米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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プロローグ

プロローグ②

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 ホッとしたのも束の間、ポケットの中のスマートフォンが振動した。
 マリは苛々しながらスマートフォンを取り出す。驚いた事に、送り主は失踪中のアレックスだった。

”やぁ、マリ! 元気にしてるかい!? オレは君の十倍元気だよ!! 実はオレ、今異世界に来てるんだ! ヒーローだよ! 凄いだろう!! でも真の力を引き出すには君の力が必要なんだって! だから君も異世界に来てよ。次の新月の夜、セントラルパーク近くの道路にゲートが開くから、簡単に移転出来るよ!”

 あまりにも馬鹿っぽい文章に、マリは頭を抑えた。

「アレックスからメッセージが届いたんだけど……」

「ぬおぉ!?」

「アイツついに頭がおかしくなったみたい! 何て書かれていたか知りたい?」

「えーと……。まぁ、そうですね。イケメンは嫌いですけど、笑い話のネタに出来そうな事でしたら聞きたいかもしれません」

 噂好きのセバスちゃんに若干辟易としつつも、アレックスからのメッセージを読み上げてやる。
 それを聞き、「むぅ……」と唸り声を絞りだす彼は、やはりアレックスのぶっ飛び具合に呆れたのだろう。
 マリは共感を得た事に若干元気が出て来たが、残念ながら、彼の考えは別のところにあった。

「マリお嬢様、もしかするとそれは、本当かもしれませんよ」

「アンタまで何言ってんの? 起きてる? 寝言は寝て言えば?」

 セバスちゃんは少々変わっているものの、常識人だとばかり思っていただけに、残念でならない。

「寝言ではないですね! 私のばあ様が言っていたんです! セントラルパークは異世界に繋がっていると!!」

「アンタのばあさん九十歳過ぎてたよね? 単にボケてるだけじゃないの?」

「いいえ! 今でも付き合った男の名前を全員フルネームで言えるくらいなので、ボケてはいないでしょう!」

「それ、本当なのか確かめられんの? 適当に知人の名前挙げてるかもしれないじゃん」

「グヌヌ……。まぁ、何はともあれ新月は明後日、それまでどうするか考えませんと」

 アレックスが生きているという証明は、このメールを見せたらいいのだろうけど、そうした場合、アレックスの家の人間が面倒な事を言い出しかねない。彼を連れ戻す為に、マリを巻き込みそうな気がするのだ。
 婚約者殿の父母は子供に対して異様に甘いところがあり、正直なところ彼に関する重要な話し合いをしたくない。シレっとマリに不利益を押し付けてくる恐れがある。

 窓の外を眺めつつ、考える事五分。マリは心を決めた。


「セバスちゃん! 明後日の夜、セントラルパーク近くの道に行くよ! 異世界へのゲートが開くなんて思ってないけど、アレックスが何か仕掛けてくるかもしれないでしょ! その隙を狙うの! 狩りをするんだよ!」

「狩り!! モン〇ンですね!!」

「アイツを捕まえて、婚約を白紙にするの!」

「えええ!!!? 旦那様に無断でそんな事決めちゃっていいのですか!?」

 セバスちゃんは驚愕の表情を浮かべ、振り返る。すると途端にベントレーは左右に揺れ、前の車と急接近した。

「ちょっとぉ!! 前見て、前!!」

「あああ!! 申し訳ございません!!」

 衝突はギリギリ避けられたものの、一気に疲れた。

「いい事? セバスちゃん。私決めたの。アイツとの関係を切って、私は食の道を究める!! その為に協力しなさいよ!」

「素晴らしい! 素晴らしい! 私の全脂肪にかけて、協力しましょう!」

 マリは料理好きの母に影響を受け、小さい頃から英才教育を受けてきた。高校卒業後は本格的に料理を学びたいと思っているし、将来はそっちの道に進むつもりだ。
 こんな所で頭のオカシイ男に振り回され、自分の名前に傷を負うリスクに晒され続けるくらいなら、いっそポイ捨てしてしまうのがいいだろう。

◇ ◇ ◇


 アレックスからの奇妙なメッセージを受け取ってから二日後の夜二十三時四十五分、セントラルパーク入口付近に止まるバス――いや、巨大なキャンプカーの中にマリとセバスちゃんは居る。

「待つのに飽きてきたー」

「何も起きませんねー」

 念のために異世界に連れて行かれる事も考え、フェザーライト社に特注で作らせたキャンプカーの中で待機している二人なのだが、四時間以上経っても何の変化もない。それどころか、深夜で人通りもまばらである。

 マリ達二人の他にも、各ポイントにボディガードを十名配置しているのに、彼等からも連絡がない。

「やっぱアレックスに遊ばれてるだけなんじゃ……?」

「うーん……。他のポイントに居る者達に連絡してみます」

「そうして。私はちょっと外の空気吸って来る」

 助手席から立ち上がったマリに、セバスちゃんは目を剥いた。

「夜中だから、どんな不審者が居るか分からないですよ!」

「一歩外に出るだけー」

「まったくもー」

 年齢が十しか違わないのに、保護者面するのはやめてほしいものだと頬を膨らませる。
 ドアを開け、外に足を踏み出すと、外気はさっきよりもだいぶ涼しくなっていた。もう六月なのに、夏を遠くに感じてしまう。

 キャンプカーの周りをウロウロするマリは、不審な男を目にする。
 長身で、頭の形が綺麗だ。しかし、その服装がおかしい。
 医療用の簡素な上下に身を包み、足はスリッパを履いている。

 あまりに周囲から浮いたその姿に見入っていたマリは、ウッカリ男と目を合わせてしまった。
 虚ろな目だ。何の感情も浮かんでいない。いや、浮かべた事が無いであろうその表情。端正な顔立ちなのに、酷く不気味だ。

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