ドレス愛が止まりませんっ!〜ドレス大好き令嬢のデザイナー生活〜

浦藤はるか

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本編

#3 妹からのドレス

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朝食後1度部屋に戻った私は先程の出来事をサリーに話した。


「まぁ! どうにかならないものかしら......。それでお嬢様はこのあと部屋に行くのね?」

「えぇ断るなんて出来ないし。それにね、ドレスが貰えるのは単純に嬉しいもの」

「お嬢様は新しいドレスを買ってもらう権利を持っているのよ。使ってないだけ。そんな不安げな悲しそうな顔しないで」


あ、顔に出ちゃってたか。もう淑女失格ね。何がこの後待ち受けているか分からないから、きっと上手くいくって心の中で唱えても不安の気持ちが止まらない。


「そうよね。強気でいかなきゃダメね、サリーもついてきてくれる? サリーがいたら私はきっともっと強くなれるわ」

「勿論よ! 私に出来る事は少ないけど......。一緒に行くに決まってるわ」

「ふふっ心強いわ、ありがとうサリー」


そして30分後、ローズマリーの侍女が呼びにきた。コンコンコンッと軽やかなノックの音がする。ついに来た。どんどん私の気持ちは下がっていく。押さえ込んだはずだったのになぁ。


「失礼します。リリアナ様、ローズマリーお嬢様がお呼びです」

「分かったわ」


ちなみにだけど、ローズマリーには侍女が3人もついている。多いよね。まぁ私としてはサリーさえ居てくれたらいいのだけれど。しずしずと廊下を歩いていく。サリーも着いてきてくれることだし大丈夫。暗い気持ちの中で、ドレスが貰えることだけが唯一の救いだ。


「お嬢様、リリアナ様をお連れしました」

「入りなさい」


扉が開くと黒い笑顔のローズマリー。にっこりと弧を描くような口元。こちらも負けてはいられない。
 

「お姉様いらっしゃい、待っていたわ」

「ローズマリー」

「ふふっお姉様の為にドレスをわざわざ用意しておいてあげたんだから。なぁーんとね3着も。ほんっとうに感謝してね」

「まぁありがとう。楽しみだわ」

「ふふっ。さ、持ってきてちょうだい」


どんなドレスがくるのだろうか。単純にドキドキと胸が高鳴る。ローズマリーは本当にドレスをいっぱい持っているから、何を選んでくれたのかしら。この前まで流行っていたあの青系統のドレスとか、綺麗だったなぁ。
しかし、そんな気持ちも一瞬で打ち砕かれる。侍女が持ってきたドレスは全てが想像を絶するものだったのだ。思わず息を飲む。すべてが酷い。こんなの......。

1着目は袖や裾が所々破れているし、糸も出ている。それにスカート部分の上部には広くソースをこぼしたようなシミがある。

2着目はホコリを被っているし色もくすんでいる。長らく放置されていたみたい。それになんといっても胸元にナイフで引き裂かれたような大きな穴があいているのだ。 

そして3着目。私は目に入った瞬間に涙が出てきそうになった。泣くものかと必死にこらえる。


「・・・・・・」

「あらあらお姉様、感激しちゃって言葉が出ないのかしら。それもそうよねぇ。どれもよぉーくお姉様に似合うと思うわ。可愛げのない地味なお姉様にね」


黒い笑みを浮かべながら愉快そうに笑うローズマリー。淑女らしからぬ笑い声。でもそんなことを気にする余裕なんてない。


「どうして...だってこれは...」

「あぁこれわね、借りたままだったからこの機会にお姉様にお返ししようと思って。ね、嬉しいでしょう? 」


にっこりと笑って覗き込んでくるローズマリー。唇を噛み締める。だってこの3着目は大切なお気に入りだった、あの日奪われた私の甘くてふわふわな女の子の夢がつまったドレスなんだもの。悔しくて悔しくてたまらない。


「ちゃんとこの中のドレスを仮面舞踏会に着て行ってよね。わざわざ私が3つもお姉様にプレゼントしたんだから。そうね、ほら2着目のドレスなんてどう?胸元が出ているし、貧相なお姉様でも殿方が集まるかもなぁんてね。うふふっ。仮面舞踏会が楽しみね! じゃあ早く部屋に戻って。私お姉様と違って、エステだったり可愛くなるのにとっても忙しいの」


私は何も言えずにドレスを手に持って部屋を立ち去る。


「うふふっねぇ見た?あの顔。あははっ・・・あはははっ」


微かに開いた扉からは黒い笑い声が聞こえる。


「お嬢様! 早くお部屋に戻りましょう」

「えぇ」


自分でも驚くくらいに弱い声しか出なかった。


「お嬢様」


気づけばぽろぽろと涙がでていた。ぽたぽたっとスカートに丸いシミが増えていく。なんで、なんでなんだろう。ぐるぐると頭の中をその問いが駆け回る。私、そんなに悪いことしたかな。

部屋に着いたらサリーに抱き締められた。温もりが身に染みる。


「お嬢様我慢しないで。辛いでしょう」

「うぅ...あ...ありがと...」


なんで今更ローズマリーはあのドレスを渡してきたのだろうか。もういっそ返さないで欲しかった。

あのドレスは私が初めて行ったパーティーに着ていったもの。着ているだけで魔法にかかったような気がして、鏡の前でずっとぐるぐるまわってた。私の1番のお気に入り。パーティーではそこに招待されていた男の子にも褒めてもらったのだ。『可愛い』って。とっても嬉しくて家でいつも着ていたら、奪われた。今手元にある思い出のドレスはスカートがズタズタに切り裂かれている。なんだか私の思い出まで切り裂かれたようで見ていて辛い。

泣くことしかできなくて、泣いて泣いて、しばらくして涙が収まった。


「お嬢様、もう大丈夫? 無理しなくていいからね」

「えぇ」


そして冷静にサリーが入れてくれた甘い紅茶を飲みながら話しだす。先程まで泣いていたとは思えないテンションでゆっくりと。言葉を発する度に静かに青い炎が私の内側で燃え上がるのを感じていた。


「本当に酷いわね、どんな考えしてんのかしら。ごめんねお嬢様、私は見ていることしか出来なくて」

「いいのよ、なぐさめてくれたじゃない。サリーがいなかったら私は今こんな風に話せる状態になかったわ」

「そうね・・・・・・ところでこのドレス達どうするの? どれも仮面舞踏会に着ていけないわ。捨てて、部屋にあるドレスを着ていく? 」

「うーん待って......あぁサリー! 良い方法を思いついたわ」


そっと濡れたままの頬を拭う。

あの子に、やられたままでいるものですか。
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