり俺の知ってる青海だった。
けど、涙がまたダバダバ出て滲んで分からなくなった。
けど、ちょっと若かった。

俺、27だけど、あんま変わらない見た目の青年だったよ。

オッサン何処いったんだ。

「弟が美容にハマってその産物だ。」

まだしゃがみ込んだままの青海は、今度は左手を出してきた。
俺も右手を出して、握って確かめた。

「ほんとに青海だ。」

「あぁ。本物だ。俺も弟も紺様もお前をずっと待っていた。」

「ずっと?」

「そうだ。それより、鱗太郎。」

「うん。」

「抱き締めても良いか。俺も、確かめたい。」

ここはあまり人の来ない神社だ。
そこが俺も気に入っていた。
だから良いよと言って、俺たちは8分くらい抱き締め合って、触れ合うだけのキスを3回した辺りで、これ以上はマズイと二人して固まった所で、神社の奥へ並んで歩いた。

「マツリ様っ、!」

「えっ、!?」

本殿横の横、社務所から駆け寄って来たその人物は、偽巫女だった。

「ニセモノ、?」

「本物ですっ!今度こそ本物の巫女を仰せつかって、こうして巫女服を召しているのです。」

「いや、でもこれ男の娘じゃんっ」

「はいっ、今世で私は話題沸騰の本物の様なのですよっ。」

コスプレを通り越したマジモンの巫女は、古来通り男が女の格好をするタイプの巫女で、その可憐さがテレビに出まくりなのだとか。

「先日もファンが写真を撮りに来て居た。コスプレ会場にしたりして、収益が上がっている。」

青海の口から、カタカナが飛び出したぞ。
コスプレって言ったかこの男。

それより、俺はもう一匹会いたい奴が居る。
この二人が居るなら、きっと、アイツも居る筈だ。

「紺は何処に居るんだ?」

「えっ、」

「あ。」

「何、何だよ。」

偽巫女、いや、今度は本物の巫女か。
えっ、と驚いた表情をした後、青海までもしまった、と言う顔をした。

「口吸い、をと仰っておいでです。」

「またか。」

もしかして。
今度目が見えてないのは、俺の方なのか。

「二人とも見えてるのか?」

「えぇ。」

「何処に居る?」

「先程から、マツリ様の後ろをついて回っていらっしゃるので。つい、もうお済みなのかと。」

俺はガバッと背後を見たが、やっぱり何も見えなかった。
ただの石畳と砂利。

「と、とにかく家へ行きませんか。」
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