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土の神殿へ
土の神殿へ③
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母から聞く話によると、日本というのは、食に対する拘りがかなり強い国なのだそうだ。しかも狭い国土でありながら、各地に特色があり、同じ料理であっても、西か東かの差で味付けが大きく異なる。今から作ろうとしている豚汁ならぬオーク汁は、大阪出身である母が良く作ってくれた味付けを目指したい。
マリは棚の扉を開き、日本から輸入した里芋を取り出した。日本の東北地方や関東地方ではジャガイモを入れるのが主流なのだが、母から教わった豚汁には里芋が入っている。
「これ……石?」
試験体066は、里芋をしげしげと観察し、やや残念な見解を口にした。確かに取り出した里芋には土が付着したままだし、形もゴロリとしているので、石ころに見えてしまったのも分かる様な気もするが……。
「これは里芋って言う根菜なの! 食べると食感が楽しいよ。これの処理、アンタにやってほしい」
「……どうやって?」
「皮剥き! でも包丁なんかで皮を剥くと手が痒くなっちゃうから、特別に、簡単で、被害がない方法を教えてあげる。まず芋の土をそこのシンクで洗い流してくれる?」
籠に入れた里芋と、タワシを手渡すと、彼は素直に頷いた。
(この人タワシの使い方分かるのかな?)
計量カップで白米を測りながら、彼の動きを観察する。
彼はタワシをジッと見つめた後、里芋をゆっくり擦り始めた。意外にも、タワシの使い方を知っていたらしい。日本特有の物なのかと思っていたのだが、マリが知らないだけで、アメリカにも普及していたのだろうか?
「タワシを知ってるなんて、アンタ只者じゃないね」
「タワシ……? このトゲトゲの物がそういう名前なの?」
「そうだけど、って、アンタ知らないまま正しく使ってたの!?」
「見た目的にそうなのかと思って……。土を落とすの、結構楽しい。こんなチマチマした作業始めてする」
「アンタが料理にハマってしまうのは時間の問題だね!」
人に何かを教えるという事が得意じゃないマリだけど、楽しんでくれているのを知り、上手くいきそうだと思えた。
彼の隣に並び、白米をいれたボールに水を入れる。五、六回水を変えながら米を洗い、炊飯用の土鍋に入れる。本当であれば、ご飯を美味しく炊くためには、火にかける前に米粒に水を吸わせなければいけない。でもお腹が空いている今は、吸水に三十分も待ってる気にならず、そのまま炊いてしまう事にする。
(うー……。近日中にメッチャ美味しいご飯を炊こう……)
まぁ、手を抜いて炊いたご飯でも空腹が調味料になり、美味しく感じられるーーと思いたい。
土鍋をコンロの火にかけたのと、試験体066が里芋を洗い終わったのはほぼ同時だった。
「終わったよ。次にどうすればいい?」
彼から、里芋を入れたトレーを受け取る。芋の表面は茶色とクリーム色のシマシマが表れていた。土も残っておらず、丁寧な仕事ぶりだ。
「お、ちゃんと洗えてるね。この鍋に里芋と水を入れて、コンロで十五分程煮て。火の付け方はねーー」
コンロの使い方を教え、任せてみると、テキパキと動き出す。
マリはその働きぶりに、うんうんと頷いた。働いている男の人の姿はなんぼかマシに見えるから不思議だ。
何も指示を出さないと、火にかけた鍋の前を離れなそうな雰囲気なので、彼の二の腕をチョイチョイとつつき、大根を渡す。
「大根とニンジンの皮剥きしてくれる? ピーラーっていう調理用具を使うと簡単なんだよ」
手に持ったままのニンジンの皮をピーラーを使って一筋剥いて見せる。目を輝かせる彼に、ニンジンとピーラーを押し付け、残りの皮の処理をお願いした。
マリもまな板にオークの肉を乗せ、薄くスライスしていく。トレーの上にオークの肉を移し終えると、待っていたかの様に、皮を剥き終えたニンジンや大根を渡された。
「有難う。綺麗に剥けてるね。才能あるよ」
適当に褒めながら、手際よくそれらをいちょう切りにする。
「マリさんは、料理をする仕事をする人なの……?」
踏み込んでくるような質問は初めてかもしれない。意外な感じだ。でも元の世界でのマリに興味を持ってくれた事が少し嬉しい様な気がした。
「私はまだ高校生だよ。出会った時、制服着てたでしょ?」
「制服? アメリカの学校は私服で通うんじゃなかったかな?」
「普通の学校はそうだよ。でもマンハッタンの高校は制服がある所が結構多いの。アンタの高校は私服なの? 見た目的に高校生でしょ?」
「学校には通った事ない……」
「ええええ!?」
驚きのあまり、出汁をとる為に沸かしていた鍋をひっくり返しそうになった。これから長い時間一緒に過ごす事になりそうな人の身の上話を聞いておこうと、軽い気持ちで問いかけただけなのに、まさかの回答を貰ってしまった。
「嘘だよね? 腹割って話そうよ!」
「本当の事だよ。……十年程前に研究所で目覚めて、それから一歩も外に出てない。今回が初めてなんだ」
「何それ……、犯罪に巻き込まれていたの?」
「犯罪、なのかな……? その辺はよく分からない。僕は実験対象みたいな感じだった」
「そうなんだ」
(重い、重すぎる……!)
