米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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プロローグ

プロローグ③

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 本能的にコイツはヤバいと悟る。

(薬でもやってんじゃないの……? こわい)

 しかしどこかで見た事がある様にも思え、モヤモヤして目が離せない。

 いつのまにか男との距離はかなり縮まっていた。

(車内に戻ろう……)

 マリは踵を返し、キャンプカーの入り口に駆け込もうとしたが、男の動きが俊敏すぎた。

 薬品の様な匂いがしたと思った次の瞬間、リマの口は男の手に塞がれ、小型の刃物を首に突きつけられていた。

「むぐぅ!! はにゃへー!!」

(最悪!! マジでヤバい奴だったとは!!)

「大人しくして……」

 男はリマを引き摺る様にキャンプカーに侵入し、運転席に向かう。

「マリ様、どうかし……って、誰だアンタ!?」

 セバスちゃんは車内の様子のおかしさにすぐ気が付き、振り返った。マリが不審者に拘束されているのを目にし、懐からピストルを出した。


「マリお嬢様を放せ」

「車を出せ。女を殺すぞ……」

「何だと! イケメンだからって調子に乗りやがって」

 マリは男の手から逃れようともがくが、ビクともしない。

 判断出来ないでいるセバスちゃんに焦れたのか、男は見せつける様にナイフの角度を変える。

「早くしろ」

 マリの首から一筋の血が流れた。セバスちゃんはそれを見て心を決めたようだ。

「くそぅ!」

 彼は乱暴にギアを操作し、キャンプカーを発進させた。

「ニュージャージー州のアトランティックシティに行け」

(はぁ!? ふざけんな!)

 男がセバスちゃんに刃物を向けた隙を付き、マリは男の足を踏みつけた。一度だけじゃなく、何度も。
 しかし、そんな些細な抵抗は通じず、冷たく睨まれただけだった。

 キャンプカーはもう少しでセントラルパークに面する道路を通り過ぎる。
 結局異世界云々の件はアレックスの嘘だったのだろうか? 振り回された挙句、不審者の餌食になってしまった事が悔しい。
 憎しみにも似た感情を抱いた時、急にカーナビがけたたましい音を発し始めた。しかも、窓の外の風景がグニャグニャになっていく。

「なんだここは……? 道が、無い?」

 セバスちゃんが慌てた声を上げた。彼の足元を見ると、何度もブレーキペダルを踏んでいる。それなのに、車は停止しない。

 建物、地面、木、何もかもが見え無い――ただの暗闇を、キャンプカーはひたすら走る。

 不審者もマリ達同様驚愕しているのか、不自然に身体が傾き、震える手が離れていく。

 マリはそのチャンスを見逃さず、思いっきり突き飛ばす。男はあっけない位簡単に倒れ、床に転がった。

「帰ったら訴訟だからね!」

 男の身体をゲシゲシ蹴っていると、突如車内が明るくなった。フロントガラスの方を振り返ったリマの目に、ありえない光景が写り込んだ。

 世界に、太陽の光が満ちていた。つい数秒前まで暗闇に閉ざされていたというのに――。

 広大な草原に、まるで放り出されるかのようにポツンと、マリ達だけがいる。

(ここは……ニューヨークなんかじゃない)

「どうやら我々、ニュージャージー州に辿り着いてしまったようですね」

「は?」

 急にとぼけた事を言い出したセバスちゃんに唖然とする。

「見てください! 大自然を! 素晴らしい! 歌を歌いたくなる! アハハ~」

「アハハ~じゃない! 現実逃避すんな!」

 自分達は超常現象に巻き込まれてしまった様だ。恐々とカーナビを見ると、見覚えのない地名が表示されていた。『ミクトラン王国ヴィシュ』。完全にバグッてしまった様だ。マリはガッカリして天を仰いだ。
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