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第十七話
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「ハーーッ!?」
此処は何処だ。
何が、どうなった。
ぜぇっ、と息を吐いて閉じていた瞼を開く。
「えぇやばあ。ここおみくじあるよ!」
「まぁじかよ、こんなボロ神社に来るやつ居るんだなっ」
ウソ だ ろ
この会話、俺、覚えてる。
さすがに神社にボロは失礼だろと思ったんだ。確か。それで。
「引こうよぉ、おみくじ!」
「ったく、いくら出すンだよ。ちゃんと俺の分も引けよ。」
首がギギギ、と軋む音がした。
俺はぎこちない動きで、声のする方を見た。
「やったー!大吉だって!」
その女はイケイケギャルな姉ちゃんで、その隣の兄ちゃんはほら、来た。
「てめぇ、何見てンだよ」
「あ、いや、すみませんっ、」
「ヘコヘコ鬱陶しいツラぁ見せてンじゃねぇ。」
肩を怒らせて、大股で歩いてくるヤンキー。
やっぱりそうだ。
俺をボコって沼に落とした奴だ。
どうする、
どうする俺っ、!?
でも。
なぁ... ... 待てよ俺。
アイツもしかして青海より細くないか。
しかも青海より全然筋肉が無い。
何より一眼見て分かった。
アイツ、絶対青海より弱い。
「なンだ逃げねぇのかよ?上等じゃねぇか、避けれるもンなら避けてみろよヒョロガキぃ、!」
喧しい声で大きく振り被った男のガラ空きの右サイド。
そこにダッシュして入り込み、背中を引っ掴んで足を払った。
呆気ない程容易くドサッと男は倒れた。
当然だ。
バランスを崩した所に肩を押し付けて地面に落としたんだから。
さっと立ち上がった俺に男が足を開いて転がったまま叫ぶ。
「コノヤロオッ、」
「一々絡むなよ。それともまだやるのか。」
「なンだと、」
派手に転んだ男は、大層な尻もちをついても女の手前、と。
ヒョロっちい俺に足を払われたくらいじゃ、逃げられないらしい。
ご立派な見栄だな。糞食らえ。
さてどうしようか。
俺が習ったのは徹底的に避ける動きだけ。
けど、青海ならきっとやり返せと言う筈だ。
なぁ。やっぱり、青海居たよな。
俺の勘違いなんかじゃないよな。夢、オチなんてそんな馬鹿な話があるかよ。
俺は妄想の人間のお陰で、コイツに一発噛ませたって言うのか。
もう一度、構えた。
男を見て、どう躱そうかと思ったその時。
砂利を踏む音がした。
「これは何事でしょうか。」
「なンだよオッサン、!誰だテメェ」
「私はこの稲置神社の神主をしております。」
「ァア?」
「この神社で喧嘩はお辞め頂きたい。そちらの方も連れてお引き取りください。」
男は女の手を乱暴に引いて、お前のせいだぞと文句を言いながら去って行った。
俺は、俯いたまま顔を上げられずに居た。
だって。
同じ声だ。
同じ匂いがするし、俺はこれが青海じゃなかったら耐えられない。
だって、俺はアイツの
「私を覚えていらっしゃいますか、マツリ様。」
「お、ぼえてる、」
「私の名が分かりますか。」
「青海っ、」
「あなたは、榊 鱗太郎。」
それでも尚、地面を見詰める俺は意気地なしだ。
だって本当に青海なら、その話し方はなんだよ。
「俺が知ってるあんたは、そんな喋り方はしないんだよ。」
だからもし、何か、俺が知ってる青海じゃないのなら。
俺は早く此処から立ち去ってしまいたい。
だって、こんなの酷いだろ。稲置さま。
「顔が、見たい。鱗太郎。」
ボロッと、涙が出た。
ボロボロ落ちて、砂利の色を変える。
「ひ、っう、」
鼻水もヤバい。
「鱗太郎。」
砂利の音が3回響いて、見えた草履で距離が分かる。
いっそ顔を上げてしまおうか、そう思ったら。
ひょい、と影が座り込んだ。
「思ったより、若く見えると思う。こっちの生活に合わせて身なりに気を付けているし、言葉遣いも覚えたが。あまり性に合わん。」
「ぷっ、」
「だが、お前が俺をオッサン呼ばわりする訳が分かった。」
