ブラックライダー

土橋絵里②

「あー、面白い。メイ、超泣いてるし」

　実に楽しそうに笑う土橋絵里は、スマホの画面をタップする。



　小さな電子媒体、その中には土橋絵里がターゲットとして選んだ生徒たちの泣き叫び苦しむ姿が記録されている。

　それは土橋絵里にとって「戦利品」と言える代物の数々だった。中には学校に来なくなった者、自ら死を選んだ者などもいるが土橋絵里はそんなこと気にも留めない。適当に聞き流し、また新しい「オモチャ」を探す。それが彼女の学校生活の楽しみなのだ、ふんふんと鼻歌交じりに「次は何をしようかな」と笑う。



　今度はどうやって虐めてやろう、どうやって甚振ってやろう……考えるだけで楽しかった。



　先ほど、ネットに上げるなんて言ったが本当にそれをアップロードするつもりはない。炎上を回避するだけの感覚は残っている、だがそこに罪悪感があるわけではないのだ。

　こんなもの、ただの遊び。クラスの地味で目立たない相手が、どんな反応をするか見て楽しんでいるだけ。だから、相手がどれだけ苦痛を訴えていてもそれはエンターテインメントでしかない。



　自分は教師たちにも気に入られているし、親や学校にバレたとしてもしらを切れば平気なのだ。そんな安心感と共に、土橋絵里は帰路についているが――その後をつける、黒い影があった。