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本編
#20 待ちに待った時間
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待ちに待った放課後の時間。もうこんな日に限って最後の授業が長引くものだから嫌になっちゃうわ。
「アナ? 今日は、」
「ごめんなさい、ジュリー。私今日は少し急いでるの」
「そう、じゃあアナまた明日」
「えぇ、また明日」
ジュリーとの放課後のまったりお喋りタイムは今日はできない。だって今もずっと私の頭の中はドレスの最新パンフレットでいっぱいいっぱいなんだもの。
はやく見たいな~。るんるんご機嫌に鼻歌を歌いながら、素早い足さばきで廊下を歩いていく。いつもの部屋のドアを開くと既にそこには彼がいた。いつも私より早いのよね。でも今すぐ一緒にパンフレットを見られるからいいわ。
「そうか、ちょうど俺も最近いいものが手に入ったから持ってきたんだ」
「きっとこれにはですね、ウィンも驚くに違いありませんわよ。なんせなかなか伝手を使っても手に入りにくいパンフレットを、世に出回り始める前に私の最高の友達のおかげで手に入れたのですからっ……! 」
あぁやっと! 今日一日中押さえ込んでいた興奮が一気に爆発するのを感じながらバックに手を入れる。そうして少しだけもったいぶって、じゃんっと両手で丁寧にパンフレットを取り出した。
だがしかし、これを見たウィンには驚きというか私の期待していた反応はなかった。それどころか少しの動揺が見て取れる。あれれ? えっと、もしかして知らない? いやいやウィンに限ってそんなことがあるはずない。驚きすぎて声が出ないのかしら?
「リリー、その・・・・・・」
なっ・・・・・・。なんだか少し気まずそうに告げれた言葉は思ってもいない言葉で。何度も何度も頭の中で反芻してようやくのみ込めた。
「えっと? ・・・・・・つまりウィンは既にこれをもっているですってっっっ!? 」
机の上からウィンが渡してきたのは紛れもないパンフレットで。見間違うわけもない、本物で。
「これはどこで? どこに行って手に入れられたの? あああっ! もしかして、もしかしなくてもウィン、既に中身って見ていらっしゃる? 」
まぁっなんてこと。ウィンもまさか同じパンフレットを持ってて読了済みだなんて!? 私の考えていた一緒に初めて見る計画はできなくなっちゃったわね……。勝手に期待していた自分が恥ずかしい。
諦めつつ、椅子に深く腰掛ける。ゆっくりじっくりパンフレットを眺めることにした。それはそれはもう素敵な、輝きが詰まっているパンフレットだった。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
「お嬢様ったらそんな風にほっぺた膨らますのやめたらどうですか」
「そんな別にふくらませてなんか無いわ」
「ねぇいい加減不貞腐れるのはやめなさいな。ほら困ってらっしゃるでしょ」
思わず目の前に座るウィンを見るとチラッと目が合う。でも私はすぐに視線をフイと戻し、そのままフォークをザクっとタルトに刺す。あーあ、おいしいわねこのタルト。とってもみずみずしい、新鮮なフルーツ。
「リリー、すま」
「私別に謝って欲しい、ワケじゃありませんわ」
「・・・・・・そうか」
「ほらほら、そんなにどんどん口に入れこむと喉につまらせるわよ、お嬢様。お紅茶飲んで。ね、ほらさっきまで楽しそうにしてたじゃない。一体どうしたのよ」
そう。さっきまではね。サリーの言う通り、このティータイムの前はめちゃくちゃ盛り上がっていた。だって素敵なパンフレットがあるんですもの。当然よね。
