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害獣からの身の守り方
害獣からの身の守り方⑤
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唐突に女性達が合唱を始めた。
ハッとしてそちらに視線を向けてみると、新郎新婦が近くの納屋の入口から出てきていた。
コルルは土の司祭と似た様なローブを着て、頭には花の冠を乗せている。素朴で可愛らしい出で立ちで、彼女によく似合っている。一方の試験体066は昨日までと同じ入院患者みたいな服装のままだし、何故か手枷をはめられ、足には鎖が繋がれている。足の鎖の先には鉄球がくっついているようだ。正直言って囚人か奴隷にしか見えない……。
「んん……。私の記憶が確かなら結婚式に来たはずなんですが、奴隷のお披露目会かなにかですかね?」
「何を言ってるんだい? おデブちゃん。間違いなく結婚式だよっ! 伝統にのっとったやり方さ。ロマンチックだねぇ」
セバスちゃんと獣人のおばちゃんの会話を聞き、マリは頭が痛くなってきた。
(似た様なもんじゃないの……? 来ない方が良かったかな。嫌なもん見ちゃった)
会場に入って来た二人を目にし、獣人達が歓声をあげた。いや、歓声と言ってしまっては語弊がある。ヤジや奇声が混ざっている。何なんだこれは……。
「その男を寄越しな!」
「ウチの旦那と交換しとくれ!」
「コルル、マウントすんな!」
「小指一本味見させてくれんかね?」
白髪の少年に触れようとする獣人達の群れはさながらバイオ◯ザードのゾンビ共の様だ。理知的な雰囲気の獣人達に木の棒で防がれ、事なきを得ている。
(これってやっぱり、さっきギルドの人が言ってた様に、『瘴気』ってやつのせいなのかな?)
元からこうなのか、異常事態が起こっているからなのか、判断出来ないのが怖い。
「みんな~! 今日はコルルの為に来てくれてありがと~! アタシの幸せ、皆にも分けてあげるからね~!」
愛嬌を振りまくコルルの態度はさながら火に注がれる油、いやガソリン。会場は怒声の嵐に包まれた。
「コルルさん、一体どういった繋がりから参加者を集めたんですかね? アマゾネスの数が多すぎませんか?」
「ネチネチと陰口叩く様な女共よりはこのくらい騒いでる方が好感度は高いかも?」
「それにしたって限度があるような……」
「まーね……」
マリとセバスちゃんは会場の雰囲気にドン引きした。
白髪の少年はこんな状況にも関わらず、ボンヤリとした表情だし、足に付けられた鉄球のせいか、ノロノロと足を運ぶ。キャピキャピしているコルルとの対比で、見てられない絵面だ。
「アイツ、何を考えているやら……」
ついボソリと呟いてしまう。耳がいいのか、聞こえてしまったらしく、白髪の少年の視線がコチラを向く。アメジストの瞳を見ると軽く罪悪感を感じた。
(このままでいいのかな……)
一度決めた事を変えるのは、あまり好みじゃない。だけどーー。
少年はマリの心の葛藤など知るはずもなく、視線を真っ直ぐに戻し、通り過ぎていく。マリはため息をついた。
司祭の前に新郎新婦が並ぶ。
「静粛に! 神の名の下で、この二人の結婚式をとり行う」
彼が言葉を発すると、会場は水を打ったように静まりかえった。
「どうなる事かと思いましたが、無事に始まりましたね。よかった……」
「良かったんだか、悪かったんだか」
「マリお嬢様?」
「何でもない」
このままこの儀式を行わせてしまったら、白髪の彼はこのままレアネー市から出られなくなってしまう。危険な目にも合うかもしれない。だけど、この結婚式をやめさせた場合の責任をマリはとれない。
司祭の厳かな声を聞きながら、何とも言えない気分の悪さに滅入る。
(あーあ、けしかけなきゃ良かった。普通に出て行けって言い続けた方が気分的には楽だったんだろうな)
儀式開始から五分経ち、十分経ち、阿部もどきは只管に仰々しい文言を紡いでいく。しかし、唐突にその声が止まった。
「む……?」
(何かあった?)
司祭は試験体066を戸惑い気味に見つめている。彼に何か問題があったのだろうか? 司祭はウォッホンと咳払いし、もう一度同じ部分を言い直す。
「その心は新婦ただ一人を愛し……、愛……あ……ぐむむぅっぅ!? 術が発動しないっ! もしや、コルル殿この男を攫って来て、無理矢理花婿にしようとしてはいまいな? 同意があったら問題なく二人の魂を結びつけられるのだがっ!」
「彼はアタシのプロポーズに頷いてくれたよ! 変な事言わないでよ!」
試験体066に術がかからず、儀式が進まなくなってしまったらしい。魔法についても、この世界の結婚システムについてもサッパリ分からないマリとしては、ポカーンと眺めているしかない。
「新郎の心が拒絶している。魔力が高いものを相手とした場合、受け入れる意思が無ければ術は発動しないのだ」
「え~!? 066さん、ちゃんと儀式に協力して! アタシと結婚したいんでしょ!?」
「変な術で干渉されると……気持ちが悪い……」
白髪の少年は嫌悪感を隠しもしない。マリ達と同じ世界出身のはずなのだが、彼のジョブは『勇者』。魔法的な事に対して敏感なんだろう。
(ん……? ちょっと待てよ? もしかしてアイツ、何されても防ぐ自信があったからコルルのプロポーズを受け入れたんじゃ……。なんて奴!)