さらり、と腕が伸びてきて。
目の前の男はしゃがみ込んだまま俺の左手を握った。
「お前に釣り合う様にした、つもりだ。気に食わんなら好きに着せ替えれば良い。だから、もう一度顔を見せてくれないか。」
左手の人差し指中指と薬指のみが握られて。
それだけでも、目の前の男がかなり緊張しているのが分かる。
俺も、涙と鼻水がやばい。
「良いよ。その前にハンカチ持ってない?」
そっと視界の端から差し出されたチェック柄の黒のハンカチ。
そっか。
今の青海にはハンカチって通じるんだな。
前は、布とか手拭いだったのにな。
目を拭いて、鼻も拭いて遠慮なく汚したハンカチを握って、ほんの少しだった。
少し顔を上げるだけで、俺の恋人は目の前にしゃがみ込んだその人だった。
「どうだ。妙か?」
「妙、ていうか、若い、なっ」
ダメだ、やっぱり俺の知ってる青海だった。
けど、涙がまたダバダバ出て滲んで分からなくなった。
けど、ちょっと若かった。
俺、27だけど、あんま変わらない見た目の青年だったよ。
オッサン何処いったんだ。
「弟が美容にハマってその産物だ。」
まだしゃがみ込んだままの青海は、今度は左手を出してきた。
俺も右手を出して、握って確かめた。
「ほんとに青海だ。」
「あぁ。本物だ。俺も弟も紺様もお前をずっと待っていた。」
「ずっと?」
「そうだ。それより、鱗太郎。」
「うん。」
「抱き締めても良いか。俺も、確かめたい。」
ここはあまり人の来ない神社だ。
そこが俺も気に入っていた。
だから良いよと言って、俺たちは8分くらい抱き締め合って、触れ合うだけのキスを3回した辺りで、これ以上はマズイと二人して固まった所で、神社の奥へ並んで歩いた。
「マツリ様っ、!」
「えっ、!?」
本殿横の横、社務所から駆け寄って来たその人物は、偽巫女だった。
「ニセモノ、?」
「本物ですっ!今度こそ本物の巫女を仰せつかって、こうして巫女服を召しているのです。」
「いや、でもこれ男の娘じゃんっ」
「はいっ、今世で私は話題沸騰の本物の様なのですよっ。」
コスプレを通り越したマジモンの巫女は、古来通り男が女の格好をするタイプの巫女で、その可憐さがテレビに出まくりなのだとか。
「先日もファンが写真を撮りに来て居た。コスプレ会場にしたりして、収益が上がっている。」
青海の口から、カタカナが飛び出したぞ。
コスプレって言ったかこの男。
それより、俺はもう一匹会いたい奴が居る。
この二人が居るなら、きっと、アイツも居る筈だ。
「紺は何処に居るんだ?」
「えっ、」
「あ。」
「何、何だよ。」
偽巫女、いや、今度は本物の巫女か。
えっ、と驚いた表情をした後、青海までもしまった、と言う顔をした。
「口吸い、をと仰っておいでです。」
「またか。」
もしかして。
今度目が見えてないのは、俺の方なのか。
「二人とも見えてるのか?」
「えぇ。」
「何処に居る?」
「先程から、マツリ様の後ろをついて回っていらっしゃるので。つい、もうお済みなのかと。」
俺はガバッと背後を見たが、やっぱり何も見えなかった。
ただの石畳と砂利。
「と、とにかく家へ行きませんか。」
此処は何処だ。
何が、どうなった。
ぜぇっ、と息を吐いて閉じていた瞼を開く。
「えぇやばあ。ここおみくじあるよ!」
「まぁじかよ、こんなボロ神社に来るやつ居るんだなっ」
ウソ だ ろ
この会話、俺、覚えてる。
さすがに神社にボロは失礼だろと思ったんだ。確か。それで。
「引こうよぉ、おみくじ!」
「ったく、いくら出すンだよ。ちゃんと俺の分も引けよ。」
首がギギギ、と軋む音がした。
俺はぎこちない動きで、声のする方を見た。
「やったー!大吉だって!」
その女はイケイケギャルな姉ちゃんで、その隣の兄ちゃんはほら、来た。
「てめぇ、何見てンだよ」
「あ、いや、すみませんっ、」
「ヘコヘコ鬱陶しいツラぁ見せてンじゃねぇ。」
肩を怒らせて、大股で歩いてくるヤンキー。
やっぱりそうだ。
俺をボコって沼に落とした奴だ。
どうする、
どうする俺っ、!?