衝撃の事実を聞いて驚いたものの、早く見たい気持ちが覚める訳では無い。だからとりあえず早く一人で見ようとページをめくっていくと、隣にウィンが腰かけてきて。そのまま隣でページをめくる度に分かりやすいし、なるほどってなる解説をしてくれた。
解説と共に見るパンフレットはどれも本当によくて。するする中身が入ってくる。どのドレスも本当に最高すぎた。さすが一流のブランドが選ばれて丁寧に作られたパンフレットだと思う。流行もデザインも個性が出てるし本当に見ていて楽しい。いいなぁいいなぁ以外の言葉が出てこないの。ドレスいいなぁってね。
それで、その時までは解説ありがたいなと思ってたものの満足行くまでパンフレットを読み切って、冷静に考えてみると急にもどかしい気持ちになった。だってドレス好きとして、こんなにも一方的に解説されっぱなしってとてつもなく悔しいの。享受されるだけってフェアじゃないし……。それにウィンはもうこんなに饒舌に語れるほど端から端まで調べ尽くしているってことでしょう? パンフレットを読み漁ったってことよね。うぅ~悔しい。無理やりにでも昨日読んでおくべきだったかしら。
あと……やっぱり初めて見ての感想を一緒に語り合いたかった気がする。これはこうとか、流行りがあれだから、とか考察やってみたかったなぁ。まさかウィンも持っているなんて想像もしなかったんだもの。
とめどなく溢れる想い。ごちゃごちゃしてて自分でもなにが本心か分からない。とりあえず悔しい思いが強すぎて。私だってね、ここまでの行動がめちゃくちゃ子供っぽいのはわかってるの。こんなに不貞腐れて・・・・・・って思うけど、こうでもしないと気が済まないんだもの。行き場の無い気持ちを固いタルトの底にぶつけながら食べ進める。
最後のひと欠片。これを食べたら、さすがにそろそろ謝らないと。
「……ご馳走様でした。その……私ったらごめんなさい。完全なる八つ当たりでしたよね」
「こっちこそすまない。まさかリリーも持っているなんて思わなくてな。次からは気をつけよう」
「私が勝手に考えていたことですから……。でもですね、私今とっても悔しいのです。明日までに読み込んで貴方が驚くくらいドレスについてレポートをまとめてきますから、読んでくださいね」
「あぁ楽しみにしてる」
少し笑って言った彼にぐぬぬっとなる。やっぱり今日の私は少し子供っぽい。顔は熱いし恥ずかしいし、も~やだ。家に帰ってクローゼットにこもりたい。
「アナ? 今日は、」
「ごめんなさい、ジュリー。私今日は少し急いでるの」
「そう、じゃあアナまた明日」
「えぇ、また明日」
ジュリーとの放課後のまったりお喋りタイムは今日はできない。だって今もずっと私の頭の中はドレスの最新パンフレットでいっぱいいっぱいなんだもの。
はやく見たいな~。るんるんご機嫌に鼻歌を歌いながら、素早い足さばきで廊下を歩いていく。いつもの部屋のドアを開くと既にそこには彼がいた。いつも私より早いのよね。でも今すぐ一緒にパンフレットを見られるからいいわ。
「そうか、ちょうど俺も最近いいものが手に入ったから持ってきたんだ」
「きっとこれにはですね、ウィンも驚くに違いありませんわよ。なんせなかなか伝手を使っても手に入りにくいパンフレットを、世に出回り始める前に私の最高の友達のおかげで手に入れたのですからっ……! 」
あぁやっと! 今日一日中押さえ込んでいた興奮が一気に爆発するのを感じながらバックに手を入れる。そうして少しだけもったいぶって、じゃんっと両手で丁寧にパンフレットを取り出した。
だがしかし、これを見たウィンには驚きというか私の期待していた反応はなかった。それどころか少しの動揺が見て取れる。あれれ? えっと、もしかして知らない? いやいやウィンに限ってそんなことがあるはずない。驚きすぎて声が出ないのかしら?
