米国名門令嬢と当代66番目の勇者は異世界でキャンプカー生活をする!~錬金術スキルで異世界を平和へ導く~

だるま 

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土の神殿の大神官

土の神殿の大神官⑥

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 公爵の話を聞きながら、マリはナルホドと納得した。元の世界でもそうだった。たとえ崇める神が同一だとしても、宗教が違えば争いが起こる。ましてや神が別々なこの世界では、その対立はより激しかったかもしれない。

「教団は、世界中の権力者にも強い影響力を持ち、逆らった者は社会的に抹消されるという黒い噂が昔からある。こういうのは教団に限った話じゃないけど」

「やっぱどこの世界でも、その辺は同じなんだね」

「だねぇ」

「教団の最高神官が1000年間空位というのは本当?」

「本当だよ。そもそも求められる資質が厳しいから」

 エイブラッドは1000年前最高神官だった女性が選定者になったと言っていた。だから最高神官になる条件は別にあるのだろう。

「求められる資質……。公爵はそれが何か知ってる?」

「高い魔力と、四柱の神々それぞれと対話出来るかどうか。この二つは絶対的な条件みたいだね。シンプルだけど、約1000年の間、これらを満たせる者は現れなかった」

「そうなんだ……」

 マリはホッとした。自分の魔力は高いみたいだが、生まれてこのかた神と対話出来た事は一度もない。そもそも信徒でもない者に、神は話しかけたりなんかしないだろう。エイブラッドは色々言っていたけど、たぶん神と対話出来ないという事を持ち出せば、おかしな連中に付き纏われる事はないと思われる。

「公爵! 私が『選定者』だって、今後言いふらしたりしないで!」

 念のため伝えておく。

「あれ……? もしかしてマリちゃん、エイブラッドが君に伝えた事って……」

「いや! 公爵が今思った様な事は絶対ないから! 安心して!」

 真面目くさった表情をした公爵に手を振り、「アハハ」と笑って誤魔化す。

「君は、ウッカリこの世界に来てしまったわけだし、帰り辛くなる様な事には巻き込まれるべきじゃないと思う。エイブラッドは教団のためだけを考えて動くだろうけど、一応僕からも口止めしてみよう。アイツから嫌われているから、あまり意味はないだろうけど」

 たぶん、公爵はさっきマリがエイブラッドに言われた内容をほぼ正確に理解したんだろう。それでもマリの味方でいてくれるつもりらしい。セバスちゃんが居なくなり、この世界でボッチになってしまったような、孤独感が薄らぐ。

「有難う……」

「どういたしまして」

「ちょっと疑問に思えて来たんだけど、公爵は本当にエイブラッドが好きだった人に惚れ薬を盛ったの?」

 ちゃんと話してみると、根はいい人だし、女に困っているとも思えないため、不思議でならない。

「ただの言いがかりだよ。たぶんタイミングが悪かっただけだ」

「タイミング……」

「そう。僕とエイブラッド、そして例の女の子の三人は同じ魔法学校だった。校則が厳しくて、交際が禁止されていた」

「影で付き合ってる人はいそうだね」

「その通り。僕も何人かとコッソリ付き合ったな。でもエイブラッドは真面目だから、その女の子と両想いだと分かってても、卒業まで付き合わない事にしたみたい。でもね……」

「心変わりかぁ……」

「五年くらい待たされていたわけだしね。しょうがないよ」

 脳科学では、ドーパミンという成分の作用により、同じ人間に恋愛感情を抱いていられるのは三年間と聞いた事がある。この世界では、あまり医学が発達していなそうだから、急に冷めた態度になって、他の人が好きになった等と言われたら、魔法か何かの所為だと疑うのかもしれない。

 それでも友情を大切にしろよと思わなくもない。話を聞いていると、公爵とエイブラッドの付き合いは長そうだし、女一人のために絶交状態になるなんて、薄っすい関係である。

 他人事ながら、呆れていると、応接室の扉が開いた。入室してきたのは、試験体066とエイブラッドだった。

「彼を鑑定してみた。確かに勇者である事に間違いはなさそうだ。66番目というのが意味不明であるが……」

「65人は失敗作として破棄されたからね……」

 入室早々に重い話である。マリは眉を寄せ、白髪の少年に視線を移した。

「失敗作?」

「前代勇者をコピーしきれない個体が多かったらしい……。感情を抑制させる事が出来ず、破壊的衝動のままに行動するなど、普通の人間としても機能しなかった……。だから僕を作る時に、感情を薄くする様に、四分の一程度しか記憶を移さなかった……」

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