ヘイそこのいっぺん死んだ彼女! 俺と一緒にドラゴン狩らない?

尾形モモ

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姉弟

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 レイチェルは自死した直後に時間が巻き戻った。

 しかしダニエルやナナリーといった他の人間がそれを記憶している様子はなく、レイチェルの今回の行動は「突発的な家出」ぐらいにしか思われていなかったはずだ。

 そもそも一度死んだ人間が生き返り、時間が巻き戻っているなんて誰が信じられるというのだろう? そんな疑問を解消すべく、フェスターはじっとレイチェルの顔を見つめると――その凛々しい口元から、ゆったりとした声音で言葉を吐いた。



「――君、一度死んでから今この時間に『戻って』きた人間だろう? 俺は冥府の神・ハデスの加護を持っているからそれがわかるんだ……何、一回二回ぐらいなら珍しくはないことだ。現に僕の姉上なんて数百回は『死に戻り』を経験しているからね……今はその姉上と一緒に、君のような『いっぺん死んだ後、やり直すために行動している人間』を探している最中なんだ。悪いけど、協力してくれないかな?」



 フェスターの言葉に、レイチェルはますます言葉を失う。



 六人の王族の長子、一番年上のメアリー。本来なら「王女」であるはずの彼女はしかし、とある罪を犯したことによって王族としての地位を剥奪された。子々孫々にまで受け継がれるほど、強力な呪いを込められた罪人の入れ墨を彫られた彼女。その罪は――かつてこの国と同盟関係を結ぼうとした半人半獣の異民族・ケンタウロスの一方的な虐殺にあった。

 動機は不明、犯行手順も不明。それでもメアリー一人がケンタウロスたちを皆殺しにしたことは事実であるらしく、彼女は早々に王家を追放された。それは、「王家以外の人間が真相を追求する前にとっとと彼女を追いだしたためである」とも言われているが……決して平穏とは言い難い経歴の持ち主である元王女の名を、謎多き第二王子の口から聞かされて混乱するレイチェル。だがフェスターは彼女の戸惑いに臆すことなく、最初から何もかもわかっていたかのような顔をしている宿の女主人に向けて何か指示をする。

 二人は顔見知りなのだろうか? そんな疑問を裏付けるかのように、女主人は優しい笑みを浮かべながらレイチェルへと声をかける。

「どっちにせよ、こんな宿場に来たってことは特に行く当てもないんでしょう? 私としては第二王子が来てくださってることも、その待ち人であるあなたがいらっしゃっていることもとてもありがたいことだから……とにかく、話だけは聞いてやってくれないかしら?」

 温かな言葉の裏に、しかしレイチェルのこともフェスターのことも全てお見通しと言いたげな様子の女主人。それが事実である以上、否定もできないレイチェルは頷くことしかできず――一度死んだこの身にもう怖いものは何もない、と考えていた彼女は新たに開かれた未知の世界に、頭がついていけずひたすら混乱してみせるのだった。
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