米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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土の神殿へ

土の神殿へ②

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 公爵はキャンプカーの速度を180㎞/時まで出したが、それで満足したらしく、以後は80㎞/時で走行してくれるようになった。
 スピードに対してのヒヤヒヤ感は無くなったものの、まだ安心出来ない。
 光溢れるニューヨークで暮らしていたマリにとっては、この世界の夜はあまりにも暗い。ヘッドライトで照らされている場所の様子はかろうじて分かるが、気を抜いて運転したら何かと衝突しそうな雰囲気だ。このまま彼を運転席に一人残して大丈夫なのだろうかと心配になる。

「私、夕飯の支度をしたいんだけど、一人で大丈夫……ではないよね? 無理だよね?」

「僕はもうこの乗り物の動かし方を熟知してしまったよ! まるで恋人同士みたいにいい関係になってる! この四角いのも、時々チャーミングな声で話しかけてくれるしね」

 公爵はカーナビを撫でながら、ヘラヘラと笑った。マリは余計に不安になる。外が暗いから、というより、公爵が周辺機器をどう思ってるのかという部分がだ。ギャクを言ってるのかどうなのか、彼の場合分かりづらすぎる。

 公爵はマリが彼を信じていない事に気が付いたようで、照れ臭そうにした。

「マリちゃんはさっきから、僕がこの乗り物で、他人を傷つけてしまわないか心配してるんだよね? こうみえて僕は治癒魔法を使えるから、何か起こっても、息の根があれば、治してあげられるよ」

 その言葉の内容的にフラグが立ち過ぎていて笑えないが、あまり心配しすぎるのも失礼だろうから、思いきって彼に任せてしまう事にした。彼に限らず、マリだって事故を完全に回避するのは無理なのだ。

「じゃあお願い。昨日貰ったオークの肉を使って夕食を作ってみるから、後で三人で食べよう」

「ああ! そういえば、昨日オークの肉をマリちゃんにあげたんだった。マリちゃんの世界風の料理にしてほしいな」

「昨日それも約束したし、そのつもり! ていうか、この世界の料理が分からないから、馴染みの料理に肉を使うしかないんだけどね」

「楽しみだなぁ!」

 公爵に、運転中何かあったら必ず呼ぶ様に言い、マリはキャンプカーの後方へと向かう。ドア付近に差し掛かると、試験体066が相変わらずボンヤリした表情で座っていて、切れ長の目でマリを見る。

「アンタまだそんな所に座ってんの? ソファにでも座れば?」

「この車の中に居てもいいのかどうかハッキリしないから……」

 マリは少年の言い分に呆れた。遠慮してドア付近に座り続けていたらしい。

「居てもいいよ」

「結局結婚しなかったけど……」

「……それはもうどーでもいいから!」

 マリの私室での、少年とのやり取りを思い出し、顔が暑くなる。今更蒸し返さないでほしい。ヤケクソ気味にマリは少年に手を差し伸べた。

「夕食作りを手伝ってよ! どーせ暇なんでしょ!?」

 彼はマリの手をマジマジと見ながら頷いた。戸惑うようにユックリと伸ばされる手。重ねてくれたそれをグイッと引っ張り、立ち上がらせる。

(デッカイ子供みたい。今までどうやってアメリカ社会で生きてこれたんだろ?)

 彼に関しては不思議だらけだが、これから色々と知っていけばいいだろう。もう友好的に接すると決めたのだ。根気よく接してみよう。
 少年の手をパッと手放し、付いて来るように言う。

「夕食作りって……なに?」

「え!? 世間知らずなの?」

「情報としては知っているけど、知ってる事と違った言い方をされると、結びつかなかったりする……。というか、野生生物を狩って、解体して、肉を焚き木で焼くんだよね? 同じ事をすればいい?」

「原始人かよ!」

 公爵と話すのも、かみ合わず、辛かったが、この少年は輪をかけて話辛い。コッソリ疑っていたのだが、NASAに捕らえられていた宇宙人とかなんじゃないだろうか?
 友好的に接すると決めたものの、マリの中に半分流れている大阪人の血が騒ぎ、ツッコミを入れたくなる。
 深呼吸して気持ちを落ち着かせ、平静を装った。

「料理のやり方は私が教えてあげるから真面目に手伝ってよね」

「有難う……。実はマリさんの料理、今まで食べたどんな物より美味しかった。どうやって作ってるのか興味があったんだ……」

「……!?」

 ニコリと笑う少年に驚愕する。そんな事を言われたら嬉しいに決まってる。でも彼の前で素直に喜ぶのはプライドが許さないので、表情が変わらない様に気をつけながら、軍人だった祖父の様に、「うむ!」と仰々しく頷くにとどめておいた。

 二人でキッチンスペースに行く。マリは冷凍庫の中から凍ったオーク肉の塊を取り出した。それをだいたい100g程切り、残りを冷凍庫に戻す。切り取った肉を更に幾つかのブロックに分け、電子レンジに入れて解凍する。

「何を作るの……?」

 ほんの少し楽しそうに、マリの作業を見ていた少年が問いかける。

「豚汁ならぬ、オーク汁を作るよ! 日本料理なんだ。食べると身体があったまるし、栄養満点!」

「へぇ……。日本料理に詳しいのか……」

「母さんが日本出身だから、色々作ってくれて……」

 自分がハーフである事を打ち明けるのは、少し勇気が必要だった。純粋な白人である彼はどう思うのだろうか?

「両親の人種が違うと、二つの文化に触れられるのな? 楽しそう……」

 嘘の無い表情だ。マリは彼を疑った事を反省した。
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