ヘイそこのいっぺん死んだ彼女! 俺と一緒にドラゴン狩らない?

尾形モモ

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完成

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 レイチェルを連れて取った枝を、ミシェルは丁寧に削る。

 ときどき覗き込むようにそれを持ち上げ、曲がっていないかを確認しながら慎重に手入れするその姿をレイチェルは黙って見つめていた。その動きは手馴れたもので、今までもこうして何本もの矢を作って来たのだろうと推測するには十分なものだった。

 削り、火で加工し、磨き上げたそれに今度は羽と矢尻を付ける。その間もずっと、沈黙を保つミシェルの横顔にレイチェルは感嘆の息を漏らす。



 ――レイチェルはガーランド家の令嬢として生まれ、貴族女性として死ぬまでその役目を負うものと思っていた。



 淑女としてのマナーと、他の貴族令嬢たちに引けを取らないための教養。ダンスや刺繍の技術など、本人の得手不得手に関わらず徹底的に頭へ叩き込まれる。レイチェルは優秀だったが、最初から何もかも完璧だったわけではない。嫌いな教科や苦手な分野も存在したし、「こんなことより別のことがやりたい」「勉強なんかせずに、気分転換に楽しく遊んでみたい」と考えることだって少なくはなかった。



 だが、その訴えを全て却下しレイチェルを厳しく叱りつけるのはいつも両親だった。



「あなたはナナリーと違って、耳が聞こえて学校だって行けるんだからありがたく思いなさい!」

「耳の聞こえないナナリーはあなたのように、普通の学校に行って勉強することもできないのよ?」

「将来ガーランド家の跡取りを産む身として、当たり前のことなんだから甘えるんじゃない!」

「怠けるな! しっかりしろ!」



 ……記憶にある両親はいつも、レイチェルに「ガーランド家令嬢」としての立場を強要し目を吊り上げていてばかりだった。親が自分の子どもに向けるような優しい眼差しは、いつもナナリーが奪っていた。

 それを妬み、恨み、嘆いていたが……そんなものに縛られない世界が、ここにある。少なくとも今、目の前にいるミシェルは貴族の人間が決して作ることのないだろう矢を何本も作りそれを放ってきた。



 ミシェルの過去に何があったかはわからない。ひょっとしたらレイチェルのような貴族出身の人間であるかもしれないし、想像よりもっと重く悲惨な出自を持っているのかもしれない。



 だが、こうして矢を作るミシェルは誰よりも自由できちんと「自分自身の人生」に向き合っているように思えた。

「これでよし。それじゃあ、早速この矢で狩りをしてみようか」

 得意げに微笑むミシェルの表情が、レイチェルにはとても眩しかった。
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