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土の神殿の大神官
土の神殿の大神官⑦
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前代の勇者とは、どの様な人だったのだろうか?
白髪の少年の言うように、その人物の記憶を丸ごと引き継いだ六十五人の人間が破壊的行動をとるくだいなのだから、荒い性格の持ち主なのだろうか? それとも、何か良く無い記憶があるため、周囲に対してあたり散らさずにいられないのか?
試験体066は自らを勇者のコピーだと言うが、マリが頭に思い描いたのは、穏やかな彼とは程遠い、すさんだ男の姿だ。
「前代の勇者を複製した様な人間が66人いたが、今はこの少年だけ残っているという事なのだな? 貴女達が住む世界では残酷な所業を行なっている機関があるようだ」
「残酷な……ねぇ……。プリマ・マテリアの研究所でも、お抱えの錬金術師達が、人間を物質から創りだそうと日夜実験に励んでいるとの黒い噂があるようだけど」
公爵はエイブラッドに肩を竦めた。
「そんなものは、反プリマ・マテリア団体が流したただのデマだ! 真に受けるな! 馬鹿馬鹿しい!」
大人達二人の話を聞きながら、少しだけ嫌な感じがしていた。マリのスキルの一つは『錬金術』である。そして、プリマ・マテリアがやっているという実験。一瞬何か繋がった気がしたけど、思考が危険すぎて、考えを振り払った。
「ただのデマだというなら安心なんだけどね」
「貴様の軽口は本当にウンザリするな! 昔からだから、諦めるしかないのか!? チッ……! そんな事より、マリ・ストロベリーフィールド嬢、先程ぶん投げてくださった物体を鑑定してみたんだが……」
「何かヤバかった?」
「ああ、そうだな。通常ではあり得ない食べ物だ」
公爵がマリの料理を食べた時、いい効果が生まれていると言っていたが、ちゃんとした鑑定はどうだったのだろうか? 結果如何によっては、マリの将来の野望は潰えてしまう可能性がある。人の口に入る物は、間違いなく安全でなくてはならないのだから……。
エイブラッドの怜悧な顔が、酷薄に見え、マリの背に変な汗が流れる。
「どうやら、あの物体は浄化の作用があるようだった。そして、食品だったので、食してみたら、普通に旨かった。どこで入手したか教えてもらえないか?」
「じょ……浄化……? アレは私が作ったお菓子なんだけど、なんでそんな作用が生まれてるの?」
「なるほど、貴女の手作りなのか。選定者はやはり別格なのだな」
浄化と聞いて思い浮かべるのは塩素等の薬品だ。少量に摂取するくらいならいいが、大量だと危険な物である。だからあまりいいイメージが浮かばない。
というか、カップケーキの材料をどうこねくり回せば、浄化作用のあるブツに変化するというのだろう。
マリは腕を組んで、「うーん……」と唸る。
「へぇ、凄いな! マリちゃんの料理を食べた時、凄くスッキリした感覚になったのは、そのおかげかもしれない。エイブラッド、もっと詳しく教えてくれない? その浄化の作用って、瘴気に汚された生き物の肉体を正常にするって解釈も出来るのかな?」
「そうだな。『浄化』の効果は体内に入った普通の毒素、そして瘴気、身体に害なす様々な原因を消し去る事が出来る」
はしゃいだ様子の公爵に、エイブラッドが答える。彼の話を聞き、マリは閃いてしまった。
「それって、魔人の放つ瘴気にも効くって考えていいの!?」
もしかすると、レアネー市で起こっている事態に、自分の料理が役立つかもしれない。
「効くだろう」
「じゃあ、セバスちゃんやレアネーの住人を、私の料理で救える、ってこと……?」
セバスちゃんを真っ先に救いたいと思う。だけど、身内一人だけ助けて、他を見捨てられるほど心が狭くはなかった。ましてや、自分の料理への自信に繋がりそうな事なのだ。積極的にかかわっていきたい。
「でも、レアネー市でおかしくなっている住人全員分の料理をマリちゃんが作るって、分量的に現実的じゃなくない? 幾ら食べたら正常になるかも分からないし。過剰な労働をしてほしくないな。やっぱり、土の神殿の術士の力を借りなきゃ」
公爵は流石に冷静だ。だけど、何故か引き下がりたくなかった。
「じゃ、じゃあ。一部の住民だけでも私に任せてもらえない? 私の料理を食べさせたいんだ」
「マリちゃん……?」
今まで、料理は美味しくて、栄養が取れたらいい、としか考えてなかった。だけど、人間を魔の手から救い出せるかもしれないという、自分の料理に降って湧いた効果を魅力的に思えてならない。この作用を利用し、一人でも多くの住人を治せたら、凄くやり甲斐を感じるに違いない。
白髪の少年の言うように、その人物の記憶を丸ごと引き継いだ六十五人の人間が破壊的行動をとるくだいなのだから、荒い性格の持ち主なのだろうか? それとも、何か良く無い記憶があるため、周囲に対してあたり散らさずにいられないのか?
