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第四章 青海の檻
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* * *
身体が浮き上がるような爆発音と同時に冷蔵室内に凄まじい衝撃と揺れが走り、室内の食材や料理が棚から次々と落ち、倒れていく。
余りの唐突、そして凄まじさに美優は思わず驚愕の悲鳴を上げ、反射的に頭を抱えてしゃがみ込む。
今の音は何?!外で一体何が起きたの??目だけで隼に問い掛けるが、隼はそれには答えない。
隼は美優の視線はおろか今さっき起こった爆発音にも動じず、ただひたすら外の動向に気配と物音に耳を立てている。爆発音に動じずと言うより、あらかじめ爆発が起きる事を悟っていたようにも見える。隼は視線を美優に向けると人差し指を縦に口元に当て、『静かにしろ』というジェスチャーをし、再び扉に張り付き厨房の気配を探る。
やがて外からけたたましい警報の音が響いてきた。
心臓がキュッと縮むような高音の警報音と共に『只今船内で火災が発生しました。乗客の皆様は乗務員の指示に従って、落ち付いて速やかに避難を開始してください』という自動音声が流れ込んでくる。
同時に人が苦しむ断末魔のような絶叫も混じり、そして何度かパーンと風船が破裂したような音が複数回響くと、外の苦鳴の声はピタと止んだ。
今まで生きてきた中で一度も聞いたことの無い、人間が苦しみ死ぬ間際の断末魔を美優は耳にして、身体の底から震え恐怖する。
壁一枚向こうで広がっている惨状、それを想像しただけで美優の首筋に冷たい汗が流れ、胃の中の物が逆流しそうになる。そしてそんな災禍を平然とした顔で引き起こせる隼にも、戸惑いを抱かずにはいられない。
隼を信じると決めたとはいえ、瞳に浮かぶ怯えの色を隠す事が出来ないまま再び視線を隼に向けてしまう。しかし隼はそんな美優の視線も意に介さず、人差し指を内側にクイクイッと向け『オレの後ろに回れ』と無言で指示する。
「よし、エプロンはしっかり被っているな。これから扉を開けるが、間違っても俺より前には出るな」
「う、うん」
「…合図をしたら姿勢を低くして、俺の後をしっかりついて来い。他の物には目もくれるな。…いいな?」
「うん、わかった…」
隼の言葉に怯えの感情を飲み込みつつ、言われるままに美優が動き出す。
が、不意に隼への違和感を美優は覚える。
さっきまで泰然としていた筈の隼が、いつの間にか肩で息をしている。顔色も血の気が失せているような白さだ。ほんの少し前に普通に会話してた時には至って普通の様子だったのに、明らかに調子が悪そうだ。こんな短時間で何が起きたのか…
「…赤羽くん、大丈夫?なんか具合悪そうだけど…」
「…大丈夫だ。問題無い…」
そう答える隼の声は、先程までの生気に満ちたそれではなく、まるで今にも消え入りそうな弱々しいものだった。
(…くそっ。まさかこんな時に出てくるとはな…)
(続く)
身体が浮き上がるような爆発音と同時に冷蔵室内に凄まじい衝撃と揺れが走り、室内の食材や料理が棚から次々と落ち、倒れていく。
余りの唐突、そして凄まじさに美優は思わず驚愕の悲鳴を上げ、反射的に頭を抱えてしゃがみ込む。
今の音は何?!外で一体何が起きたの??目だけで隼に問い掛けるが、隼はそれには答えない。
隼は美優の視線はおろか今さっき起こった爆発音にも動じず、ただひたすら外の動向に気配と物音に耳を立てている。爆発音に動じずと言うより、あらかじめ爆発が起きる事を悟っていたようにも見える。隼は視線を美優に向けると人差し指を縦に口元に当て、『静かにしろ』というジェスチャーをし、再び扉に張り付き厨房の気配を探る。
やがて外からけたたましい警報の音が響いてきた。
心臓がキュッと縮むような高音の警報音と共に『只今船内で火災が発生しました。乗客の皆様は乗務員の指示に従って、落ち付いて速やかに避難を開始してください』という自動音声が流れ込んでくる。
同時に人が苦しむ断末魔のような絶叫も混じり、そして何度かパーンと風船が破裂したような音が複数回響くと、外の苦鳴の声はピタと止んだ。
今まで生きてきた中で一度も聞いたことの無い、人間が苦しみ死ぬ間際の断末魔を美優は耳にして、身体の底から震え恐怖する。
壁一枚向こうで広がっている惨状、それを想像しただけで美優の首筋に冷たい汗が流れ、胃の中の物が逆流しそうになる。そしてそんな災禍を平然とした顔で引き起こせる隼にも、戸惑いを抱かずにはいられない。
隼を信じると決めたとはいえ、瞳に浮かぶ怯えの色を隠す事が出来ないまま再び視線を隼に向けてしまう。しかし隼はそんな美優の視線も意に介さず、人差し指を内側にクイクイッと向け『オレの後ろに回れ』と無言で指示する。
「よし、エプロンはしっかり被っているな。これから扉を開けるが、間違っても俺より前には出るな」
「う、うん」
「…合図をしたら姿勢を低くして、俺の後をしっかりついて来い。他の物には目もくれるな。…いいな?」
「うん、わかった…」
隼の言葉に怯えの感情を飲み込みつつ、言われるままに美優が動き出す。
が、不意に隼への違和感を美優は覚える。
さっきまで泰然としていた筈の隼が、いつの間にか肩で息をしている。顔色も血の気が失せているような白さだ。ほんの少し前に普通に会話してた時には至って普通の様子だったのに、明らかに調子が悪そうだ。こんな短時間で何が起きたのか…
「…赤羽くん、大丈夫?なんか具合悪そうだけど…」
「…大丈夫だ。問題無い…」
そう答える隼の声は、先程までの生気に満ちたそれではなく、まるで今にも消え入りそうな弱々しいものだった。
(…くそっ。まさかこんな時に出てくるとはな…)
(続く)
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