でも。
なぁ... ... 待てよ俺。
アイツもしかして青海より細くないか。
しかも青海より全然筋肉が無い。
何より一眼見て分かった。
アイツ、絶対青海より弱い。
「なンだ逃げねぇのかよ?上等じゃねぇか、避けれるもンなら避けてみろよヒョロガキぃ、!」
喧しい声で大きく振り被った男のガラ空きの右サイド。
そこにダッシュして入り込み、背中を引っ掴んで足を払った。
呆気ない程容易くドサッと男は倒れた。
当然だ。
バランスを崩した所に肩を押し付けて地面に落としたんだから。
さっと立ち上がった俺に男が足を開いて転がったまま叫ぶ。
「コノヤロオッ、」
「一々絡むなよ。それともまだやるのか。」
「なンだと、」
派手に転んだ男は、大層な尻もちをついても女の手前、と。
ヒョロっちい俺に足を払われたくらいじゃ、逃げられないらしい。
ご立派な見栄だな。糞食らえ。
さてどうしようか。
俺が習ったのは徹底的に避ける動きだけ。
けど、青海ならきっとやり返せと言う筈だ。
なぁ。やっぱり、青海居たよな。
俺の勘違いなんかじゃないよな。夢、オチなんてそんな馬鹿な話があるかよ。
俺は妄想の人間のお陰で、コイツに一発噛ませたって言うのか。
もう一度、構えた。
男を見て、どう躱そうかと思ったその時。
砂利を踏む音がした。
「これは何事でしょうか。」
「なンだよオッサン、!誰だテメェ」
「私はこの稲置神社の神主をしております。」
「ァア?」
「この神社で喧嘩はお辞め頂きたい。そちらの方も連れてお引き取りください。」
男は女の手を乱暴に引いて、お前のせいだぞと文句を言いながら去って行った。
俺は、俯いたまま顔を上げられずに居た。
だって。
同じ声だ。
同じ匂いがするし、俺はこれが青海じゃなかったら耐えられない。
だって、俺はアイツの
「私を覚えていらっしゃいますか、マツリ様。」
「お、ぼえてる、」
「私の名が分かりますか。」
「青海っ、」
「あなたは、榊 鱗太郎。」
それでも尚、地面を見詰める俺は意気地なしだ。
だって本当に青海なら、その話し方はなんだよ。
「俺が知ってるあんたは、そんな喋り方はしないんだよ。」
だからもし、何か、俺が知ってる青海じゃないのなら。
俺は早く此処から立ち去ってしまいたい。
だって、こんなの酷いだろ。稲置さま。
「顔が、見たい。鱗太郎。」
ボロッと、涙が出た。
ボロボロ落ちて、砂利の色を変える。
「ひ、っう、」
鼻水もヤバい。
「鱗太郎。」
砂利の音が3回響いて、見えた草履で距離が分かる。
いっそ顔を上げてしまおうか、そう思ったら。
ひょい、と影が座り込んだ。
「思ったより、若く見えると思う。こっちの生活に合わせて身なりに気を付けているし、言葉遣いも覚えたが。あまり性に合わん。」
「ぷっ、」
「だが、お前が俺をオッサン呼ばわりする訳が分かった。」
さらり、と腕が伸びてきて。
目の前の男はしゃがみ込んだまま俺の左手を握った。
「お前に釣り合う様にした、つもりだ。気に食わんなら好きに着せ替えれば良い。だから、もう一度顔を見せてくれないか。」
