鉛の矢を持ったキューピッド~なぜか婚約破棄に巻き込まれる留学生たち~

尾形モモ

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最低の告白~友人が悪役令嬢にされそうになった~

ハナ・ムラサキ⑤

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「私の部屋を荒らした犯人の目的は私が持つジェドの情報や、私が密偵であるか否かの調査。あるいは、ただ単に私個人への嫌がらせでしょう。宝石や現金といった貴重品は無事でしたからね。代わりに壊されていたのはジェドから持ち込んだトランクとその中の時計、それから赤いドレスの人形です。ヴィクトリア様にはこのこと、お話していませんでしたよね?」

「え、ええ……」

 困惑したままずっと私と王子のやりとりを聞いていたヴィクトリア様が、おずおずと頷く。そこに、エドワード王子がすかさず口を挟んできた。

「嘘をつくなヴィクトリア! あの猫の人形が壊された日、ヴィクトリアは欠席していた! お前は授業を休んで、ハナの部屋に侵入し中を荒らしたのだろう!」



 王子の言葉を耳にした瞬間、私は「勝った」と思った。



「みなさん! 聞きましたか? 王子は今、確かに『猫の人形』と仰いました!」

 会場のぐるりと見渡し、私は周りにいる生徒にしっかりと確認する。渦中にいるエドワード王子だけが何を言っているのかわからない、という表情をしているが私は畳みかけるように告げる。

「普通『人形』、それも『ドレスを着た人形』と言われれば人間の姿を象ったものを思い浮かべるはずです。なのにどうして王子は、入ったこともない私の部屋にある人形が猫の人形だと知っていたのですか?」

「そ、それは、似たような人形を他の女子が持っているのを見たことがあるからだ!」

「あの人形は私の地元の小さな町でしか作られていないもので、同じものはこの国のどこにもありません! 加えて大変、珍しい装飾がされているので同じ学園の生徒はおろかライジェルやジェドの関係者にもあの人形の話をしたことは一度もありませんでした! それを男子生徒であり私の部屋に近づく機会のない王子がなぜ、知っていたのでしょう?」



 それは王子が私の部屋を荒らした犯人に他ならないから、だ。



 会場にいる人々がそう悟ると同時に、王子の顔はさっと青ざめる。

 私の部屋に飾ってある人形はジェドに伝わる民話———長年生きて妖力、この国風に言えば魔力を持った猫が人間に化けて踊るという話をモチーフに作られた人形だ。両耳には、この国だと珍しい三角形のダイヤモンドが埋め込まれている。同じものはライジェルのどこにも存在しない。

 加えて、寮の部屋は例え同じ学園の生徒であっても他人を招き入れてはならないと決められている。これは貴族の階級に関わらず「校則」として決められたルールであり、それを破ることは私もヴィクトリア様も許されない。そして当然、エドワード王子もだ。
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