試験体066は自らを勇者のコピーだと言うが、マリが頭に思い描いたのは、穏やかな彼とは程遠い、すさんだ男の姿だ。
「前代の勇者を複製した様な人間が66人いたが、今はこの少年だけ残っているという事なのだな? 貴女達が住む世界では残酷な所業を行なっている機関があるようだ」
「残酷な……ねぇ……。プリマ・マテリアの研究所でも、お抱えの錬金術師達が、人間を物質から創りだそうと日夜実験に励んでいるとの黒い噂があるようだけど」
公爵はエイブラッドに肩を竦めた。
「そんなものは、反プリマ・マテリア団体が流したただのデマだ! 真に受けるな! 馬鹿馬鹿しい!」
大人達二人の話を聞きながら、少しだけ嫌な感じがしていた。マリのスキルの一つは『錬金術』である。そして、プリマ・マテリアがやっているという実験。一瞬何か繋がった気がしたけど、思考が危険すぎて、考えを振り払った。
「ただのデマだというなら安心なんだけどね」
「貴様の軽口は本当にウンザリするな! 昔からだから、諦めるしかないのか!? チッ……! そんな事より、マリ・ストロベリーフィールド嬢、先程ぶん投げてくださった物体を鑑定してみたんだが……」
「何かヤバかった?」
「ああ、そうだな。通常ではあり得ない食べ物だ」
公爵がマリの料理を食べた時、いい効果が生まれていると言っていたが、ちゃんとした鑑定はどうだったのだろうか? 結果如何によっては、マリの将来の野望は潰えてしまう可能性がある。人の口に入る物は、間違いなく安全でなくてはならないのだから……。
エイブラッドの怜悧な顔が、酷薄に見え、マリの背に変な汗が流れる。
「どうやら、あの物体は浄化の作用があるようだった。そして、食品だったので、食してみたら、普通に旨かった。どこで入手したか教えてもらえないか?」
「じょ……浄化……? アレは私が作ったお菓子なんだけど、なんでそんな作用が生まれてるの?」
「なるほど、貴女の手作りなのか。選定者はやはり別格なのだな」
浄化と聞いて思い浮かべるのは塩素等の薬品だ。少量に摂取するくらいならいいが、大量だと危険な物である。だからあまりいいイメージが浮かばない。
というか、カップケーキの材料をどうこねくり回せば、浄化作用のあるブツに変化するというのだろう。
マリは腕を組んで、「うーん……」と唸る。
「へぇ、凄いな! マリちゃんの料理を食べた時、凄くスッキリした感覚になったのは、そのおかげかもしれない。エイブラッド、もっと詳しく教えてくれない? その浄化の作用って、瘴気に汚された生き物の肉体を正常にするって解釈も出来るのかな?」
「そうだな。『浄化』の効果は体内に入った普通の毒素、そして瘴気、身体に害なす様々な原因を消し去る事が出来る」
はしゃいだ様子の公爵に、エイブラッドが答える。彼の話を聞き、マリは閃いてしまった。
「それって、魔人の放つ瘴気にも効くって考えていいの!?」
もしかすると、レアネー市で起こっている事態に、自分の料理が役立つかもしれない。
「効くだろう」
「じゃあ、セバスちゃんやレアネーの住人を、私の料理で救える、ってこと……?」
セバスちゃんを真っ先に救いたいと思う。だけど、身内一人だけ助けて、他を見捨てられるほど心が狭くはなかった。ましてや、自分の料理への自信に繋がりそうな事なのだ。積極的にかかわっていきたい。
「でも、レアネー市でおかしくなっている住人全員分の料理をマリちゃんが作るって、分量的に現実的じゃなくない? 幾ら食べたら正常になるかも分からないし。過剰な労働をしてほしくないな。やっぱり、土の神殿の術士の力を借りなきゃ」
公爵は流石に冷静だ。だけど、何故か引き下がりたくなかった。
「じゃ、じゃあ。一部の住民だけでも私に任せてもらえない? 私の料理を食べさせたいんだ」
「マリちゃん……?」
今まで、料理は美味しくて、栄養が取れたらいい、としか考えてなかった。だけど、人間を魔の手から救い出せるかもしれないという、自分の料理に降って湧いた効果を魅力的に思えてならない。この作用を利用し、一人でも多くの住人を治せたら、凄くやり甲斐を感じるに違いない。
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