左手の人差し指中指と薬指のみが握られて。
それだけでも、目の前の男がかなり緊張しているのが分かる。
俺も、涙と鼻水がやばい。
「良いよ。その前にハンカチ持ってない?」
そっと視界の端から差し出されたチェック柄の黒のハンカチ。
そっか。
今の青海にはハンカチって通じるんだな。
前は、布とか手拭いだったのにな。
目を拭いて、鼻も拭いて遠慮なく汚したハンカチを握って、ほんの少しだった。
少し顔を上げるだけで、俺の恋人は目の前にしゃがみ込んだその人だった。
「どうだ。妙か?」
「妙、ていうか、若い、なっ」
ダメだ、やっぱり俺の知ってる青海だった。
けど、涙がまたダバダバ出て滲んで分からなくなった。
けど、ちょっと若かった。
俺、27だけど、あんま変わらない見た目の青年だったよ。
オッサン何処いったんだ。
「弟が美容にハマってその産物だ。」
まだしゃがみ込んだままの青海は、今度は左手を出してきた。
俺も右手を出して、握って確かめた。
「ほんとに青海だ。」
「あぁ。本物だ。俺も弟も紺様もお前をずっと待っていた。」
「ずっと?」
「そうだ。それより、鱗太郎。」
「うん。」
「抱き締めても良いか。俺も、確かめたい。」
ここはあまり人の来ない神社だ。
そこが俺も気に入っていた。
だから良いよと言って、俺たちは8分くらい抱き締め合って、触れ合うだけのキスを3回した辺りで、これ以上はマズイと二人して固まった所で、神社の奥へ並んで歩いた。
「マツリ様っ、!」
「えっ、!?」
本殿横の横、社務所から駆け寄って来たその人物は、偽巫女だった。
「ニセモノ、?」
「本物ですっ!今度こそ本物の巫女を仰せつかって、こうして巫女服を召しているのです。」
「いや、でもこれ男の娘じゃんっ」
「はいっ、今世で私は話題沸騰の本物の様なのですよっ。」
コスプレを通り越したマジモンの巫女は、古来通り男が女の格好をするタイプの巫女で、その可憐さがテレビに出まくりなのだとか。
「先日もファンが写真を撮りに来て居た。コスプレ会場にしたりして、収益が上がっている。」
青海の口から、カタカナが飛び出したぞ。
コスプレって言ったかこの男。
それより、俺はもう一匹会いたい奴が居る。
この二人が居るなら、きっと、アイツも居る筈だ。
「紺は何処に居るんだ?」
「えっ、」
「あ。」
「何、何だよ。」
偽巫女、いや、今度は本物の巫女か。
えっ、と驚いた表情をした後、青海までもしまった、と言う顔をした。
「口吸い、をと仰っておいでです。」
「またか。」
もしかして。
今度目が見えてないのは、俺の方なのか。
「二人とも見えてるのか?」
「えぇ。」
「何処に居る?」
「先程から、マツリ様の後ろをついて回っていらっしゃるので。つい、もうお済みなのかと。」
俺はガバッと背後を見たが、やっぱり何も見えなかった。
ただの石畳と砂利。
「と、とにかく家へ行きませんか。」
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