ハッとしてそちらに視線を向けてみると、新郎新婦が近くの納屋の入口から出てきていた。
コルルは土の司祭と似た様なローブを着て、頭には花の冠を乗せている。素朴で可愛らしい出で立ちで、彼女によく似合っている。一方の試験体066は昨日までと同じ入院患者みたいな服装のままだし、何故か手枷をはめられ、足には鎖が繋がれている。足の鎖の先には鉄球がくっついているようだ。正直言って囚人か奴隷にしか見えない……。
「んん……。私の記憶が確かなら結婚式に来たはずなんですが、奴隷のお披露目会かなにかですかね?」
「何を言ってるんだい? おデブちゃん。間違いなく結婚式だよっ! 伝統にのっとったやり方さ。ロマンチックだねぇ」
セバスちゃんと獣人のおばちゃんの会話を聞き、マリは頭が痛くなってきた。
(似た様なもんじゃないの……? 来ない方が良かったかな。嫌なもん見ちゃった)
会場に入って来た二人を目にし、獣人達が歓声をあげた。いや、歓声と言ってしまっては語弊がある。ヤジや奇声が混ざっている。何なんだこれは……。
「その男を寄越しな!」
「ウチの旦那と交換しとくれ!」
「コルル、マウントすんな!」
「小指一本味見させてくれんかね?」
白髪の少年に触れようとする獣人達の群れはさながらバイオ◯ザードのゾンビ共の様だ。理知的な雰囲気の獣人達に木の棒で防がれ、事なきを得ている。
(これってやっぱり、さっきギルドの人が言ってた様に、『瘴気』ってやつのせいなのかな?)
元からこうなのか、異常事態が起こっているからなのか、判断出来ないのが怖い。
「みんな~! 今日はコルルの為に来てくれてありがと~! アタシの幸せ、皆にも分けてあげるからね~!」
愛嬌を振りまくコルルの態度はさながら火に注がれる油、いやガソリン。会場は怒声の嵐に包まれた。
「コルルさん、一体どういった繋がりから参加者を集めたんですかね? アマゾネスの数が多すぎませんか?」
「ネチネチと陰口叩く様な女共よりはこのくらい騒いでる方が好感度は高いかも?」
「それにしたって限度があるような……」
「まーね……」
マリとセバスちゃんは会場の雰囲気にドン引きした。
白髪の少年はこんな状況にも関わらず、ボンヤリとした表情だし、足に付けられた鉄球のせいか、ノロノロと足を運ぶ。キャピキャピしているコルルとの対比で、見てられない絵面だ。
「アイツ、何を考えているやら……」
ついボソリと呟いてしまう。耳がいいのか、聞こえてしまったらしく、白髪の少年の視線がコチラを向く。アメジストの瞳を見ると軽く罪悪感を感じた。
(このままでいいのかな……)
一度決めた事を変えるのは、あまり好みじゃない。だけどーー。
少年はマリの心の葛藤など知るはずもなく、視線を真っ直ぐに戻し、通り過ぎていく。マリはため息をついた。
司祭の前に新郎新婦が並ぶ。
「静粛に! 神の名の下で、この二人の結婚式をとり行う」
彼が言葉を発すると、会場は水を打ったように静まりかえった。
「どうなる事かと思いましたが、無事に始まりましたね。よかった……」
「良かったんだか、悪かったんだか」
「マリお嬢様?」
「何でもない」
このままこの儀式を行わせてしまったら、白髪の彼はこのままレアネー市から出られなくなってしまう。危険な目にも合うかもしれない。だけど、この結婚式をやめさせた場合の責任をマリはとれない。
司祭の厳かな声を聞きながら、何とも言えない気分の悪さに滅入る。
(あーあ、けしかけなきゃ良かった。普通に出て行けって言い続けた方が気分的には楽だったんだろうな)
儀式開始から五分経ち、十分経ち、阿部もどきは只管に仰々しい文言を紡いでいく。しかし、唐突にその声が止まった。
「む……?」
(何かあった?)
司祭は試験体066を戸惑い気味に見つめている。彼に何か問題があったのだろうか? 司祭はウォッホンと咳払いし、もう一度同じ部分を言い直す。
「その心は新婦ただ一人を愛し……、愛……あ……ぐむむぅっぅ!? 術が発動しないっ! もしや、コルル殿この男を攫って来て、無理矢理花婿にしようとしてはいまいな? 同意があったら問題なく二人の魂を結びつけられるのだがっ!」
「彼はアタシのプロポーズに頷いてくれたよ! 変な事言わないでよ!」
試験体066に術がかからず、儀式が進まなくなってしまったらしい。魔法についても、この世界の結婚システムについてもサッパリ分からないマリとしては、ポカーンと眺めているしかない。
「新郎の心が拒絶している。魔力が高いものを相手とした場合、受け入れる意思が無ければ術は発動しないのだ」
「え~!? 066さん、ちゃんと儀式に協力して! アタシと結婚したいんでしょ!?」
「変な術で干渉されると……気持ちが悪い……」
白髪の少年は嫌悪感を隠しもしない。マリ達と同じ世界出身のはずなのだが、彼のジョブは『勇者』。魔法的な事に対して敏感なんだろう。
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