米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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魔人襲来

魔人襲来①

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 突然の事態に会場は騒めきに包まれる。そんな中、一人の獣人女性が司祭に歩み寄り、話しかける。

「この者を無理矢理コルルの夫にしましょう。司祭殿、焼きゴテを使わせてもらうわ。コルルが彼の胸にアレを当てれば、儀式は完了。二人は死ぬまで離れられない」

「魂を結びつける事なく儀式を完了した場合、その関係はただの隷属になる。お薦め出来ない」

「それのどこに問題があるのです?」

 彼女はテーブルに近付き、焼き鏝の持ち手を握る。そして側で燃え盛る炎の中にその先端を入れた。

 どうもきな臭い雰囲気になってきた。マリとセバスちゃんは顔を見合わせる。

「何か責任感じちゃう。焚きつけた者として」

「あぁ、やっぱりマリお嬢様が何かなさったんですね。急な話だったから不思議に思っていたんです」

 コルルは自分の母親がこれからやろうとしている事を止めない。彼女もそれでいいと思っているからだろう。どこか狂気をはらむその目を見て、マリは覚悟を決めた。
 大きく一歩を踏み出す。迷いはもう無い。

「え!? マリお嬢様、何をする気なんです!?」

「アンタはそこで大人しく見てて」

「危険ですよ! やめた方が!」

 止めようとするセバスちゃんを無視する。
 儀式の最中だというのに、祭壇に向かい歩いて行くマリに痛い程の視線が突き刺さる。

「あのさ!」

 マリは声を張り上げる。人前に立ち、堂々と自分の意見を述べる事には慣れているはずだった。だけどこの完全なるアウェーの中で発言するには、豪胆なマリといえど腹に力を込めなければならなかった。

「マリ! 安心して! ちゃんと夫婦になれるよ!」

 慌てた表情のコルルに心の中で謝る。

「この結婚式、中止にしてもらえる?」

「え……?」

「聞こえなかった? この男は私が持ち帰る。アンタにあげるたくなくなったの」

「な……何言ってるの?」

「元々コイツに、アンタと結婚するように指示したのは私なの。でも勿体無くなっちゃった。この男の手枷、外してもらえる?」

「マリっ……。酷いよ!」

 憎悪の眼差しを向けるコルルに、マリは内心冷や汗をかきつつも、上目遣いで微笑んだ。

「コルル、焼きゴテの準備は出来たわ。これを男の胸に押し当てなさい。アタシが男を固定しておいてあげるから」

 コルルの母親は、火の中に入れていた焼きゴテを取り出し、コルルに握らせる。コルルの顔が歪んだ。可愛らしい彼女はもうどこにも居ない。

「事情はどうあれ、この人はもうアタシの夫にするって決めたの!」

 マリはため息をつき、バッグの中から催涙スプレーを取り出し、彼女の顔にかけた。我ながら最悪だと思いはするけど、このくらいしないと止まりそうにない。

「つぅ……! 痛い!」

 顔を抑え、蹲るコルルの手から焼きゴテが落ちた。
 試験体066を抑えていたコルルの母親は彼を離し、コルルの元に駆け寄った。白髪の少年はつまらなそうな表情で両手を上下に振る。するとバラリと手枷は外れた。足の鎖は高温で溶かされた様にドロリと溶けた。どうやら彼はわざわざ繋がれてやっていたらしい。
 マリは彼の手を掴む。

「逃げるよ!」

 少年は一瞬物言いたげな表情を浮かべるが、コクリと頷く。

「待ちなさい」

 走り出そうとした時、後ろから声がかかった。大声ではないのに不思議とよく通る、艶めいた女の声だ。

 背中がゾワリと粟立つ。背後からーーちょうどコルルが蹲っている方向から、恐ろしい気配を感じる。

 振り返る。そこには気怠るい様な表情を浮かべる、一人の女性が居た。コルルの母親だ。だけどその顔がグニャリと変化した。この世のモノとも思えぬ、美しい顔が表れる。人を見下すのに慣れきった、支配者の表情だ。
 彼女の背から、一対の羽が生えた。コウモリに近い形状のそれは、宗教画で見たことのある、悪魔を思わせる。

「魔人だ……」

「マジン?」

 白髪の少年が教えてくれたその存在が何なのか、マリは知らない。だけど婉然と微笑む女の顔を見ていると、胸の中に警報が鳴る。

ーーザリッ……ザリッ……。

 いつのまにか周囲に獣人達が集まっていた。見回すと、どの顔も生気を失い、目は焦点が合っていない様だ。

「可愛い私の人形達、その者達を捕らえなさい」

 獣人達は魔人の命令に忠実に従い、マリ達に手を伸ばす。

「この人達は、魔人に操られてる……。風の精シルフィードよ。ここに一陣の風を巻き起こせ」

 少年が手を上げると、マリ達を中心にして空気が動いた。暴風が獣人達をなぎ倒す。ホッとしたのも束の間。マリは目を疑った。倒れている者達の中に、セバスちゃんを見つけたからだ。マリを心配して近付き、少年の魔法に巻き込まれたのだろうか?

「セバスちゃん!」

「走ろう。魔人に捕まると厄介……」

「で、でも……っ!」

 強く腕を引かれる。今までボンヤリとした姿ばかり見てきただけに、行動力を示されると戸惑う。
 引き摺られる様に走らせられながらも、セバスちゃんから目が離せない。彼は夢の中にいる様に恍惚とした表情で立ち上がり、フラフラと魔人に近付いている。

「セバスちゃん!! そっち行っちゃダメだ! 逃げよう!」

 大声を上げる。この距離なら聞こえているはずなのに、マリの方を一切見ようとしない。

「あの人、魔人に魅了されている……」

 魅了というのは、魔法の一種なのだろうか? 分からない。でも彼を放っておく事は出来ない。

「引っ叩いて目を覚まさせる! 手を離せぇ!」

「君を魔人に渡せない」

「意味わかんない!」

 少年に倒された獣人達が起き上がり、マリ達を追いかけて来ていた。確かに彼女達に捕まったらただでは済まないだろう。

(セバスちゃん!)
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