聞かなきゃ良かったと、今更後悔しても、もう遅いのである……。
マリは棚の扉を開き、日本から輸入した里芋を取り出した。日本の東北地方や関東地方ではジャガイモを入れるのが主流なのだが、母から教わった豚汁には里芋が入っている。
「これ……石?」
試験体066は、里芋をしげしげと観察し、やや残念な見解を口にした。確かに取り出した里芋には土が付着したままだし、形もゴロリとしているので、石ころに見えてしまったのも分かる様な気もするが……。
「これは里芋って言う根菜なの! 食べると食感が楽しいよ。これの処理、アンタにやってほしい」
「……どうやって?」
「皮剥き! でも包丁なんかで皮を剥くと手が痒くなっちゃうから、特別に、簡単で、被害がない方法を教えてあげる。まず芋の土をそこのシンクで洗い流してくれる?」
籠に入れた里芋と、タワシを手渡すと、彼は素直に頷いた。
(この人タワシの使い方分かるのかな?)
計量カップで白米を測りながら、彼の動きを観察する。
彼はタワシをジッと見つめた後、里芋をゆっくり擦り始めた。意外にも、タワシの使い方を知っていたらしい。日本特有の物なのかと思っていたのだが、マリが知らないだけで、アメリカにも普及していたのだろうか?
「タワシを知ってるなんて、アンタ只者じゃないね」
「タワシ……? このトゲトゲの物がそういう名前なの?」
「そうだけど、って、アンタ知らないまま正しく使ってたの!?」
「見た目的にそうなのかと思って……。土を落とすの、結構楽しい。こんなチマチマした作業始めてする」
「アンタが料理にハマってしまうのは時間の問題だね!」
人に何かを教えるという事が得意じゃないマリだけど、楽しんでくれているのを知り、上手くいきそうだと思えた。
彼の隣に並び、白米をいれたボールに水を入れる。五、六回水を変えながら米を洗い、炊飯用の土鍋に入れる。本当であれば、ご飯を美味しく炊くためには、火にかける前に米粒に水を吸わせなければいけない。でもお腹が空いている今は、吸水に三十分も待ってる気にならず、そのまま炊いてしまう事にする。
(うー……。近日中にメッチャ美味しいご飯を炊こう……)
まぁ、手を抜いて炊いたご飯でも空腹が調味料になり、美味しく感じられるーーと思いたい。
土鍋をコンロの火にかけたのと、試験体066が里芋を洗い終わったのはほぼ同時だった。
「終わったよ。次にどうすればいい?」
彼から、里芋を入れたトレーを受け取る。芋の表面は茶色とクリーム色のシマシマが表れていた。土も残っておらず、丁寧な仕事ぶりだ。
「お、ちゃんと洗えてるね。この鍋に里芋と水を入れて、コンロで十五分程煮て。火の付け方はねーー」
コンロの使い方を教え、任せてみると、テキパキと動き出す。
マリはその働きぶりに、うんうんと頷いた。働いている男の人の姿はなんぼかマシに見えるから不思議だ。
何も指示を出さないと、火にかけた鍋の前を離れなそうな雰囲気なので、彼の二の腕をチョイチョイとつつき、大根を渡す。
「大根とニンジンの皮剥きしてくれる? ピーラーっていう調理用具を使うと簡単なんだよ」
手に持ったままのニンジンの皮をピーラーを使って一筋剥いて見せる。目を輝かせる彼に、ニンジンとピーラーを押し付け、残りの皮の処理をお願いした。
マリもまな板にオークの肉を乗せ、薄くスライスしていく。トレーの上にオークの肉を移し終えると、待っていたかの様に、皮を剥き終えたニンジンや大根を渡された。
「有難う。綺麗に剥けてるね。才能あるよ」
適当に褒めながら、手際よくそれらをいちょう切りにする。
「マリさんは、料理をする仕事をする人なの……?」
踏み込んでくるような質問は初めてかもしれない。意外な感じだ。でも元の世界でのマリに興味を持ってくれた事が少し嬉しい様な気がした。
「私はまだ高校生だよ。出会った時、制服着てたでしょ?」
「制服? アメリカの学校は私服で通うんじゃなかったかな?」
「普通の学校はそうだよ。でもマンハッタンの高校は制服がある所が結構多いの。アンタの高校は私服なの? 見た目的に高校生でしょ?」
「学校には通った事ない……」
「ええええ!?」
驚きのあまり、出汁をとる為に沸かしていた鍋をひっくり返しそうになった。これから長い時間一緒に過ごす事になりそうな人の身の上話を聞いておこうと、軽い気持ちで問いかけただけなのに、まさかの回答を貰ってしまった。
「嘘だよね? 腹割って話そうよ!」
「本当の事だよ。……十年程前に研究所で目覚めて、それから一歩も外に出てない。今回が初めてなんだ」
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