ブラックライダー

土橋絵里①

「メイって本当に面白い顔してるよね。顔中ニキビだらけだし、足も太いし……本当、マジキモイから見てるだけで笑えてくるんだけど」

　言いながら土橋絵里は、ニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべる。



　視線の先には自分と同じ制服を着た少女がいた。先ほどから、土橋絵里に見た目を否定されているが決して醜いわけではない。大きな目に、整った鼻筋。大人しそうだが、悪意剥き出しの笑みを浮かべた土橋絵里よりよほど可愛らしいように見えた。

　だが、その事実に言及する者はいない。

　土橋絵里にそれを言ったところで、本人は絶対にそれを認めないだろう。なぜなら彼女は、この教室の発言権を握った女王として君臨している。だから土橋絵里の取り巻きとして、常に媚びへつらっている女子も同じように一人の女子を見下し汚い言葉を投げつけているのだ。遠巻きにそれを見ているクラスメートたちも、土橋絵里の標的になるのを恐れて見ていることしかできない。



　そんな状況で一人、土橋絵里の嗜虐的な目にさらされる女子はビクビクと震えている。クラスの生贄、土橋絵里という存在による最大の犠牲者。次は何をされるか、ただ怯えることしかできない彼女に土橋絵里はスマホのレンズを向けた。

「ねー、ちょっと服脱いで見せてよ。動画上げたらバズるかもしんないからさ」

「え……」

「ブスでも裸になれば、みんな見てくれるかもしれないんじゃん。そしたらバズってメイも有名人になれるっしょ？　ほら、アタシが有名にしてやるんだからさ。早くしろよ」

　徐々に語気を荒める土橋絵里の前で、一人嬲られる少女は小声で呟く。



「いや……ブラックライダー、助けて……！」