「リリー、その・・・・・・」
なっ・・・・・・。なんだか少し気まずそうに告げれた言葉は思ってもいない言葉で。何度も何度も頭の中で反芻してようやくのみ込めた。
「えっと? ・・・・・・つまりウィンは既にこれをもっているですってっっっ!? 」
机の上からウィンが渡してきたのは紛れもないパンフレットで。見間違うわけもない、本物で。
「これはどこで? どこに行って手に入れられたの? あああっ! もしかして、もしかしなくてもウィン、既に中身って見ていらっしゃる? 」
まぁっなんてこと。ウィンもまさか同じパンフレットを持ってて読了済みだなんて!? 私の考えていた一緒に初めて見る計画はできなくなっちゃったわね……。勝手に期待していた自分が恥ずかしい。
諦めつつ、椅子に深く腰掛ける。ゆっくりじっくりパンフレットを眺めることにした。それはそれはもう素敵な、輝きが詰まっているパンフレットだった。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆
「お嬢様ったらそんな風にほっぺた膨らますのやめたらどうですか」
「そんな別にふくらませてなんか無いわ」
「ねぇいい加減不貞腐れるのはやめなさいな。ほら困ってらっしゃるでしょ」
思わず目の前に座るウィンを見るとチラッと目が合う。でも私はすぐに視線をフイと戻し、そのままフォークをザクっとタルトに刺す。あーあ、おいしいわねこのタルト。とってもみずみずしい、新鮮なフルーツ。
「リリー、すま」
「私別に謝って欲しい、ワケじゃありませんわ」
「・・・・・・そうか」
「ほらほら、そんなにどんどん口に入れこむと喉につまらせるわよ、お嬢様。お紅茶飲んで。ね、ほらさっきまで楽しそうにしてたじゃない。一体どうしたのよ」
そう。さっきまではね。サリーの言う通り、このティータイムの前はめちゃくちゃ盛り上がっていた。だって素敵なパンフレットがあるんですもの。当然よね。
衝撃の事実を聞いて驚いたものの、早く見たい気持ちが覚める訳では無い。だからとりあえず早く一人で見ようとページをめくっていくと、隣にウィンが腰かけてきて。そのまま隣でページをめくる度に分かりやすいし、なるほどってなる解説をしてくれた。
解説と共に見るパンフレットはどれも本当によくて。するする中身が入ってくる。どのドレスも本当に最高すぎた。さすが一流のブランドが選ばれて丁寧に作られたパンフレットだと思う。流行もデザインも個性が出てるし本当に見ていて楽しい。いいなぁいいなぁ以外の言葉が出てこないの。ドレスいいなぁってね。
それで、その時までは解説ありがたいなと思ってたものの満足行くまでパンフレットを読み切って、冷静に考えてみると急にもどかしい気持ちになった。だってドレス好きとして、こんなにも一方的に解説されっぱなしってとてつもなく悔しいの。享受されるだけってフェアじゃないし……。それにウィンはもうこんなに饒舌に語れるほど端から端まで調べ尽くしているってことでしょう? パンフレットを読み漁ったってことよね。うぅ~悔しい。無理やりにでも昨日読んでおくべきだったかしら。
あと……やっぱり初めて見ての感想を一緒に語り合いたかった気がする。これはこうとか、流行りがあれだから、とか考察やってみたかったなぁ。まさかウィンも持っているなんて想像もしなかったんだもの。
とめどなく溢れる想い。ごちゃごちゃしてて自分でもなにが本心か分からない。とりあえず悔しい思いが強すぎて。私だってね、ここまでの行動がめちゃくちゃ子供っぽいのはわかってるの。こんなに不貞腐れて・・・・・・って思うけど、こうでもしないと気が済まないんだもの。行き場の無い気持ちを固いタルトの底にぶつけながら食べ進める。
最後のひと欠片。これを食べたら、さすがにそろそろ謝らないと。
「……ご馳走様でした。その……私ったらごめんなさい。完全なる八つ当たりでしたよね」
「こっちこそすまない。まさかリリーも持っているなんて思わなくてな。次からは気をつけよう」
「私が勝手に考えていたことですから……。でもですね、私今とっても悔しいのです。明日までに読み込んで貴方が驚くくらいドレスについてレポートをまとめてきますから、読んでくださいね」
「あぁ楽しみにしてる」
少し笑って言った彼にぐぬぬっとなる。やっぱり今日の私は少し子供っぽい。顔は熱いし恥ずかしいし、も~やだ。家に帰ってクローゼットにこもりたい。
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